奇抜な造形と強烈なメッセージ!ピカソ絵画の真骨頂! ピカソ『泣く女』

『泣く女』油彩、60×49㎝、1937年、テート・モダン(ロンドン)

20世紀を象徴する天才画家

 

ピカソは20世紀最大の天才画家であり奇才でした。

ピカソというと、誰もが「現代絵画の神様」のような例えをするのは何故なのでしょうか?

「描くこと」ばかりでなく、単純化すること、別の角度でモノを見ること、形を組み変えること、分解して組み立てること……。とにかく常識を常識としてはとらえず、「旺盛な好奇心」や、「再創造して手を加えること」でありとあらゆる美の可能性を追求し実現した画家だったのでした。また新しいスタイル、モノを作り出すことでは彼は天才的な能力を発揮し続けたのでした。

もちろん様々なエピソードも挙げればキリがなく、ピカソの作品や生き様を見ると混乱と不安に揺れた20世紀をそのまま体現した画家であることを痛感したものです。

 

生涯10万点以上の油彩や版画、挿絵をモノに出来たのも、持って生まれた天性の絵心と驚くべき創作力の現れといっても過言ではありません。

一般的に画家がスランプに陥ると、悩んだり、葛藤したりして、容易に描けなくなってしまうものです。しかしピカソの場合はそれをエネルギーに変えて、次々にまったく違った画法を編み出していったのも事実なのです。

何事もなかったかのように、要領よく立ち居振る舞い、巧みに画風を変えながら、まるでカメレオンのように美術界に君臨したのでした。

自分を演出するのも表現のうち

Pablo Picasso 1881-1973

 

しかもピカソは芸術家としては珍しく、マネジメント能力にも長けていて、自分の絵画を販売路線に乗せるノウハウだけでなく、画商との交渉術でも抜群の才能を発揮したようです。

1956年にフランス・サスペンス映画の巨匠、アンリ・ジョルジュ・クルーゾーに「ミステリアス・ピカソ 天才の秘密」の撮影を許可したのもピカソ一流のマネジメントの一環だったのかもしれません……。

アーティストとしての「ピカソ」を演出する絶好のチャンスと捉えていたのかもしれませんし、自分を深く認識してもらう意味合いや宣伝効果を引き出したい想いが多分にあったのかもしれませんね。

 

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映画はピカソがひたすら「描く」という至極単純なテーマを扱った映画でしたが、どこまでがアドリブなのかわからない緊張感漂うドキュメンタリータッチの本作はカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞したのでした。

ピカソの創作行為そのものがミステリアスであるということから大いに世の関心を集め、映画は大成功を収め、改めてピカソの天才性を世間にアピールすることとなったのです。 

「泣く」という行為を分解する!?

『泣く女』は20世紀最大の傑作とか、問題作とも言われ物議を醸した有名な『ゲルニカ』の後に描かれた作品でした。

モデルはピカソの愛人でもあったドラ・マールという写真家です。

ピカソは女性の「泣く」という行為によほど惹かれたのか、または創作の強烈なヒントとなったのか、その後も『泣く女』を何度も描き上げています。中でもロンドン・テートギャラリーに飾られているこの絵は傑作として有名です。

お気づきかもしれませんが、女性の表情が一つの方向からではなく、左右両方の表情が同じ平面上に表現されていますね。

その表情は動き続ける映像的効果も醸し出していて、ただならぬ存在感と迫力で見るものを圧倒します。

鋭角的な線と色彩を形どる黒い輪郭線は、女性がハンカチを噛んで口惜しがる様子なのでしょうか……。強烈なインパクトと視覚的効果で表現しているのです。

 

また普通の感覚だと辻褄が合わず支離滅裂に見えるこの絵を、ピカソは彼一流の造形感覚で、崩れた絵から意味のある絵へと再構成し引き上げているのです。

既成概念に囚われない単純な線や色彩、構図でまとめ、なおかつピカソの強烈な個性で味付けした『泣く女』は他愛のないテーマからでも、充分に絵が成立できることを証明してみせたのです。

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