美貌・美声・スター性! 名ソプラノが残した魅力満載のアルバム「アンナ・モッフォ名唱集」

三拍子揃ったスター歌手

 

一時代を築いたアンナ・モッフォ(1932−2006)というソプラノ歌手をご存知でしょうか?

 

オペラ界のスターとして君臨するには、三拍子揃っていなければならないと言われます。

その一つは言うまでもなく歌の上手さですね。声量や声の美しさ、情感、テクニックがあげられるでしょう。

 

そして二つ目はステージ上で放つ存在感とオーラです。表現力、演技力はオペラには欠かせません!

最後にくるのがルックスやスタイルです。

 

これに関しては特に要求されませんが、でも容姿がいいとステージ上で映えるし、大きなアドバンテージになるのは確かです。

実はこの三つを兼ね備えている人はなかなかいません、

したがって、これらすべて持ち合わせている人はスターとしての将来、つまりディーヴァ(歌姫)としての将来を約束されたも同然とみていいでしょう。

 

絶対的なスター、ディーヴァとして、すぐに思いあたるのは何と言ってもマリア・カラスですね。最近であればアンナ・ネトレプコやアンジェラ・ゲオルギューがそれにあたるのかもしれません……。

でもアンナ・モッフォはそれらすべてを高いレベルで持ちあわせた稀有な存在だったといっていいでしょう!

 

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アンナ・モッフォの芸術

 

アンナ・モッフォはアメリカ出身のソプラノ歌手です。

ハリウッドからのオファーやテレビの出演依頼も数えきれず、実際に番組の司会を担当したこともありました。

長身で切れ長の目、通った鼻筋、スター性あふれる容貌は、写真で見ても一目瞭然です。

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アンナ・モッフォが1970年代にテレビ出演したときの様子。

今回ご紹介する「アンナ・モッフォ名唱集」は、オペラ歌手としての力量というよりは、一般的に親しまれている小品、作品がセレクトされているのが魅力です。

しかもバックを務めるのが名匠レオポルド・ストコフスキー(1882−1977です。

彼はディズニー映画の「ファンタジア」などの音楽を担当した人で、聴かせ上手なことと、演出が見事なことで「音の魔術師」とも言われた人でした。

 

The Library of Congress on VisualHunt.com/ No known copyright restrictions レオポルド・ストコフスキー(1882-1977)

 

このような作品集が彼に合わないはずがありません!

ストコフスキーの名演出と雄弁な指揮のもとに、モッフォは水を得た魚のように作品から様々な意味を引き出したのでした!

モッフォは他の歌手からは絶対に聴けないと思われる、ドラマチックで私小説風な表現をあたりまえのように成し遂げていきます……。

 

モッフォの魅力が結集!

 

 

アルバム最初の曲カントループのオーヴェルニュの歌「アントゥエノ」は、ストコフスキーの指揮が色彩豊かで、一瞬にして別世界に誘われます! 

広々としたスケール雄大な音楽はまるで山頂から見渡す山々や大地のよう……。

そこに登場するモッフォの歌も颯爽としていて、空気感あふれる自然な発声が身震いするほどの感動を伝えてくれます!

 

ヴィラ・ロボスのブラジル風バッハ第5番も哀愁を帯びた歌声が忘れがたい印象を残します。

曲が進むにつれて変化する声の表情や凜とした淀みのない表現は圧巻としかいえません!

そして望郷の想いさえ漂う声のメッセージは、いつしか心に深く刻まれていくことになるのです。

ラフマニノフの「ヴォカリーズ」も一世一代の名演ですね!

ここでのモッフォは凄いとしか言いようがありません。他にたくさんのヴォカリーズを聴いてきましたが、やはりこの曲は彼女に尽きますね!

声の表情は一小節たりとて同じところはありません。ただただ、そのことに驚きますが、それにつけるストコフスキーの雰囲気満点な伴奏も光ります!

以前NHKのラジオ番組でヴォカリーズがエンディングテーマになっていましたが、その録音こそモッフォの歌だったのでした。

番組スタッフの審美眼に感心した次第です。

 

この演奏を聴いていると、ちらつく粉雪や冷たく白い吐息が映像として浮かんでくるのですが、それは私だけでしょうか……。

映像が浮かぶというのは、それだけ彼女の情感や表現力が卓越しているからなのでしょう!

しかも映像としてだけでなく、心に染み入る情感があります。寂寥感を漂わせる透明感に満ちた歌声! 心がどこかに連れ去られてしまいそうです。

 

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