洗練のファッション、情緒、オードリーの魅力が結集!『ティファニーで朝食を』

映画は脚本やストーリー展開、演出、キャスティング、監督の手腕など、さまざまな要素が重なって感動作になり、名作として語り継がれます。

しかし、中には特化した魅力や忘れがたい記憶やメッセージだけで語り継がれる作品もありますし、社会現象となる作品もありますね……。

1961年公開、ブレーク・エドワーズ監督作品の『ティファニーで朝食を』もそのひとつでしょう。ヒロインのオードリー・ヘプバーンの輝くような眼差し、デリカシーあふれる表情、洗練されたファッションが印象的でした。

あらすじ

トルーマン・カポーティの同名小説をオードリー・ヘプバーン主演、ブレイク・エドワーズ監督、ヘンリー・マンシーニ音楽で映画化したラブストーリー。

ニューヨークのアパートで猫と暮らす娼婦ホリーは、ティファニー宝石店の前でパンを食べるのを日課にしていた。

ある日、彼女が住むアパートに作家志望の青年ポールが引っ越してきた。ポールは何ものにもとらわれず、自由で不思議な魅力を持つホリーに次第にひかれていく。

しかし、ホリーにはさまざまな過去や現実があることを、次第に知ることになるのだった……。

魅力いっぱいのオードリーの表情

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オードリー・ヘプバーン(1929~1993年)
花をあしらった白いブラウスを着るヘプバーン(1963年頃)
(写真提供:アーカイブ・フォト/ゲッティイメージズ)

 

『ティファニーで朝食を』はニューヨークを舞台にしたラブストーリー映画。どこにでもある、ありふれたテーマで、実際内容もどこをどうという映画ではないかもしれません。

原作者のトルーマン・カポーティは「あまりにも原作のイメージと違いすぎる」とか、ヒロインのホリー役をめぐっては「なぜオードリーなんだ?」と辛辣な非難を浴びせたりしています。

でもストーリーや内容を抜きにしても絶賛されるべきなのが、オードリー・ヘプバーンの魅力でしょう。

それは彼女が随所に見せる表情の美しさ、目の輝きです。『ティファニー』に限ったことではありませんが、その澄んだ眼差し、キラキラ輝くような瞳の美しさに思わず惹きつけられてしまいます。

オードリーはよほど感受性が豊かな人なのか、無理強いした演技になることがありません。ホリーという複雑な背景を持つ女性に共感し、惚れ込んでいるからこそ見せる自然な涙であり、笑顔なのです。

ふとした瞬間に、繊細で陰影の影を映し出す何気ない表情も彼女の魅力の一つでしょう。これもまたホリーを演じる上で大きな魅力となっているのです。

ユベール・ド・ジバンシィのドレスを纏った彼女が映画の中では、プロのモデルとは違う一種の清涼感を醸し出し、みずみずしいオーラを漂わせます。そして特に凄いのが衣装に負けてないところ。あらゆるシーンで完璧に着こなしているところですね……。

都会の片隅で生活し、ティファニー宝石店を闊歩するギャップは相当なものがあるはずなのですが、オードリーならまったく違和感がありません。これもひとえにオードリーの感性とセンスが成さしめる業なのでしょう……。

 

マンシーニの音楽が美しく演出

この映画で忘れられないのは、主題曲『ムーンリバー』をはじめとして全編の要所、要所につけられたヘンリー・マンシーニの音楽です。

ティファニー宝石店でオードリーがパンをかじりながら佇む冒頭のあの名シーン‥‥。何でもない光景のはずなのに、切なさや愛おしさが漂う独特の雰囲気が醸し出されるのはオードリーの個性と音楽の情感がピタリとハマっていたからなのでしょう。

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ヘンリー・マンシーニとオードリー・ヘプバーン 1月1日:1961年、映画「ティファニーで朝食を」のサウンドトラック用の楽曲「ムーン・リバー」のレコーディング練習をするヘンリー・マンシーニとオードリー・ヘプバーン(Photo by GAB Archive/Redferns)。

オードリーとマンシーニの縁は深く、共に役者として、音楽家として最高に認め合う存在であったこともこの映画をより魅力あるものにしているのは間違いありません。

オードリーの役者としての輝きに最高の賛辞を送っていたマンシーニと、「美しくセンシティブな音楽にすっかり夢見心地になる」とコメントするオードリーの言葉には互いの信頼関係が伝わってきます‥‥。

ちなみにマンシーニが「彼女のためだけに作った」というように、オードリーの声域を考えて作られたのが主題曲『ムーンリバー』だったのでした。

この映画を皮切りに、その後もスタンリー・ドーネン監督の『シャレード』(1963年)、『いつも二人で』(1967年)、テレンス・ヤング監督の『暗くなるまで待って』(1969年)など、それぞれ印象に残る映画でヒロインと作曲家として最高のタッグを組むようになるのでした。

見どころ

オープニング

誰もが一度は目にしたことがあるほど有名なオープニングシーン。

主題曲『ムーンリバー』に乗って、ニューヨーク五番街のティファニー宝石店のショーウィンドウの前でパンを頬張るホリー(オードリー・ヘプバーン)の後ろ姿がとても印象的!

タクシーを呼んで

ホリーとポールがタクシーを呼ぶ瞬間のシーン。オードリーがサングラス越しに覗き込むような表情も印象深い。

窓辺のムーンリバー

オードリー自身が窓辺で主題曲『ムーンリバー』をギターを弾きながら口ずさむシーン。初々しく切ない情感が伝わってくる。

ティファニー宝石店で

二人は高級宝石店ティファニーを訪れるが、見るだけで実際に買えるもの何もない…。

そこでポールはおもちゃの指輪に名前を刻んでほしい?と提案すると店員は受諾する。寛いだ雰囲気の中でやり取りされるユーモアと洒落た感覚がなんとも言えない。

ブラジルのフィアンセ

今後のこと、ブラジルのフィアンセのことを屈託なくポールに話すホリー。ローアングルからニューヨークの日常をバックに捉えたがシーンが印象的。

ラストシーン

雨中のタクシーでポールからフィアンセの手紙を受けとったホリーは「結婚はお断り」と知らされる。愛も人も信じられない…と自暴自棄になり、遂には飼い猫まで雨中に追い出す始末。この様子に愛想を尽かしたポールは「もうこれっきりにしよう」とタクシーを後にするのだが……。

 

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