心象風景と現実がオーバーラップした絵画 モネ「睡蓮」

「睡蓮」クロード・モネ/1919年、メトロポリタン美術館

 

モネ晩年のライフワーク

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モネが晩年を過ごした家

モネは見慣れた何でもない風景にちょっとした魅力を発見し、それを光と色彩の巧みな描写によって絵の魅力を倍増させた人でした。

ところで「モネの代表作は何か?」とたずねられたら何と答えますか?おそらくほとんどの方は「睡蓮」と答えるのではないでしょうか?モネ=睡蓮だという方もいるくらいです。

確かにこの「睡蓮」のシリーズは画家としてのモネのすべてがあるといっても過言ではありません。それほど生命力、色彩の神秘的な鮮やかさ、存在感では際立っているのです。

「睡蓮」モネ/1916年、国立西洋美術館

世界各国に連作として結構な数の「睡蓮」が展示されていますが、国立西洋美術館の「睡蓮」も素晴らしい出来映えです。モネはアトリエにわざわざ日本式の庭園を造り、晩年の創作のほとんどを「睡蓮」に費やしたといいます。

睡蓮と水面の対比が映し出す神秘

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モネの庭園。緑の橋にぶら下がる木の枝と色とりどりの花が咲く小さな池。

時間の流れとともに多彩な表情を映し出す水面とそこに浮かぶ睡蓮の花の対比の面白さ……。それはモネの創作意欲をこの上なく刺激したのかもしれません!

「睡蓮」はモネ自身、庭園の池という限られた空間に表出する神秘の世界をまるで宇宙を見るような興味と関心を注いで描き綴ったような気がしてなりません。

画面全体を埋め尽くす水面の大胆な構図や迷うことなく運ばれる筆のタッチは神秘の世界を醸し出しています。

光に反響した水面は強いエネルギーを獲得し、神秘的な輝きを放っています!これは、当時視力を失いかけていたモネの渾身の作で、そのあまりの絵に対する純粋さに心うたれてしまいます。

心象風景と現実のオーバーラップ

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ジヴェルニーの睡蓮の池に佇むジェルメーヌ・ホシェド、リリ・バトラー、ミーム・ジョセフ・デュラン=リュエル、ジョルジュ・デュラン=リュエル、クロード・モネ。1900年、デュラン=リュエル文書館の所蔵品。(写真提供:Fine Art Images/Heritage Images/Getty Images)
「睡蓮」はモネ自身の心象風景なのかもしれませんし、希望の灯を失わずに生きていこうという強い信念が水面に映る夕陽として結実したのかもしれません。
「時間の流れとともに多彩な表情を映し出す水面とそこに浮かぶ睡蓮の花の対比の面白さ……。」
モネは晩年自宅にこもり、よくも飽きもせずにと思うくらい睡蓮の絵ばかりを描き続けました。
この作品をじっと見ていると、もはや具象とか抽象とかという形式的なジャンルで区分けできるような絵ではないということを痛感するのです。
色彩やフォルム、空気感、時間軸までが渾然一体となっており、モネが行きついた最終境地ともいえるでしょう。
モネにとって睡蓮の池は喜怒哀楽を率直に映し出す鏡であり、心の原風景となっていたのかもしれませんね……。
睡蓮シリーズは、画集や写真で見るよりも原画を直接ご覧になるほうがいいのは間違いないでしょう。
なぜなら、画家の絵に込められた筆のタッチ、息づかいや微妙な色合いのニュアンス等の絵全体から伝わるメッセージは印刷物とではやはり段違いだからです。

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