格調高い響きを古楽器の明晰なスタイルで実現! コレギウム・アウレウム合奏団「ヘンデル、合奏協奏曲作品6」

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コレギウム・アウレウム合奏団と言えば、懐かしく思い出される方もいらっしゃるかもしれません…。1970年、1980年代に盛んに演奏活動を行っていたドイツのオリジナル楽器演奏の団体です。

スイス・バーゼルのスコラ・カントルーム合奏団と同様に、古楽器演奏の先駆けを築いた名室内楽団といえますよね。

偶然にも両者はヘンデルの合奏協奏曲作品6を得意とし、それぞれ録音を残していてくれたのはうれしい限りです!

今回は今や忘れ去られようとしているコレギウム・アウレウム合奏団が演奏したヘンデルの合奏協奏曲作品6(DHM)を久々に聴いてみたので、ここに簡単な特徴と感想を記してみたいと思います。

古楽器の黎明期を彩る演奏

 

ヘンデルの合奏協奏曲作品6(1739年)は単純そうで実は大変に難しく厄介な作品です。

彼は同じスタイルの合奏協奏曲作品3(全6曲)を1734年に作曲しています。

しかしこの作品6を聴くと、6年という年月を経て驚くほど作品が深化していることに気づくでしょう(オペラを断念してオラトリオの作曲に一本化しようとする途上だった)。

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そして、いっさい型にはまらない変幻自在な曲調の多彩さに目を見張るばかりです。

しかもこれら12曲をわずか1か月で書き上げてしまうヘンデルの筆の速さにはただただ驚くしかありませんね!

 

現在の古楽器演奏団体との違いに唖然!

さて、コレギウムアウレウム合奏団はバロックからロマン派まで、交響曲、協奏曲、管弦楽曲、オペラ、オラトリオに至るまで幅広いレパートリーを持つ団体で、その活動はとにかくバイタリティにあふれていました。

ヘンデルの合奏協奏曲作品6を演奏する場合はただ誠実に堅実に演奏しても、なかなかいい演奏にはなりません。

楽譜から様々なインスピレーションを導き出しながら、生き生きとした人間感情を織り交ぜつつ、どこまでも格調高い表現に仕上げなければならないのが鉄則なのです!

そう、ヘンデルの合奏協奏曲作品6は豊かな人間感情の表出と格調高い表現が同時になされなければ、なかなかいい演奏にはならないのです。

 

コレギウムアウレウム合奏団の演奏を聴くと、現在の古楽器演奏の団体との表現の違いに驚きます! 

特に楽器の響きの違いには唖然とするかもしれません。感覚の大きなずれとでも言いましょうか……、何か前時代的な感覚がしてならないのではないでしょうか。

現在の古楽器演奏の主流であるノンビブラート奏法や透明感、アタックの強さとはまったく別物の古楽器演奏がここにあります。

弦のたっぷりとした表情、古楽器なのに厚みがある響き、深い呼吸、巧みに織り交ぜられるビブラート……、どうも現在の古楽器演奏の常識からは遠いように感じるかもしれません。

 

豊かな感情移入と深い呼吸

でも演奏はとても聴き応えがあり、改めてこの作品集の素晴らしさを見直させてくれるほどの内容なのです。

古楽器の良さは、どれほど想いを込めても決して表情過多にならないことでしょう。 この演奏はそれを体現しているように思います。

これがモダン楽器だったら、やはりしつこく重々しい演奏になってしまったかもしれませんね……。

裏を返せば、この演奏はそれほど作品に対する思い入れが強く、深い感情移入があるということなのです。コンサートマスターのフランツヨーゼフ・マイヤーを軸にした弦器の響きも柔らかく一つに溶け合っています。

知らず知らずに高い境地に引き上げられるような、何とも言えない心の充足感がある演奏と言っていいかもしれません。

ちょっと趣向を変えたり、効果を狙ったりとか、スタイル重視の演奏では断じてないのです。

 

そうは言うものの、洒落た遊びも随所にあって、センス満点のリズミカルな表現や曲調にしっかりマッチした響き、ニュアンスの豊かさなど、作品への深い愛情が注がれていることも聴きとれます。

この演奏、現在の合奏協奏曲のスタイルや響きに飽き飽きしている方にとって、とても新鮮な音楽体験になるかもしれません。

もしかしたら、ヘンデルの音楽に対する価値観が少し変わるかもしれませんね、是非とも一度は聴いてほしいアルバムです…。

 

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