メロディの宝庫!
一般的にクラシック音楽は他の音楽ジャンルに比べて高級だとか、敷居が高いと思われることが多いようです。でも、実際はどうでしょうか?
確かに他ジャンルに比べれば親しみやすいとは言えないでしょうし、長くて難解な曲もあることはありますね……。
でも、音楽の表現の領域や可能性が広いのもクラシック音楽の魅力です。
その証拠にグレゴリオ聖歌やミサ曲のような静謐で心洗われる音楽こそ音楽の原点だという方もいるでしょう。また、マーラーやショスタコーヴィチのように劇的で骨太な交響曲こそクラシックの醍醐味だと力説する方もいます。
そうかと思えば、ドビュッシーやラヴェルのように変幻自在で詩情豊かな作品がいいという方も少なくありません。
またシューマンやメンデルスゾーンのようなロマンティックで気品に満ちた作品が好きだという方もいます。その一方でヴェルディやワーグナー、プッチーニのようなオペラの声の饗宴こそクラシックの王道だとおっしゃる方の気持ちもよくわかります……。
前置きが長くなってしまいましたが、要するにクラシックはとっつきやすい作品やカテゴリーから入っていけばいいのです。逆に「教養や知識のために聴こう」と意気込むのはやめたほうがいいでしょう。大抵はつまらない体験になってしまいますから……。
結局は「つまらないから聴くのをやめる」ということになってしまうんですよね。
誰でもそれぞれの個性や好みがありますから、「ショパンのピアノ曲は好きだけれど、モーツァルトのピアノソナタはちょっと…」とか、「プッチーニのオペラは好きだけれど、ベートーヴェンの交響曲は苦手だなあ…」とか、そういう声が出てくるのは当然でしょう。
でも、それで良くないですか。クラシック音楽は無理に背伸びをしないで、ちょっとした些細なことから関心や興味を拡げていくのが面白いのですから……。
そのように思えば、チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」はクラシック音楽への入り口として、うってつけの作品といえるでしょう。
何よりバレエ音楽の美味しいところどりだし、無条件で楽しめる美しいメロディや無邪気でファンタジックな魅力が聴く人の心を震わせるからなのです。
バレエ音楽の第一人者
チャイコフスキーはバレエ音楽の作曲家としての腕前と品格、華麗な作風、情感、聴きやすさ等、どれをとっても最高です!
いや、それ以上に現代バレエはチャイコフスキーの甘美なメロディを駆使した作品の出現によって聴衆に受け入れられるようになったといっても過言ではありません。
特に「くるみ割り人形」の親しみやすさやストーリーテラー的な音楽の愉しさは抜群です!
ファンタジックでメルヘンに富んだメロディの数々は屈託が無いですし、チャイコフスキーの舞台音楽家としての感性が最高に発揮された名作なのです!
聴きどころ・見どころ
「くるみ割り人形」組曲は、作曲者自身がバレエ音楽の全曲から聴きどころを抜粋して8曲にまとめた、いわばハイライト版です。
組曲だけではバレエ全曲の興奮と楽しさは味わえないかもしれません。しかし、これらキラキラした音楽の魅力は、これからバレエを本格的に楽しむための扉を開いてくれることでしょう……。
小序曲
チェロ、コントラバスなどの低弦を省き、木管、ホルン、トライアングル、ヴァイオリンだけの楽器編成が魅力的。ファンタジックで可愛らしいテーマが鳴り始めると、なぜかしら胸がワクワク!
行進曲
単独でも演奏される有名な音楽。
ファンファーレが鳴り響いた後に、軽快で躍動感あふれる旋律が奏でられる。
葦笛の踊り
3本のフルートが奏でる主旋律が可愛らしく、どことなくユーモラスで楽しい。
花のワルツ
「くるみ割り人形」で最も有名な曲。優美でファンタジック、そしてロマンチックなメロディはあらゆる人を夢の世界ヘと誘う……。
オススメ演奏
ハインツ・レーグナー指揮ベルリン放送交響楽団
Tchaikovsky: Nutcracker, Sleeping Beauty & Swan Lake (Schätze der Klassik)
この曲は人気曲だけあって実に多くのCDがあります。その中で1枚だけとるならば、ハインツ・レーグナーがベルリン放送交響楽団を指揮した演奏になるでしょう。彼はかつて読売日本交響楽団で常任指揮者(在位1983年ー1992年)を務めたこともある名指揮者でした。
深さ、雰囲気、録音、すべてにおいてバランスがとれた名演奏です。
レーグーナーが引き出す弦の響きは艶があって高級感があります。安心して曲に浸れますし、くるみ割り人形の隠れた魅力を発見できるかもしれません……。