灼熱の太陽の輝きに似た魅力作 ヘンデル「ディキシット・ドミヌス」

 

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灼熱の太陽の輝きに似た魅力作

ヘンデルはイタリア滞在時の若かりし頃、オペラの名曲を次々と発表しました。宗教曲『ディキシット・ドミヌス・主は言われた』もそのような時に誕生したのでした。
まず、この作品を聴いて感じるのは従来の厳かな宗教曲のイメージとは少し一線を画しているということです。
作品を聴くとわかるように、大変な意欲作で、これまでのカトリック音楽の慣例を打ち破ろうという気概に満ち満ちています!
それはいい意味で宗教曲の範疇を超えているということで、エネルギッシュで輝かしい合唱はいつの間にか宗教曲であることも忘れさせてくれます。
灼熱の太陽の輝きを想わせる楽曲の素晴らしさ!聴くものを飽きさせない変化と音楽的な流れがある作曲技法の冴え……。
宗教曲と言えど決して難解ではない親しみ安さ!およそ30分少々の作品ですが、聴き始めると曲のとりこになってしまうことでしょう。
しかし、技術的には大変な難曲揃いで、少しでも気を抜くとあっという間に音楽が崩壊しかねない恐い作品です。合唱パートのみならず、オーケストラパートやアリアも含めて極めて強い集中力が要求されます。

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンでの衝撃

この作品、実は2015年5月、東京・国際フォーラムで開催されたラフォルジュルネオジャポンの演奏プログラムにも組まれました。それがダニエル・ロイス指揮ローザンヌ室内アンサンブルの演奏です。
この演奏で初めて「ヘンデルにディキシット・ドミヌスあり!」と認識された方も少なくなかったのではないでしょうか……!? 
ディキシット・ドミヌスは宗教曲ですが、変化に富んでいるために様々な解釈や表現が可能な作品です。この作品は指揮者や演奏家に深い洞察力や音楽センスがないと平凡でつまらない演奏になりやすいものです。
しかしロイスさんの指揮はそんな不安を一気に消し去ってしまいました。
精緻で内声部が豊かな合唱のハーモニー、管弦楽の絶妙の音色のバランス感等、すべてのパート、フレージングが意味を持って鳴り響いたのです。
それほどダニエル・ロイス指揮ローザンヌ室内アンサンブルの演奏は素晴らしく、この曲がどれほど魅力に溢れている作品なのかを実感させてくれたのでした。
指揮者の音楽性の高さ、合唱の心が溶け合うようなハーモニーの素晴らしさは今も心に深く焼き付いています。ただ一つ残念だったのはソリストたちが若干弱く、アリアの部分では深い感動までには至らなかったことでしょうか……。

聴きどころ

第1節・Dixit Dominus

この作品の核心部にあたるのがこの第1節。推進する迫力と変化に富んだ音楽的要素が素晴らしい!

第3節・Tecum Principium In Die Virtutis

ソプラノの単独唱。

 

第5節・Tu Es Sacerdos In Aeternum

第7節・De torrente in via Bibet

ソプラノのデュエットがとても美しい。哀しみや祈りが印象的な響きの中で交錯する。

第8節・Gloria Patri

最終章ではゆったりとした序奏部分から情熱的な展開部へと受け継がれ、興奮の絶頂で終結する。

オススメ演奏

マルク・ミンコフスキ指揮ルーブル宮音楽隊、マシス、コジェナー(S)他

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まず音楽が求めている解釈とミンコフスキが目指している演奏がぴったり一致しているのではと思えるほど表現に少しも違和感がなく、聴くうちにドンドン引き込まれていきます!
想いや主張をストレートに込める合唱や気迫のこもったミンコフスキの表現が凄く、それがまったく上滑りしていないどころに音楽への共感の深さを実感させてくれます。
音楽は一気呵成に流れるように繋がっていきますが、とにかく細部まで一切妥協しない充実した音楽づくりやセンスの良さに圧倒されますね。
ソリストたちの表現も最高です。特にマシスとコジェナーのソプラノデュエットはラフマニノフのヴォカリーズを深化させたような心が洗われるような名唱と言っても過言ではないでしょう。
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この記事を書いた人

1961年8月生まれ。グラフィックデザインを本業としています。
現在の会社は約四半世紀勤めています。ちょうど時はアナログからデジタルへ大転換する時でした。リストラの対象にならなかったのは見様見真似で始めたMacでの作業のおかげかもしれません。
音楽、絵画、観劇が大好きで、最近は歌もの(オペラ、オラトリオ、合唱曲etc)にはまっています!このブログでは、自分が生活の中で感じた率直な気持ちを共有できればと思っております。

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