安定の構図とドラマ性が交錯するシャルダン「赤エイ」

「赤エイ」シャルダン
油彩、ルーブル美術館、1725年頃

「赤エイ」は、フランスロココ時代の画家シャルダンが創作初期(1728年)に描いた傑作です。文字どおり静物画で一時代を築いたシャルダンの出世作といっていいでしょう。

盤石な構図と力強い色彩は、アカデミーの名誉会員であった画家のニコラ・ド・ラルジリエールの心をいっぺんで捉えたのでした。しかもシャルダンは、その日のうちにアカデミーの準会員と正会員に認められるという異例の特別待遇を受けたのです。

「自画像」1707・油彩
ニコラ・ド・ラルジリエール(1656-1746)

一見すると典型的なアカデミックな絵そのものといえるでしょう。しかし描かれたテーマはどこまでもドラマチックで、磯の香りさえ立ち込めてくるような生活感とリアリズムに貫かれているのです。

全体的に格調高い静けさが漂う絵なのですが、よく見るとしっぽを立ててこちらを威嚇している猫がすぐに眼に入ってきますよね。

さらに中央に視線を動かすと、この絵の主役でもある赤エイが血まみれになった生々しい姿を見せています。

その周辺には牡蠣や魚が無造作に置いてあり、右に目を向けると水差しやナイフなどもあるなど、すべてが何らかの関連を持つモチーフが並べられているのです。

目次

存在の強さを表す安定の三角形構図

赤エイの頭頂部を起点とする三角形構図は安定感抜群

「赤エイ」の素晴しさは、よく練られた構図にも表れています。それは精巧で堅固な建築設計図にも似ているといってもいいかもしれません。

まず赤エイの頭頂部を起点として、全体を構成する三角形構図は安定感抜群ですね。下方に位置するテーブルの水平面は三角形構図をしっかり支える役割をはたし、これまた安定感抜群ですね。

シャルダンはあらかじめ動線の配置を念入りに考えていたのでしょう……。視線を巧みに誘導する配置も絶妙だし、理にかなっています。

どんなにドラマチックな要素をふんだんに詰め込んでも絵が崩れていないのはそのためなのでしょう。

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この記事を書いた人

1961年8月生まれ。グラフィックデザインを本業としています。
現在の会社は約四半世紀勤めています。ちょうど時はアナログからデジタルへ大転換する時でした。リストラの対象にならなかったのは見様見真似で始めたMacでの作業のおかげかもしれません。
音楽、絵画、観劇が大好きで、最近は歌もの(オペラ、オラトリオ、合唱曲etc)にはまっています!このブログでは、自分が生活の中で感じた率直な気持ちを共有できればと思っております。

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