前衛?芸術?センセーショナルな議論を呼んだストラヴィンスキー『春の祭典』

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バレエの概念を根底から覆す

バレエ音楽『春の祭典』というと、皆さんはどのようなイメージが浮かぶでしょうか?

おそらく「ああ、あの前衛的な音楽ね」とか、「何だかよく分からないけど、原始的なエネルギーが凄い迫力」、などのような感想が圧倒的でしょう。

今や現代を代表する最も有名なバレエ音楽で、知らない人が少ないのではないかと思えるほどの名曲ですね!

発表当時(1913年)センセーショナルな話題を提供し、音楽界を騒然とさせた作品です。

しかし、様々な映画音楽や前衛的な音楽を聴き慣れた私たちにとっては、むしろその独特のリズムや不協和音がかえって聴きやすく親しみやすく感じるから不思議ですね……。

優れた心理描写と情念

『春の祭典』はそれぞれの楽器のもつ潜在的な特徴や音色を感覚的に突き詰めることで、音楽として優れた心理描写を生み出したといっていいでしょう。

音楽が始まった途端に、様々なイメージや情念が湧いてくるのはそのせいかもしれませんね…。

この作品は従来の優雅なバレエの概念を変えただけでなく、音楽の在り方や舞台と音楽とのかかわりに一石を投じたのでした。

『春の祭典』は音楽を聴くだけでなく、一度バレエの生公演に接してみてください! そうすればこの音楽は、あなたにとってぐーんと身近なものになるに違いありません。

なぜなら、決して理屈云々という音楽ではなく、感覚性に秀でた作品だからです。実体験を何度も重ねることで様々なメッセージが伝わってくるようになるでしょう。

おそらく、舞台の視覚的効果や独特の雰囲気と相まって、身体の中で眠っていた何かが呼び覚まされるような感覚を受けるかもしれません!

また、終始、抽象的な音やリズムが続出するために、クラシックからコンテンポラリー、舞踏まで幅広い領域の演出や振付に対応が可能なのです。

 

聴きどころ

第1部 大地の礼賛・序奏

蒸せるような熱帯の夜明けだろうか…。楽器の色彩的かつ神秘的な響きが非常に印象的。ルソーの密林の絵を思わせるような楽器の心理描写が秀逸だ! 特にファゴットは独特の匂いが漂ってくるよう。

第1部 大地の礼賛・春のきざし

音楽全体にメリハリが効いていて、楽器の特徴を活かしきった変則的なリズムが効果てきめん。無調の主題の変化と発展がさらにドラマチックな緊張感を高める!

第2部 生贄の儀式・生贄の踊り

楽器の描写が空間的な拡がりを持つ激しい舞踊となって狂喜乱舞と化する! ティンパニや金管楽器の強烈な存在感や有機的な響きが印象的。

オススメ演奏

管弦楽の効果という面で『春の祭典』が映画音楽や各方面の音楽に与えた影響ははかりしれません。現在もその発想や楽器の使用法は『春の祭典』に負うところが多く、いかに時代を大きく先行していたのかを物語るのです。

ゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管弦楽団

ロシアの侵略紛争の件でヨーロッパのオーケストラとの契約解除が話題になったワレリー・ゲルギエフ。

彼が世界の舞台に復活する日は来るのでしょうか…。春の祭典はゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管弦楽団の1999年録音盤が圧倒的な素晴らしさです!

楽器の多彩な表情と意味深い響き……。緊迫感あふれる間とフレージング、そして変拍子のリズムが奏でる猛烈なエネルギー、どれもこれも有機的で完璧なまでのオーケストラコントロールの技が全編を覆います。

ストラヴィンスキーがこの作品に込めた想いを徹底的にあぶり出そうとしていることが充分に伝わってきます……。

もし、この演奏が実際にバレエの公演でオーケストラピットから流れたならば、どれほど興奮し、感動するでしょうか!

サロネン指揮ロサンゼルスフィルハーモニー管弦楽団

研ぎ澄まされた感覚を持つ透明感あふれる演奏です。楽器のバランス感覚や色彩的な響きの美しさが圧倒的! 

オケの自在なコントロールも素晴らしく、声高に叫ばなくても音楽の魅力を表現し尽くした最上の例でしょう。

 

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この記事を書いた人

1961年8月生まれ。グラフィックデザインを本業としています。
現在の会社は約四半世紀勤めています。ちょうど時はアナログからデジタルへ大転換する時でした。リストラの対象にならなかったのは見様見真似で始めたMacでの作業のおかげかもしれません。
音楽、絵画、観劇が大好きで、最近は歌もの(オペラ、オラトリオ、合唱曲etc)にはまっています!このブログでは、自分が生活の中で感じた率直な気持ちを共有できればと思っております。

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