バッハ《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番》の魅力|ガヴォットで有名な明るく気品ある名曲

目次

バッハ《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番》とは?|作品概要と基本情報

作品データ

項目内容
曲名無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番
原題Partita No.3 für Violine solo
作曲者J.S.バッハ
作品番号BWV1006
作曲年1720年頃
調性ホ長調
楽章構成全7楽章
演奏時間約18〜20分

作品概要

バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータで
例外的に親しみやすいのがパルティータ第3番

《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番》は、バッハが作曲した《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》全6曲の最後を飾る作品です。

無伴奏ヴァイオリン作品集といえば、深遠な精神性や厳格な対位法によって「ヴァイオリン音楽の旧約聖書」とも呼ばれる存在ですが、その中でも第3番はひときわ明るく開放的な雰囲気を持っています。

冒頭のプレリュードから終曲ジーグまで、生き生きとした躍動感と輝かしい響きに満ちており、聴く人を自然と前向きな気持ちへ導いてくれます。

また、第3楽章のガヴォットは単独で演奏される機会も多く、クラシック音楽にあまり馴染みのない人でも耳にしたことがあるかもしれません。

バッハの無伴奏作品の中では比較的親しみやすく、初めて聴く人にもおすすめできる名作です。

なぜ《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番》は親しみやすいのか?

バッハの無伴奏ヴァイオリン作品は、その芸術性の高さゆえに「難解」「近寄りがたい」と感じられることがあります。

実際、ソナタ第1番や第2番、あるいは有名な《シャコンヌ》などには深い精神性や重厚な世界が広がっており、集中して聴くにはある程度の心構えが必要かもしれません。

ところが、《パルティータ第3番》にはそうした重苦しさがほとんどありません。

全体を包んでいるのは、イタリア音楽を思わせる軽快さと明るさです。舞曲を中心に構成されていることもあり、旋律は親しみやすく、リズムも自然で軽やか。まるで春の日差しの中を散歩しているような心地よさがあります。

無伴奏ヴァイオリン作品集全体を険しい山脈に例えるなら、《パルティータ第3番》はその中に現れるオアシスのような存在でしょう。

もちろん単に明るいだけではありません。

中間部ではふと陰影のある表情を見せたり、何気ない旋律の中に深い情感を忍ばせたりと、随所にバッハならではの奥深さが感じられます。

親しみやすさと芸術性が高い次元で両立していることこそ、この作品が長く愛され続ける理由なのです。

なぜ《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番》は“オアシス”なのか?

バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ(全6曲)は、バッハの器楽曲の最高傑作で、ヴァイオリンの最高峰などとよく言われます。

確かに素晴らしい作品だと思います。一挺のヴァイオリンから深遠な感情を引き出し、宇宙の調和をも感じさせる神秘的な響きを表現した作品は他にないでしょう。

ただし、自分の身体の調子が良くないときや、疲れているときは最後まで聴きとおすのが、とても辛く感じます……。

ベートーヴェンの第5やモーツァルトの40番を聴いても、決してそんなふうには感じられないので、これは相性の問題なのかもしれません。

こんなことをいうと、作品自体とっつきにくい…と思われるかもしれませんが、芸術的な香りや、味わい深さはやはり格別です。

そんなバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータの中で、例外的に親しみやすいのがパルティータ第3番です。

この曲だけは、バッハが自分の感覚やイメージを大切にしながら、とことん楽しんで作ったのではないか…と思えるのです。

パルティータ第3番全体を貫いているのはドイツ的な重厚さというよりはイタリア的な軽快さと明るさなのです。例えて言うなら、無伴奏ヴァイオリン集の高い山の峰に囲まれたオアシスのような存在といえるかもしれません。

でも主題の明るさ、輝かしさだけではなく、中間部の翳りの表情、陰影の表現はバッハならではの魅力を伝えていて、少しも薄味にならないのはさすがです!

全曲は7楽章構成で出来ていますが、特に3曲目のガヴォットは、ヴァイオリンコンクールや発表会でもよく弾くかれることで有名ですね!

生き生きとしたプレリュード

第1楽章のプレリュードは、何て即興性にあふれた音楽でしょう!

このときバッハはとても気分が良かったのでしょうね……。

音のつづれ織りのように、次々と現れる主題や経過句は自由な感性やインスピレーションに満ちていて、爽やかな旋律にどんどん惹きつけられていきます!

ヴァイオリンの高音の魅力やリズミカルなパッセージは、聴いているだけでも自然と身体が動き出しそうですね!

なぜガヴォットは有名なのか?

第3楽章のガヴォットは、《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番》の中でも特に有名な楽章です。

演奏会のアンコールや発表会、コンクールなどで単独演奏されることも多く、ヴァイオリンを学ぶ人なら一度は耳にする名曲といえるでしょう。

その人気の理由は、まず何よりも旋律の親しみやすさにあります。冒頭から現れる主題は明るく爽やかで、一度聴いただけでも自然と耳に残ります。

しかも技巧的な華やかさを持ちながら、決して難解にならず、聴く人に素直な喜びを伝えてくれるのです。また、この曲にはバッハ特有の品格も備わっています。

楽しげな音楽でありながら決して軽薄にならず、どこか折り目正しく気品が漂っているのです。そのため子どもから大人まで幅広い世代に愛され、長年にわたって演奏され続けています。

親しみやすさ、華やかさ、そして気品。その三つが見事に調和していることが、ガヴォットが単独でも演奏されるほど高い人気を誇る理由なのでしょう。

単独で演奏されるガヴォット

コンサートのアンコールで弾かれたり、コンクールでも弾かれることが多い第3楽章のガヴォットですが、明るくて愛らしい曲調は全曲の華と言ってもいいでしょう!

バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番よりガヴォット/ヘンリック・シェリング(Vn)

楷書風で折り目正しくキッチリと書かれた作品ですが、決して他のソナタ、パルティータ作品に比べて劣っているわけではありません。

何と言っても、この音楽の一番の魅力は分かりやすく親しみやすいところですね! 

そのうえ、純粋無垢な遊び心と気品が漂い、ヴァイオリン奏者も聴く人も幸せな気分にさせてくれます。

バッハを知り尽くしたシェリング

United Nations Photo on Visualhunt.com / CC BY-NC-ND  演奏会でのヘンリク・シェリング(中央、1967年)

無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータの演奏は名曲だけあって実に選り取り見取り……。正直なところ、どれを選んでいいのかまったく分からないという状況に陥りやすいのは確かです。

その中でとびきりの名演を選ぶということになれば、録音は古いですがヘンリク・シェリング盤(ユニバーサルクラシック)ということになるでしょう。録音後すでに50年以上の歳月が経ちましたが、中でもパルティータ第3番はヘンリク・シェリングの独壇場です。

何よりも音に芯があって艶があり、音楽の美しさがストレートに伝わってくるのです!

中でもガヴォットの美しさは格別です!

シェリングは相当なデフォルメをしているのでしょうが、本質をしっかり掴んでいるために、まったく音楽が窮屈になることがありません。生き生きとした情感と無類のテクニックが合わさって、最上の音楽を創りあげているのです!

無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ

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