テーマが明確! 動きや構図、色彩に特化した絵画 マティス「ダンス」

マティス「ダンス」1910年、エルミタージュ美術館

 

絵画の概念を根底から覆す

マティスの部屋・エルミタージュ美術館

小学生の頃だったでしょうか……。この絵を初めて見たときは本当にビックリしたものでした。
「こんなにアッサリ、すっきり絵をまとめちゃっていいんだろうか」と。
その後、「絵の本当の良さ、価値って一体何なんだろう……」としばらく悩んだものです。
思えば20世紀絵画は大革命と言っていいような変化と激動の時代でした!
人間のあらゆる表情・性格を同じ平面上に表したピカソ。限られた線や色彩、面で気分をイメージ的に表現したモンドリアン。
ピカソ『泣く女』油彩、60×49㎝、1937年
(テート・モダン、ロンドン)

 

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モンドリアン「赤。青、黃のコンポジション」
(油彩、1930年、チューリッヒ美術館)
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絵に対する認識や価値観が多様化し、一気に抽象絵画へと加速していった時代でもありました。
これらの画家たちに共通するのは見たものをあるがままに描くのではなく、立体構造や奥行き、陰影、質感といったものを犠牲にしてでも、自分が本当に描きたいものだけに特化した抽象表現を貫いたのです。
『ダンス』を見ていただければ、お分かりのように、背景を想わせる面や事物は一切存在しません。
代わりに濃いブルーとグリーンの色面を分割しているだけです。またこの絵の唯一のモチーフでもあるダンスをする裸婦たちの顔の表情や服装、背丈の違い、陰影などはことごとく単純化されているのです。
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名画を大胆にデフォルメ

この絵には元絵があります。それは18世紀イギリスの巨匠、ウイリアム・ブレイクが描いた「オベロン、ティターニアとパックと踊る妖精たち」です。

ウイリアム・ブレイク「オベロン、ティターニアとパックと踊る妖精たち」1786年
Oberon, Titania and Puck with Fairies Dancing circa 1786 William Blake


もちろん模倣ではなく、ブレイクの絵に着想やヒントを得たというのが適切でしょう。ブレイクの絵は円を描くように妖精たちが身体を動かしている姿がしなやかで優雅な雰囲気を伝えています。

しかし、マティスの「ダンス」はしなやかさというより、人間が持つ自由奔放で根源的なエネルギーの表出が勝っているといえるでしょう。絵画というよりはデザイン的な要素の強い作品に仕上げているのです。

そしてマティス自身が話をしているように、ダンスを見たり、踊ったときの我を忘れるような爽快感、言葉では表わせない至福の瞬間を描きたかったのでした!

見せたい要素の強調、曖昧さの排除

『ダンス』は、徹底的に絵の要素から余分な情報を排除して、本当に伝えたい要素だけを抽出しているのです。
つまり、絵として成立するための必要最低限の核心要素だけを的確に表現した絵と言っていいでしょう! まさに絵の表現の原点をみるような気がします。
裸婦たちが手をつないで連なる形は、どことなく唐草模様を彷彿とさせ、装飾的な効果も生み出しています。
また手つなぎの形がハート型に連続しているように見えるのも当時の世相を反映しているのかもしれません。マティスも人知れず平和を願っていたということなのでしょうか…。
そして忘れてはならないのが、画面全体にみなぎる動的なリズムと強烈な色彩のエネルギーでしょう。
私たちはこの絵から単純な線と形、色面がもたらす絶大な効果を実感せざるを得なくなるのです。
生々しい人間感情にあえて触れないで、線と構図、色彩が繰り広げる自由奔放な感覚を絵に注入出来たのは、やはりマティスという鋭敏な感性の持ち主だったからなのでしょう。

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