気品あふれるルーブルの至宝!ラファエロ『美しき女庭師』

『美しき女庭師』ラファエロ(1507年、油彩・122×80cm、ルーブル美術館)

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ルーブルの至宝「美しき女庭師」

多くの入場者で賑わうルーブル美術館(フランス・パリ)

 

美の殿堂と言えば、なんといってもフランス・パリのルーブル美術館!

ここには世界中の有名な絵画や彫刻、美術品など、約38万点が展示されています。

そして名画の多いルーブル美術館の中でも象徴的な作品、いや「目玉の作品」と言えば皆さんは何を思い浮かべますか?

大抵の人が真っ先にあげるのが、レオナルド・ダヴィンチの「モナリザ」や「ミロのヴィーナス」ではないでしょうか…。

『ミロのヴィーナス』を前に撮影する人たち

 

また、ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」やダヴィッドの「皇帝ナポレオン一世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠式」のような大作もなかなか凄い!とおっしゃる方も少なくないでしょう。

しかし小品でありながらも、それに勝るとも劣らない輝きを発している作品があります。それがラファエロの「美しき女庭師」です。

もし、この絵がルーブルからなくなってしまったとしたら、おそらく館内の火が消えてしまうほどの寂しさを味わうことになるかもしれませんね……。

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完璧な調和と美しさ

これはモーツァルトの音楽にも同じようなことが言えます。

仮にモーツァルトの作品が消滅したとすれば、地上から光が失われたかのような喪失感を味わうようになるでしょう…。

彼らの芸術は決して芸術家然とした特異性や凄みがあるわけではなく、革命的な手法を編み出したわけでもありません。

むしろ空気のように人の心に自然に溶け込みながら、得も言えぬ潤いや幸福感を与えてくれるのです。

また、彼らの芸術に共通するのは非常に高い次元で知情意のバランスがとれていることでしょう。

研ぎ澄まされた完璧なまでの美しさや調和を保ちつつ、人々の深い共感を集める高い叡智を忍ばせているのです。

晴朗で純粋無垢な魅力を持ち、周囲を明るく照らす芸術……。芸術の理想形がここにあるといっても決して過言ではありません。

右に出る者がない聖母子画

ラファエロ『大公の聖母』(1505年-1506年頃、油彩、パラティーナ美術館)

 

ラファエロ『燭台のマドンナ』(1513年頃、油彩/ウォルターズ美術館)

 

長い西洋絵画史を見渡しても、聖母子を描いてラファエロの右に出る人はまずいません。

聖母子の絵というと、どうしても禁欲的で画一的な絵柄になってしまう印象が拭えないのですが、ラファエロの聖母子の絵はちょっと違います。

この「美しき女庭師」に描かれている愛情と気品にあふれた描写は、画家の繊細で深い洞察力が生きた最高の賜物と言えるでしょう!

左側のキリストの愛らしくて輝きに満ちた表情!右側のヨセフも純粋無垢な子どもらしい仕草を見せています……。

またそれを見つめる母親の愛情豊かで思慮深い表情…。じっと見ているとその美しさと微笑ましさに何とも愛おしくなってきます。

しかし、母親の瞼の奥には来るべきキリストの運命を憂いているようにも感じられ、その象徴的な表現力の深さに驚かされます。

絶対的安定の構図

安定感抜群の三角形構図

 

この絵も構図が素晴らしいですね!

まずは三角形を中央に配置した典型的な安定感のある構図が目につきます。これは師と仰ぐレオナルドの影響が大きいと言われています。しかも決して単調にはなっていません。

それはキリストに注がれる聖母マリアとヨセフの視線の動きに絶妙な共鳴感がありますし、三人のポーズがしなやかな身体の動きによって効果的なアクセントを生んでいるからなのです。
 
愛と美の調和を実現し、しっかりと地に根ざした強さや包容力も備えた名画としてラファエロの「美しき女庭師」は今後も多くの人を魅了することでしょう。

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この記事を書いた人

1961年8月生まれ。グラフィックデザインを本業としています。
現在の会社は約四半世紀勤めています。ちょうど時はアナログからデジタルへ大転換する時でした。リストラの対象にならなかったのは見様見真似で始めたMacでの作業のおかげかもしれません。
音楽、絵画、観劇が大好きで、最近は歌もの(オペラ、オラトリオ、合唱曲etc)にはまっています!このブログでは、自分が生活の中で感じた率直な気持ちを共有できればと思っております。

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