極上の時を約束する究極の音楽と舞台・レハール『メリー・ウィドウ』

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あらすじ

舞台は20世紀初めのパリ。ハンナはボンテヴェドロ国の富豪グラヴァリと結婚するが、数日後に彼は急死する。外交官ツェータ男爵は、グラヴァリから莫大な財産を引き継いだハンナがパリの男性と再婚すれば国が破産してしまうと危機感を持つ。ツェータ男爵は書記官の伯爵ダニロを呼び出し、ハンナに求婚するよう命じる。
実はダニロとハンナはかつての恋人同士で、身分の違いのために結ばれなかったのだった。しかしダニロはハンナを愛しているのになかなか素直になれない…。一方ハンナは、ツェータ男爵の妻ヴァランシエンヌを助けるために、ヴァランシエンヌの密会相手カミーユとの婚約を発表する。これを知ったダニロは激怒するのだった。

作曲時のエピソード 

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フランツ・レハール(1870ー1948)が作曲したオペレッタ「メリー・ウィドウ」をご存知でしょうか? 笑いあり、涙あり、踊りの見せ場もあり、甘く切ない音楽や雰囲気に心ひかれる極上の音楽劇です。

スタンダードナンバーも多く、現代のミュージカルに多大な影響を与え、音楽劇に新風を巻き起こした第一級のエンターテイメントといえるでしょう!

そう「メリー・ウィドウ」は今も昔も変わらぬ大人気プログラムなのです。

「メリー・ウィドウ」にはさまざまなエピソードがあります。特に有名なのが作曲家の交代かもしれません。

脚本家のレオンが最初に作曲を依頼したのは、オペレッタ「オペラ舞踏会」で評価が高く、軽妙なフランスものを得意にしていたリヒャルト・ホイベルガー(1850-1914)でした。

ホイベルガーは作曲に情熱を注いだものの、出来あがったいくつかの曲を聞いたレオンは満足できなかったため、ホイベルガーとの契約は破棄されることになったのでした。

代わりに起用されたのがレハールだったのです。

「災い転じて福をなす」ではありませんが、レハールの起用は幸運だったとしか言いようがないですね。明らかにこの作品に魅力と生命を吹き込んだといえるでしょう。

懐かしく幸福な気分にさせる

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「メリー・ウィドウ」は初演から半世紀でなんと50万回以上も世界で上演されたそうです!

楽譜やレコードの売上も数千万ドルに上ったと言われています。その人気は映画、ファッションはもちろん、菓子やチョコレートなどの商品化に至るまで社会現象化したのでした。

劇はドタバタのコメディ調で進行しますが、とにかくレハールの音楽が気がきいていて、楽しくて美しいのです!

はっとするような懐かしい楽器の響き。優しさにあふれたメリー・ウィドウのワルツを始めとする甘く切ないメロディ。どれもこれも人間味がにじみ出ていて寄り添うような調べなのです。

上質なミュージカルのよう!

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「メリー・ウィドウ」はオペレッタの傑作というだけでなく、演劇、ショービジネスのあり方も大きく変えました。

オペラはなんとなく敷居が高い、途中で眠くなってしまう、泣いたり笑ったりできない……。そんな音楽ファン、舞台ファンの長年のストレスを一掃したのも作曲家レハールをはじめとする脚本家、劇場の大きな功績かもしれませんね。

踊りやゴージャスなファッション、ワクワクするストーリー展開、そして泉のように尽きないレハールの珠玉の音楽……。見せ場が多く、エンタメの魅力としても申し分ないこの作品。

ミュージカルの原型を築きあげるばかりだけでなく、作品そのものが上質な第一級ミュージカルと表現しても何ら問題ないでしょう!

聴きどころ

序曲

舞台はパリにあるポンデヴェドロ(モンテネグロ公国がモデル)公使館。広間ではポンデヴェドロ国王の誕生祝賀パーティーが開かれている。

第1幕:さあ、おいでなさい。誰もいないわよ!(ヴァレンシエンヌ、カミーユ)

男爵の心配などどこ吹く風で、妻のヴァランシエンヌはダンディなパリジャン、カミーユと火遊びの真っ最中。

人目を忍ぶ二人のランデブーで彼女は、口では「私は貞淑な人妻」と言いつつカミーユから口説かれるとすっかりその気に…。

第1幕:おお祖国よ(ダニロ)

第1幕:最後の1人が去り、あなたは自由(ダニロ、ハンナ)

ハンナは踊りの相手にダニロを指名するが、ダニロはその権利を1万フランで売ると宣言する。「とてもそんな大金は出せない」と、男たちは意気消沈して引き揚げる。

二人きりになると、嫌がるハンナを相手にダニロは「メリー・ウィドウ・ワルツ」の曲に乗せて踊り始める。口では逆らってもからだはダニロのエスコートを受け容れるハンナ、静かに幕は閉じる。

第2幕序奏: どうか今ここにいてほしい(ハンナ、コーラス)

舞台は変わって宴の翌日、ハンナ・グラヴァリ邸の庭。

第2幕:しかし今、我が家のように・ヴィリャの歌(ハンナ、合唱)

ポンテヴェドロ風の祝宴が開始され、彼女はここに故郷の風景を再現すると言いながら情緒豊かで心に染み入る「ヴィリアの歌」を歌いだす。

第2幕:ダンスシーン(ハンナ、ダニーロ)

邸宅に一人残ったダニロにハンナが近づいて気持ちを向かせようとするが、ダニロはなかなか乗ってこない。ワルツが時の流れを埋めるように美しく流れる。

第2幕: バラのつぼみのように (カミーユ、ヴァランシエンヌ)

ヴァランシェンヌはカミーユと別れるため、庭の東屋に二人で入っていく。甘く切ないメロディーが印象的。

第3幕: そう、私たちグリゼットよ(ヴァレンシエンヌ、ダニーロ、ゼタ、グリゼット)

ハンナは、ダニロをおびき寄せるために邸宅をマキシム風にしつらえ、マキシムの楽団や踊り子たちを招いてパーティを開く。

ヴァランシェンヌをはじめとする女性陣が踊りと歌を披露する。フレンチ・カンカンの陽気な踊りとメロディにノックアウト寸前!

第3幕 二重唱:唇は静かに(ハンナ、ダニロ)

ダニロはもう意地を張るのをやめ、ハンナの手を取ってワルツを踊り、「唇は黙っていてもヴァイオリンは囁く」(第8曲)とこのオペレッタの主題ともいえる「メリー・ウィドウ・ワルツ」に乗って愛のニ重唱を歌い上げます。

オススメ演奏

ロブロ・フォン・マタチッチ指揮フィルハーモニア管弦楽団&合唱団、シュワルツコップ(S)、ゲッダ(T)

指揮のマタチッチは、ブルックナー交響曲の名演奏で有名な人で、かつてNHK交響楽団の音楽監督としても団員の信頼を集めてきた人でした。

オペラも得意にしていて、ウェーバーの「魔弾の射手」や、ムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」などは圧倒的な名演として記憶に留めている人も多いのではないでしょうか。

この録音もマタチッチ絶好調時の演奏といえるかもしれませんね。1962年の録音ですが、音質も良く必聴の名盤です。

他のあらゆる演奏を大きく引き離していると言っても過言ではないでしょう。序曲からダイナミズム満点、生気にあふれた演奏はグイグイ心をひきつけていきます!

雰囲気も満点、楽器の響きの懐かしさや人間味あふれる情緒は本当に見事です。そしてシュワルツコップやゲッダらの歌手陣の歌心にも終始魅了され続けるでしょう!

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この記事を書いた人

1961年8月生まれ。グラフィックデザインを本業としています。
現在の会社は約四半世紀勤めています。ちょうど時はアナログからデジタルへ大転換する時でした。リストラの対象にならなかったのは見様見真似で始めたMacでの作業のおかげかもしれません。
音楽、絵画、観劇が大好きで、最近は歌もの(オペラ、オラトリオ、合唱曲etc)にはまっています!このブログでは、自分が生活の中で感じた率直な気持ちを共有できればと思っております。

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