懐かしい旋律が泉のように湧き上がる ドヴォルザーク「弦楽セレナーデ」

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心にスッと染み込む音楽

弦楽セレナーデというと、皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか……。

弦楽セレナーデは、弦楽四重奏のように各パートを一つの楽器が担当するわけではありません。フルオーケストラまではいかなくても、そこから金管楽器や木管楽器を省いた弦楽器群だけの作品演奏と思っていただければいいでしょう。

フルオーケストラに比べると、弦楽器に限定されていて、音がまろやかで耳あたりも良いため、ちょっとした催し物や行事のBGMとしてはうってつけかもしれませんね。

 さて、皆さんはドヴォルザークの弦楽セレナーデを聴いたことがあるでしょうか?

穏やかで、どこか懐かしさを漂わせた旋律は、一度聴いたら虜になってしまうかもしれません。

 すぐに口ずさめるような親しみやすいメロディが、各楽章にたくさん散りばめられているのも大きな魅力です。

 全曲を通して聴くと約25分くらいの作品ですが、微塵も長さを感じさせませんし、あっという間に終わってしまうクラシック音楽はそうそうあるものではありません。

泉のように湧き上がる旋律

この作品はドヴォルザークがわずか10日あまりで一気に書き上げた快心作です。

メロディひとつをとっても、よくぞこれほど魅力的な旋律が生み出せるものだと感心してしまいます。

普通は美しい主題をメインに、それを再現部、中間部でリズムや調性を変えて使用するのが一般的なのでしょう。

しかしドヴォルザークの場合は中間部から転調して、さらに美しく懐かしい旋律が出てくるのです。まるで気分を変えて、新しくやり直すかのように性格やあたりの情景さえ一新されるのです……。

 音楽は一切停滞したり、間延びすることがなく、自然に流れていきます。むしろ次々と音楽が泉のように溢れて止まらない感覚さえありますね……。

これなら、ドヴォルザークが10日足らずで、一気に書き上げてしまったというのもわかるような気がします……。

 

名作映画の名旋律の原点

 イタリア映画の巨匠、フェデリコ・フェリーニ監督が1954年に制作した名作映画「道」を皆様はご存知ですか?

この映画でとても印象的なメロディがあります。それがトランペットの哀しい音色が胸を打つ「ジェルソミーナのテーマ」です。

そしてこの名主題歌の着想の原点が、この弦楽セレナーデの第4楽章ラルゲットの冒頭主題にあります。

音楽を担当した作曲家のニーノ・ロータはドヴォルザークを敬愛していたようですね……。

弦のしっとりとした情緒は一見明るいものの、人生の無常や切なさを伝えていることをロータは実感していたのでしょう。

この映画から音楽は切り離して考えられないほどの名曲となったことは多くの方がご存知のことと思います。

オススメ演奏

パヴェウ・プシトツキ指揮、クラクフ・ベートーヴェン・アカデミー管弦楽団

第1楽章 Moderatoプシトツキ指揮クラクフ・ベートーヴェン・アカデミー管弦楽団

演奏は簡単なようで意外に難しく、メロディの宝庫のようなこの作品を堪能するには、ただ単にキッチリと演奏すればいいわけではありません。

昔から弦楽セレナーデの録音はたくさんありましたが、正直なところどれもこれも今一つという印象でした。カラヤン、マリナー、デービス、いずれも一般的に言う名盤なのかもしれませんが、どうももう一つピンときません……。

そのような中、2007年に発売されたある演奏にすっかり聴き惚れてしまいました。

それがパヴェウ・プシトツキ指揮、クラクフ・ベートーヴェン・アカデミー管弦楽団(K&K)のライブ演奏です。

弦のみずみずしさはもちろんのこと、細かい表情やデリカシーに優れています。自然な強弱やテンポ、ヴァイオリン、ヴィオラの呼びかけも美しいし、リズムの刻み方もセンス満点です!

即興的で、一筆書きのような迷いがない演奏だからこそ、私たちの心をグイグイ鷲掴みにしていくのかもしれません。

とにかく作品に対する深い愛情が詰まった演奏であることを随所に実感していただけるでしょう!

 

第3楽章 Scherzo: Vivace 第4楽章 Larghettoプシトツキ指揮クラクフ・ベートーヴェン・アカデミー管弦楽団

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この記事を書いた人

1961年8月生まれ。グラフィックデザインを本業としています。
現在の会社は約四半世紀勤めています。ちょうど時はアナログからデジタルへ大転換する時でした。リストラの対象にならなかったのは見様見真似で始めたMacでの作業のおかげかもしれません。
音楽、絵画、観劇が大好きで、最近は歌もの(オペラ、オラトリオ、合唱曲etc)にはまっています!このブログでは、自分が生活の中で感じた率直な気持ちを共有できればと思っております。

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