音楽詩人・グリーグ
ピアノリサイタルでもよくとりあげられるグリーグの抒情小曲集は、全部で10集(1集が6曲から8曲で成り、全66曲)で構成されたピアノ曲集です。
作曲年代は、何と1867年から1903年の約35年ほどの長きに渡って作曲されました。
いわばグリーグのライフワークと言っても過言ではない、想い入れの強い作品集と言えるでしょう。
それぞれの曲は独立したピアノ曲としても充分に聴きごたえがありますし、それぞれに味わい深い作品として結実しているのです。
まるで目に見える北欧の自然のように情景が浮かんでくる作品もあれば、忘れかけていた思い出を甦らせてくれたり、神秘的で夢のようなひとときを彷彿とさせる作品もあるのです。
詩的な情感に満ち満ちているのも大きな魅力の一つでしょう。
聴きどころ
抒情小曲集はそれぞれが2分から5分程度の短いピアノ曲から成る作品集です。
これはグリーグがその時々の想いや印象を日記のように綴った珠玉の作品集なのです。作品はロマン的な情感が息づき、短いながらもそれぞれに様々な性格が施されていて、珠玉のような輝きを放っています。
アリエッタ
牧歌的で優しい主題でありながら、過去への扉が開かれる瞬間も垣間見れる魅力的な作品。
夜警の歌
印象的な分散和音の主題と、気品に満ちた美しさが心を引く。
故郷にて
ひんやりした冷たい空気の中に、慕わしい故郷への想いが伝わってくる。
メロディ
ノルウェーの厳しい寒さや冷たい風が肌に伝わってくるような主題。そしてそれは心に忍び寄る深い哀しみなのかもしれない……。
切々と訴えかける伴奏をきざみつつ、憂いにみちた旋律が歌われる。
ノルウェーの農民の行進曲
終始ご機嫌に、時には茶目っ気たっぷりに進行する行進曲風のソナタ。思わず身体が動き出しそうな楽しい曲。
過ぎ去った日々
どうすることもできない深い哀しみや嘆きが交錯する作品。展開部では悲劇的な主題が様々な形に変化して美しく彩りを添える。
郷愁
少々物悲しく、物想いにふけるような主題が印象的。透明感漂う伴奏が奏されると、心に鬱積したものが涙となってあふれてくるよう……。
感謝
音階を美しく上下する主題は、雨上がりの空に虹が架かるよう……。
ゆりかごの歌
ゆりかごに揺られる子を、優しく見つめる愛の眼差しが伝わってくるような魅力あふれる作品。中間部の時間が止まったかのようなまどろみも忘れられない……。
昔々
物語のような余韻を感じさせる作品。
オススメ演奏
エヴァ・ポブウォツカ(P)
抒情小曲集はグリーグが日記のように、その時の心境を豊かに綴った作品です。そのため造型を変にデフォルメするよりは、オリジナルの良さをできるだけ生かし、情感豊かに表現してくれるピアニストこそ、この作品集にふさわしいと言えるでしょう!
その条件をあらゆる面で満たす素晴らしい演奏がエヴァ・ポヴウォツカによる録音です。まるで自作自演のように、音楽は滑らかで情感豊か!
洗練され、磨き抜かれた音の透明感はグリーグの多種多様な心境を見事に表現し尽くしています。
しかも表現の幅が非常に広く、あらゆる曲から豊かな詩情を描き出しているのです!
自分探しのペールが行きついた先は…… Edvard Grieg 1843- 1907 Henrik Ibsen 1828- 1906 &nb[…]