春の到来に胸躍らせる喜びの交響曲! シューマン・交響曲第1番「春」

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人生の「春」を謳歌

 

シューマンが晩年を過ごしたドイツ・デュッセルドルフ

昔から幸福の絶頂期に書かれた作品は、不朽の名作が誕生しやすいとよく言われています。

喜びや未来ヘの希望がエネルギーとなって創作力を奮い立たせるからなのでしょうか……。

それが事実だとすればロベルト・シューマンの交響曲第1番「春」も充分それに当てはまりますね。

しかもわずか4日ほどで「燃えるような想い」を抱くこの交響曲は書きあげられたのです!

特に「春」が作曲された前年の1840年は彼にとって特別な年でした。

長い間交際を続けてきたクララと晴れて入籍した年でもありました。

そして、これまであまり手をつけてこなかったリート(歌曲)で『詩人の恋』、『リーダークライス』、『女の愛と生涯』と歌曲史上に残る不朽の傑作を生み出したのです。

まさに歌の年といわれる所以でもありますよね……。

 

胸ときめく楽想

 

歌曲での成功体験を基に、シューマンの作品はますます円熟味を増し加えていきます…。交響曲第1番「春」はベートーヴェン風の古典的で強靭なスタイルを核心部分に導入したものでした。

ただし古典的なスタイルではあるものの、シューマンならではの清涼なロマンティズムが色濃く流れ、独特のオリジナリティを醸し出しているのです。

ロバート・シューマン(1839年)
Robert Schumann 1839

「春」のタイトルどおり、早春の風や柔らかな陽射し、春の余韻がロマン的な情緒とともに全編に漂います。

それだけでなく、音楽の端々から待ち焦がれた季節の到来が生命のエネルギーの爆発や躍動感となって現れるのです。

ドイツ的な剛毅さや前進する迫力も併せ持つ作品ですが、楽器の無垢な響きや透明感、色彩豊かなハーモニーがワクワクするような楽しさも伝えてくれますね!

この作品の魅力の一つとして、スケールの大きな造型を備えているにもかかわらず、決して深刻になったり重苦しく無いところもあげないわけにはいかないでしょう。

 

聴きどころ

第1楽章 Andante un poco maestoso – Allegro molto vivace

金管楽器のファンファーレで開始する壮麗な序奏部分が印象的! 大きなうねりを伴いながら音楽はどんどん発展していく。

ピークとなって姿を現す第1主題はまるで強いエネルギーを放射するリズムの祭典のよう!

第2楽章 Larghetto – attaca

「春」を想わせる早春の風や柔らかな陽射し、木漏れ日のひととき……。「春」を想わせる季節の余韻が心地よく、最後は名残惜しさを漂わせながら終了する。

第3楽章 Scherzo. Molto vivace

決然としたドイツ風の剛毅な響きが印象的だが重苦しさはまったくない。中間部では色彩豊かな楽器のリズムや心のときめきがワクワクするような楽しさを伝えてくれる。

第4楽章 Finale. Allegro animato e grazioso

颯爽とした喜びに満ちたテーマが演奏されると、無邪気で可愛らしいテーマが登場する。その後は次々と主題の装いを変え発展しながら歓喜のフィナーレを迎える!

オススメ演奏

オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア交響楽団

 

ロマン派の格調高い作品の指揮をしたら右に出る者がないと言われるのがオットー・クレンペラーです! 

フィルハーモニアを振ったEMIの晩年のステレオ盤は録音も良く、「春」はメンデルスゾーンの「スコットランド」や「真夏の夜の夢」などと並ぶ屈指の名演奏かもしれません。

第1楽章も焦らず急がず、格調高さはもちろんのこと、作品から立体感と深さを引き出すところが凄いです!第1楽章冒頭のファンファーレの見事さには思わず襟を正される想いです……。 

第2楽章の味わい深い叙情表現。第3、第4楽章の輪郭をくっきりと表現しているにもかかわらず、まったく薄味にならない凄み! 

スッキリと明確な表現でありながら、たとえようのない精神性と音楽の本質にどこまでも迫ろうとする心意気!

まさに音楽の理想の境地が有無をも言わせない演奏で繰り広げられています。

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この記事を書いた人

1961年8月生まれ。グラフィックデザインを本業としています。
現在の会社は約四半世紀勤めています。ちょうど時はアナログからデジタルへ大転換する時でした。リストラの対象にならなかったのは見様見真似で始めたMacでの作業のおかげかもしれません。
音楽、絵画、観劇が大好きで、最近は歌もの(オペラ、オラトリオ、合唱曲etc)にはまっています!このブログでは、自分が生活の中で感じた率直な気持ちを共有できればと思っております。

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