私たちが普段生活する環境は、残念ながらいつ事故が起きても不思議ではない要素があらゆるところに潜んでいます。
「不注意」もありますが、今や普通に歩いていても車が突っ込んできたり、想定外の事態に巻き込まれるような時代です。
それではどうしたら事故に遭ったり、巻き込まれるたりするのを防げるか、そのポイントについて考えていきたいと思います。
恐い「気持ちの不在」
歩行者事故が起こりやすい状況とは何でしょうか?
「不注意」、「ながらスマホ」、「赤信号での飛び出し」と危険なシチュエーションが続々と浮かんできます。
でも最も恐いのが、「気持ちの不在」、「気持ちがそこにないこと」なのです。
たとえば、自宅まで歩いて帰っているのに、頭の中は全然別のことを考えている状態です。「なんだ、そんなことだったら自分もしょっちゅう別のこと考えて歩いてるよ……」と言う方も多いでしょう。
でも普通の状態ならば、とっさにそれ相応の行動ができますし、いくらでも注意を傾けられるはずです。
「気持ちの不在」とは自分がどこを歩いてきたのかを尋ねても答えられないくらい意識が散漫になっている状態なのです。
何かとてつもなく心配なことや気になることが心を占領しているときは要注意です。行動していてもそのことが頭の中を駆け巡るため、「心ここにあらず」の危険な状況になりやすいからです。
「心が完全に上の空」のときは注意力散漫になりやすいですし、危険な状況が発生するリスクが高いことは間違いありません。
このような場合、判断力や直感力もかなり鈍っていて、とっさの行動をするのがかなり難しい状況です。つまり、感覚が麻痺しているため、車が直前まで迫ってきても気づかない状況に陥りやすいのです……。
急に止まれない飛び出し
昔からよく言われていることですが、車は急に止まれません。
車道への飛び出しは今も一番多い事故の原因です。
飛び出しといえばすぐに頭に浮かんでくるのが、幼児の遊びに夢中になったときの無意識の飛び出しです。
でも大人はそんなことあり得ないだろうと思いがちですが、決してそんなことはありません。
猛烈に時間に追われているときや追い込まれている時など、人は信じられないような行動に出ることがあります。
また、前述のように意識が散漫になっている時や正常な判断が出来ない時はとても危険です。
フラフラと車道へ入ってしまわないともいえません。
また、風で持ち物が道路に飛ばされてしまったため、無我夢中で拾いに行ったら車に轢かれてしまったという話もよく聞きます。
特に見通しの悪い交差点や狭い歩道を通るときは「歩道を通ってるから安心だよ」と思いこまないで、いつでも非常時に動けるような心の準備をしなければならないでしょう。
出会い頭と車の陰
歩行者が事故に遭遇するケースで最も多いのが出合い頭です。
つまり交差点やT字路で、車や歩行者が出会い頭にぶつかることが多いのです。
その他、停止している車の陰に車が近づいているのに気づかず、ぶつかる場合も多いですね。
どちらにも共通するのが大きな死角が発生しているということです。
往々にして歩行者、車にしても、ちょっと待って来なければ、「もう大丈夫だろう」という自分なりの判断をすることがあります。
しかし、これが事故の大きな原因になりやすいのです。
中でも歩行者に多いのが、自分なりに安心したり、過信することです。
特に、「車が止まってくれるだろう」という根拠のない安心感を持つことが危ないですね。
絶対に自分なりの判断をすることはやめたほうがいいでしょう。
車の左折・右折
「左折した大型トラックに自転車が巻き込まれて、自転車に乗っていた○○○さんが死亡」
ニュースを見ていると、よくこんな痛ましい事故が報道されています。トラックが左折した時に、同じ方向に曲がろうとした自転車を巻き込んでしまったという事故です。
意外に多くの人が気づいていないのが、大型トラックから左折する自転車は確認できないということです。
特に車体が高い大型バスや10トントラックなどは、往々にしてサイドミラーで自転車が視界に入らないことが多いのです。
こういうときこそ、自転車を運転する人の直感やとっさの判断力が必要になります。
特に比較的狭い道路を自転車で走っている時に、大型トラックと同じタイミングで曲がるのは危険ですし、絶対にやめるべきです!
必ず一度止まって大型車が通り過ぎるのを待つか、大型車の左折の状況を見ながら、ゆっくりと自転車を押して歩くべきです。
ちょっとしたことなのですが、これが出来るか出来ないかによって、天地の差が生まれてしまいます。
我が物顔の自転車運転
今もしかしたら、一番危険かもしれないのが「我が物顔」で乗り回す自転車です。
普通にルールを守って走行する分には問題ありませんが、自転車に乗るとどういうわけか気持ちが大きくなったり、見栄を張ったりする人が多いようです。
また車と違って、自転車は歩行者に深刻な被害を与えないと勝手に思い込んでいる人も少なくありません。
しかし自転車は乗り方次第で自分が危険な状況に陥ったり、歩行者を危険な目に遭わせることが多いのです。
特に危険なのが減速をしないままで下り坂を走り抜けることです。
仮に自転車がどんどん加速しながら坂道を急降下すれば、驚くほどのスピードと重量が増し加わってきます。
もしこの時、よそ見をしていたり、ブレーキをかけ損ねたらどうなるでしょうか……。
一説によれば、万が一急降下してくる自転車と歩行者が衝突したら、歩行者に恐ろしいほどの負荷がかかり、最悪の場合は死に至るような傷害事件になる可能性も充分にあるのです。
そして絶対的にNGなのが雨天時の傘さし運転です。風が吹いてきたらバランスを崩してしまいますし、車に接触する危険度も増してきます。また動きにくくスリップしやすいですし、とにかく視野が狭く見通しが悪いです。
雨天時はできれば自転車は乗らないようにしたいものですね。
しかしどうしてもという場合はサドルやペダルに絡まないような動きやすい雨合羽か雨をはじく素材の軽量コートがいいでしょう。
意識次第で事故は防げる
以上のように歩行者が事故に巻き込まれやすい状況を考えてきましたが、絶対に事故に遭わないための共通ポイントがあります。それは次の3点です。
絶対に無理をしないこと
とかく人は急いでいるときや、早く次に事進めたいという時に、焦る想いでギリギリのタイミングで信号に駆け込んだり、飛び出したりします。
でも果たして無理をしたとして、どれくらい違うというのでしょうか……。
多く見積もったとしても、せいぜい5分から10分くらいの違いではないでしょうか。
「あのとき無理をしなければ…」とならないように無理は絶対に避けるべきです。
これでもかというくらいに「確認」
事故の多くは不注意から発生することが圧倒的に多いです。特に出会い頭と車の陰は危険です。
「これでいいや」と思わずに、しっかり目視できるまでは、これでもかというくらいに慎重に確認する気持ちが必要です。
直感を働かせる
ここで言う、直感を働かせるというのは「めくらめっぽう」という意味ではありません。交差点や車の陰などは絶えず車が近づいていることを、あらかじめ想定しながら歩くことなのです。
そうすれば未然に事故は防げる可能性が高くなります。
人間って不思議なもので、いつも歩いている道が「今日はいつもと違うな…」と思う瞬間があると思います。そういうときこそ注意が必要ですし、絶対に無理は禁物です。
とっさに身体が反応し、いつでも避けられる意識を持ちながら歩くことも必要になってくるのです。
交差点で青信号に変わったからといって、周囲を見ないで飛び出すのは危険極まりありません。なぜなら青信号に変わった後でも、強引に突っ込んでくる車はないとはいえないからです。それを見込んだ歩行も必要ですね。