コミカルでキュートな魅力作 ストラヴィンスキー・バレエ音楽「プルチネルラ」

作品誕生の背景

 

20世紀初頭、バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の主宰ディアギレフは斬新な発想と芸術性で、次々とバレエの新作を発表していました。

音楽はラヴェルやドビュッシー、ストラヴィンスキーなどに、舞台美術はピカソ、マティス、ミロというように、当時の偉大な芸術家や人材を適材適所に配置して、「ダフニスとクロエ」、「ペトルーシュカ」、「春の祭典」、「火の鳥」、「三角帽子」などの多くの傑作を残したのでした。

抜群のキャスティングとプロデュース力、隠れた才能を見出す能力で当時の聴衆を驚かせたのです。

いずれもディアギレフが求めていたのは、クラシックバレエにはないモダンで虚飾を剥ぎ取った新感覚のバレエだったのでした。

すでに「火の鳥」、「ペトルーシュカ」、「春の祭典」で充分な実績を積み上げてきたストラヴィンスキーは、ディアギレフにとって期待の星でした。

 

「プルチネルラ」はイタリアの作曲家ペルゴレージの古典劇作品を題材にしたバレエ音楽で、原曲はベルゴレージを始めとする17世紀イタリアの作曲家が題材になっています。

ディアギレフからの依頼に最初は乗り気ではなかったストラヴィンスキーですが、原曲となる譜面を見せられてインスピレーションが湧いたのでしょう……。それを気持ち良く快諾したのでした。

バレエ・リュスを結成したディアギレフ(上の写真で座っている人、下の写真で左から二番目)

 

 

この作品は衣装や舞台美術をピカソが担当したことでも有名です。ピカソ独自のキュビズムをテーマにしたセットは目に焼き付けられるほど斬新で美しいものだったようですね……。

ストラヴィンスキーの音楽との相性も抜群で、まさに新時代のバレエ作品として新鮮な輝きを放っています。

パリ・オペラ座での初演は大成功で、その後もバレエ・リュスの解散まで何度も再演されたのでした。

原始主義から新古典主義へ

photo credit :  pennstatenews on visualhunt/CC BY−NC-ND イーゴリ・ストラヴィンスキー (1882-1971)

 

ストラヴィンスキーの音楽で真っ先に思い出すのは、何と言ってもバレエ音楽の「春の祭典」や「ペトルーシュカ」でしょう!

両作品の楽器の新鮮な響きやリズムの迫力はいつまでも色褪せることなく、バレエ音楽の定番であり続けています。

特に「春の祭典」は不協和音を巧みに組み合わせたり、リズムの迫力を強調して原始的な存在感をアピールすることで、バレエ音楽に革命的な表現の可能性を提示したのでした。

Trailer Pulcinella from sonya on Vimeo.

「プルチネルラ」は古典的な作風と言われます。

それは、音楽の体裁が古典をテーマにした作曲スタイルだからでしょう。

しかし、音楽そのものは「ペトルーシュカ」のように、ストラヴィンスキーでしか作れないオリジナリティあふれる音楽なのです。

コミカルな味わいの中にちょっぴりペーソスを加えた魅力的な作品と言えるでしょう。

聴きどころポイント

ストラヴィンスキーは色彩的な響きの表現が卓越していている人ですが、この作品でもその魅力は充分に感じられますね!

楽器の扱いかたがセンス満点です。楽器のフレッシュな音色が楽しく、遊び心もブレンドされていて、様々な旋律がぐんぐん心に響いてくるのです。

シンフォニア(序曲)

「プルチネルラ」は新古典主義風作品とも言われます。それを最もよく表しているのがシンフォニア(序曲)でしょう!

明るい曲調、整然とした格調高い主題が、これまでのストラヴィンスキーの作品とはひと味違った趣を醸し出します。

セレナータ( Larghetto)

哀愁に満ちた歌と抒情的なオーボエが切なく胸をうちます。

スケルツィーノ

弦楽器やフルート、ピッコロ、オーボエ、ホルンが声を交わすように繰り広げられる部分は夢のようなハーモニーを演出します。

Largo(三重唱)

ソプラノ、テノール、バスの三重唱。それぞれの積もり積もった想いを歌に託します。

タランテラ

ナポリの舞曲。弦の無窮動のようなしなやかな旋律が幻想的な雰囲気を高めてくれます。

Andantino(ソプラノ)

グリーグ「ペール・ギュント」のソルヴェイグの歌を想わせるような悲しみに沈む印象的な曲。

Vivo

チェロ、コントラバス、トロンボーン、チューバ等の低音域の楽器が、おどけたフレーズを奏するユーモラスで楽しい音楽です。

終曲

ハッピーエンドを祝福するかのような音楽。あらゆる楽器の持ち味が生かされたフレッシュな響きが、イメージを膨らませます。

オススメ録音・演奏

ピエール・ブーレーズ盤

 

ピエール・ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン(エラート)が充実した素晴らしい演奏です。

ブーレーズはストラヴィンスキーの音楽との相性が良く、ゆとりのある造型と楽器の音色の新鮮さやバランス感覚に魅了されます。

声楽陣も音楽の本質をしっかり捉えていますね。特にアンソニー・ロルフ・ジョンソンの美声と哀愁を漂わせた歌は最高です!

 

エサ=ペッカ・サロネン盤

サロネン指揮ロンドン・シンフォニエッタ盤は演奏に透明感があって、音楽をスムーズに聴き進められるのがメリットです。

軽快なテンポやリズム、楽器の明るい響きが、この作品にはピッタリです。

歌手たちも持ち味を充分に活かしていて、最初に聴き始めるとしたらこの演奏が馴染みやすいかもしれませんね。

 

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