映画は脚本やストーリー展開、演出、キャスティング、監督の手腕など、さまざまな要素が重なって感動作になり、名作として語り継がれます。
しかし、中には特化した魅力や忘れがたい記憶やメッセージだけで語り継がれる作品もありますし、社会現象となる作品もありますね……。
1961年公開、ブレーク・エドワーズ監督作品の『ティファニーで朝食を』もそのひとつでしょう。ヒロインのオードリー・ヘプバーンの輝くような眼差し、デリカシーあふれる表情、洗練されたファッションが印象的でした。
『ティファニーで朝食を』とは?作品概要・基本情報
作品データ
| 項目 | 内容 |
| 原題 | Breakfast at Tiffany’s |
| 公開 | 1961年 |
| 監督 | ブレイク・エドワーズ |
| 原作 | トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』 |
| 脚本 | ジョージ・アクセルロッド |
| 音楽 | ヘンリー・マンシーニ |
| 主演 | オードリー・ヘプバーン |
| 上映時間 | 約115分 |
| 受賞 | アカデミー賞 作曲賞・歌曲賞(「ムーン・リバー」) |
1961年公開の『ティファニーで朝食を』は、ニューヨークを舞台に、一人の女性の孤独と自由への憧れ、そして本当の愛を描いたロマンティック・ドラマです。
主演のオードリー・ヘプバーンが演じるホリー・ゴライトリーは、映画史に残る魅力的なヒロインとなり、黒いドレスにロンググローブ、パールネックレスという洗練された装いは、現在でも「永遠のエレガンス」の象徴として語り継がれています。
さらに、ヘンリー・マンシーニが作曲した主題歌『ムーン・リバー』は作品の世界観を象徴する名曲となり、映画音楽史に残る傑作として今なお世界中で愛されています。
あらすじ
トルーマン・カポーティの同名小説をオードリー・ヘプバーン主演、ブレイク・エドワーズ監督、ヘンリー・マンシーニ音楽で映画化したラブストーリー。
ニューヨークのアパートで猫と暮らす娼婦ホリーは、ティファニー宝石店の前でパンを食べるのを日課にしていた。
ある日、彼女が住むアパートに作家志望の青年ポールが引っ越してきた。ポールは何ものにもとらわれず、自由で不思議な魅力を持つホリーに次第にひかれていく。
しかし、ホリーにはさまざまな過去や現実があることを、次第に知ることになるのだった……。
『ティファニーで朝食を』はなぜ今も愛されるのか
オードリー・ヘプバーンという唯一無二の存在
本作が60年以上経った現在でも愛され続ける最大の理由は、やはりオードリー・ヘプバーンの存在でしょう。
彼女の美しさは単なる容姿だけではありません。どこか寂しげで、それでいて希望を失わない澄んだ眼差し、少女のような無邪気さと大人の憂いが同居する表情は、ホリーという人物に忘れがたい生命を吹き込みました。
自由奔放に振る舞いながらも心の奥では孤独を抱えるホリーを、オードリーは繊細な感情表現によって自然体で演じています。その姿に多くの観客が共感し、時代を超えて魅了され続けているのです。
「ムーン・リバー」が作品に永遠の命を与えた
映画のもう一つの主役とも言えるのが、ヘンリー・マンシーニ作曲、ジョニー・マーサー作詞による『ムーン・リバー』です。
窓辺でホリーがギターを抱えて静かに歌うシーンは、映画史に残る名場面となりました。
この曲は決して華やかではありません。しかし、その素朴で優しい旋律が、ホリーの心の揺れや夢への憧れを静かに映し出しています。
映画を観終えたあとも『ムーン・リバー』が心に残るのは、映像と音楽が完全に一体となっているからでしょう。
時代を超える普遍的なテーマ
『ティファニーで朝食を』は恋愛映画である以前に、「人は本当に自由になれるのか」という問いを描いた作品でもあります。
誰にも縛られず生きたいという願いと、人とのつながりを求める気持ち。
その二つの間で揺れ動くホリーの姿は、現代を生きる私たちにも重なります。
だからこそ、この映画は公開から半世紀以上経った今でも、多くの人の心を打ち続けているのでしょう。
ホリーという女性が象徴しているもの
「自由」を求め続けた女性
ホリー・ゴライトリーは、お金持ちとの結婚を夢見る華やかな女性として登場します。
しかし、その本質は贅沢な暮らしではなく、「誰にも支配されず、自分らしく生きたい」という切実な願いにあります。
幼い頃から過酷な人生を歩み、過去に縛られることを恐れる彼女にとって、自由とは何よりも大切な価値だったのです。
ティファニーは「心の避難場所」
ホリーは「ティファニーへ行けば嫌な気持ちが消える」と語ります。
ティファニーの宝石店は、単なる高級ブランドではありません。
彼女にとっては、不安や孤独から一時的に逃れられる、穏やかで安全な場所を象徴しています。
つまり『ティファニーで朝食を』というタイトルは、「心が安らげる場所を求め続ける人生」そのものを表しているとも考えられます。
愛することへの恐れ
ホリーは自由を失うことを恐れ、人と深く関わることから逃げ続けます。
猫に名前を付けないのも、「愛着を持てば失う苦しみが生まれる」と考えているからです。
そんな彼女が少しずつポールに心を開いていく過程は、本作最大の見どころと言えるでしょう。
原作と映画の違い
原作はもっとビターな物語
原作小説は1940年代のニューヨークを舞台にした短編小説で、映画よりも現実的でほろ苦い作品です。
ホリーの生活や内面はより複雑に描かれ、読後にはどこか切なさが残ります。
一方、映画版ではロマンティックな要素が強調され、観客が希望を感じられるような演出が施されています。
ラストシーンの違い映画では、雨の中でホリーが猫を抱きしめ、ポールと結ばれる感動的なラストを迎えます。
しかし原作では、ホリーは最後まで自由な旅人であり続け、その行方もはっきりとは描かれません。この違いによって、映画は「愛が孤独を乗り越える物語」として、多くの観客に受け入れられました。
カポーティが思い描いたホリー
原作者トルーマン・カポーティは、当初ホリー役に別の女優を望んでいたことで知られています。
そのため、オードリー・ヘプバーンの起用には否定的だったと伝えられています。しかし結果として、オードリーが演じたホリーは映画史を代表するヒロインとなり、作品そのものの評価を決定づけました。
『ティファニーで朝食を』がファッション映画として語り継がれる理由
ジバンシィが生み出した「永遠のブラックドレス」
映画冒頭、オードリー・ヘプバーンが身にまとう黒いドレスは、デザイナーのユベール・ド・ジバンシィによるものです。
シンプルでありながら気品に満ちたデザインは、「リトル・ブラック・ドレス」の代名詞となり、現在でもファッション史に残る名作として知られています。
ファッションはホリーという人物を語る言葉ホリーの衣装は美しいだけではありません。
黒いドレスやサングラス、パールネックレス、ロンググローブといった装いは、彼女が理想とする都会的で洗練された女性像を映し出しています。
一方で、部屋では気取らないシャツ姿や素足で過ごす場面も多く、そのギャップがホリーの人間らしさを際立たせています。
現在でも色あせないスタイル
公開から60年以上経った今でも、映画の衣装は世界中のファッション誌や映画特集で取り上げられています。
『ティファニーで朝食を』は単なる恋愛映画ではなく、映画・音楽・ファッションが見事に融合した総合芸術とも言える作品です。
オードリー・ヘプバーンが体現したエレガンスは、流行を超えて受け継がれ、多くの女性たちの憧れであり続けています。
オードリー・ヘプバーンが演じるホリーの魅力
『ティファニーで朝食を』はニューヨークを舞台にしたラブストーリー映画。どこにでもある、ありふれたテーマで、実際内容もどこをどうという映画ではないかもしれません。
原作者のトルーマン・カポーティは「あまりにも原作のイメージと違いすぎる」とか、ヒロインのホリー役をめぐっては「なぜオードリーなんだ?」と辛辣な非難を浴びせたりしています。
でもストーリーや内容を抜きにしても絶賛されるべきなのが、オードリー・ヘプバーンの魅力でしょう。
それは彼女が随所に見せる表情の美しさ、目の輝きです。『ティファニー』に限ったことではありませんが、その澄んだ眼差し、キラキラ輝くような瞳の美しさに思わず惹きつけられてしまいます。
オードリーはよほど感受性が豊かな人なのか、無理強いした演技になることがありません。ホリーという複雑な背景を持つ女性に共感し、惚れ込んでいるからこそ見せる自然な涙であり、笑顔なのです。
ふとした瞬間に、繊細で陰影の影を映し出す何気ない表情も彼女の魅力の一つでしょう。これもまたホリーを演じる上で大きな魅力となっているのです。
ユベール・ド・ジバンシィのドレスを纏った彼女が映画の中では、プロのモデルとは違う一種の清涼感を醸し出し、みずみずしいオーラを漂わせます。そして特に凄いのが衣装に負けてないところ。あらゆるシーンで完璧に着こなしているところですね……。
都会の片隅で生活し、ティファニー宝石店を闊歩するギャップは相当なものがあるはずなのですが、オードリーならまったく違和感がありません。これもひとえにオードリーの感性とセンスが成さしめる業なのでしょう……。
『ムーンリバー』が映画を永遠の名作にした理由
この映画で忘れられないのは、主題曲『ムーンリバー』をはじめとして全編の要所、要所につけられたヘンリー・マンシーニの音楽です。
ティファニー宝石店でオードリーがパンをかじりながら佇む冒頭のあの名シーン‥‥。何でもない光景のはずなのに、切なさや愛おしさが漂う独特の雰囲気が醸し出されるのはオードリーの個性と音楽の情感がピタリとハマっていたからなのでしょう。


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オードリーとマンシーニの縁は深く、共に役者として、音楽家として最高に認め合う存在であったこともこの映画をより魅力あるものにしているのは間違いありません。
オードリーの役者としての輝きに最高の賛辞を送っていたマンシーニと、「美しくセンシティブな音楽にすっかり夢見心地になる」とコメントするオードリーの言葉には互いの信頼関係が伝わってきます‥‥。
ちなみにマンシーニが「彼女のためだけに作った」というように、オードリーの声域を考えて作られたのが主題曲『ムーンリバー』だったのでした。
この映画を皮切りに、その後もスタンリー・ドーネン監督の『シャレード』(1963年)、『いつも二人で』(1967年)、テレンス・ヤング監督の『暗くなるまで待って』(1969年)など、それぞれ印象に残る映画でヒロインと作曲家として最高のタッグを組むようになるのでした。
映画『ティファニーで朝食を』の名シーン・見どころ
オープニング
誰もが一度は目にしたことがあるほど有名なオープニングシーン。
主題曲『ムーンリバー』に乗って、ニューヨーク五番街のティファニー宝石店のショーウィンドウの前でパンを頬張るホリー(オードリー・ヘプバーン)の後ろ姿がとても印象的!


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タクシーを呼んで
ホリーとポールがタクシーを呼ぶ瞬間のシーン。オードリーがサングラス越しに覗き込むような表情も印象深い。


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窓辺のムーンリバー
オードリー自身が窓辺で主題曲『ムーンリバー』をギターを弾きながら口ずさむシーン。初々しく切ない情感が伝わってくる。


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ティファニー宝石店で
二人は高級宝石店ティファニーを訪れるが、見るだけで実際に買えるもの何もない…。
そこでポールはおもちゃの指輪に名前を刻んでほしい?と提案すると店員は受諾する。寛いだ雰囲気の中でやり取りされるユーモアと洒落た感覚がなんとも言えない。


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ブラジルのフィアンセ
今後のこと、ブラジルのフィアンセのことを屈託なくポールに話すホリー。ローアングルからニューヨークの日常をバックに捉えたがシーンが印象的。


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ラストシーン
雨中のタクシーでポールからフィアンセの手紙を受けとったホリーは「結婚はお断り」と知らされる。愛も人も信じられない…と自暴自棄になり、遂には飼い猫まで雨中に追い出す始末。この様子に愛想を尽かしたポールは「もうこれっきりにしよう」とタクシーを後にするのだが……。


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