気持ちが離れると壊れやすい
皆さん、こんな経験されたことないでしょうか?
長年愛用した腕時計が古くなったので、新しい腕時計を購入したとします。
それからは新しい腕時計を毎日のように身につけ、古い腕時計は存在さえ忘れまったく目に入らなくなりました。
すると、それまで故障なく動き続けてきた古い腕時計が突然止まってしまい、二度と動かなくなってしまったのです。
これと似たような経験をされた方は意外と多いかもしれませんね。
不思議なもので、物から人の心が離れると、物は壊れてしまいます。
持ち物は使い込むほどに味わいが出るし、使いやすくなったりするものです。
愛用すればするほど、自分の身体の一部となって離れがたい関係になっている場合も少なくないでしょう……。
持ち物は一見すればただのモノですが、持ち主の息づかいや想いが深く投影されている場合が多いのです。
ですから、それまでの親密な接触がなくなり、忘れ去られると極端に言えば「魂の抜け殻」状態になってしまうのです。
大切に扱うメリット
なぜ持ち物は大切に扱わなければならないのでしょうか?
もちろん長く使用するためという理由はあるでしょう。
それ以上に物の扱い方にこそ、持ち主の性格や人間性、人格…まですべて現れるからなのです。
間違っても物に怒りをぶつけてはいけませんし、ストレスのはけ口にしてはなりません。
そんなことをしたら自分で自分の首を絞めるのと一緒です。
物を粗雑に扱う人は、とかく人との接し方も粗雑で乱暴、表面的な関係になりがちです。
けれども物を大切に扱うようになれば、人との接し方にも大きな変化が現れます。
場当たり的なつきあいではなく、もっと相手の立場を尊重し、気持ちを理解しようと考えるようになるのです。
そして身体にもメンテナンスが必要なように、持ち物にも当然メンテナンスが必要ですね。
カメラであればこまめにレンズを磨くとか、自転車であれば錆止めを差したり、掃除をしてあげるとか、細かなところに気配りすることが円滑で最高のパフォーマンスを生み出す源泉になるのです。
愛用するモノならば、時々「いつも自分のために動いてくれてありがとう!」という感謝の気持ちを添えてあげるといいかもしれません。
心あるところに豊かさが生まれる
最初に「心が離れると物は壊れる」と言いました。
心がないところからは何も生み出されません。結局は生命が枯れて次第に風化していくようになるのです。
逆に物と気持ちがつながっていさえすれば、何倍にも本来の価値や機能を発揮し、私たちの暮らしを豊かにするお手伝いをしてくれます。
とかく「パソコンの起動が遅い」「使いにくい」「パワーがない」とか、「大事なときに動かない」のように物に対する不満は募りやすいものです……。
しかしパソコンの作業や自動車の運転をする場合も、カメラの撮影をする場合も、物に対して決して不満を漏らしてはいけません。
さまざまな欠点があっても、物をうまく使いこなすことで思いがけない結果が生まれるものですし、時には欠点をカバーするような驚くような効果が得られる場合もあるのです。
物には意志があります。
動物や植物のように生命を宿した存在はもちろんですが、どんな物にも何らかの意志や目的があります。
私たちが穏やかな気持ちで真摯に物事に取り組むならば、機材や物もそれに順応し、自然と一つの目的に向かうお膳立てをしてくれるようになるでしょう。
必要のない物は買わない
お子さん、お孫さんのいない老夫婦が、ワンちゃんを飼ってるのをよく見かけます。
そのお気持ちはよくわかります……。きっとご自分の寂しさを少しでも紛らわせたかったり、日常に潤いを持たせたいと思ってらっしゃるのでしょう。
実際、我が子を愛するように可愛いがってる光景をよく拝見しますし、犬も愛情をいっぱい注がれたいい目をしてますよね。
しかし興味本位でペットを飼おうとすると長続きしません。
愛情や気持ちが伴わないと、途中で「面倒くさい」とか「邪魔になってしまった」という状況になってしまいがちだからです。
そうなると途中で飼育を放棄して、「置き去り」という悲惨な末路を辿りかねません。
物も同じですね。
「どうしても欲しい」とか、「使いこなして生活に役立てたい」のように、ハッキリした気持ちや目的がある時以外は、コレクターでもない限りできるだけ購入は見合わせるべきでしょう。
それは自分にとっても、物にとっても幸福な関係を維持するために必要なルールなのです。
勢いこんで買ってはみたものの、結局は使わずじまいで埃をかぶったままになってしまっているという状況をよく見かけます。
それは自分にとっても、物にとっても望ましい事ではありません。
購入したけど使われないのはちょっと悲しいことです。放置されたままになってしまうと、知らず知らずに気持ちやエネルギーが分散される原因にもなってしまいます。
思い出の詰まった物の処分
私たちは物を通してうれしいこと、楽しいことや悲しいこと、辛かったことを思い出したりします。
「このシャツを着ているときは辛かったなあ」とか、「ローリーポーリーの音を聴くと娘が小さかった頃のことを想い出す」とか……。
そうなのです! 物はただの物ではありせん。私たちの心をその時の出来事や思い出に一瞬にして誘う大切な「生きた証」なのです。
ですから思い出の詰まった物であればあるほど処分するのは大変ですよね……。
しかし、気持ちを前向きにしていきたい時や新たな出発をしたい時は、以前使っていて気持ちが沈んでしまったものはできるだけ処分するようにしたほうがいいでしょう。
処分する時は無慈悲にポイと投げ捨てるのはよくありません。
一つの時代を共有した持ち物だっということを心に留めながら、ねぎらうように処分すべきです。
口に出す必要こそありませんが、必ず「ありがとう、長い間ご苦労様!」と言いましょう。そうすれば自分の気持ちの整理がつくし、物に対するひとつのけじめにもなるでしょう。
また撮影して画像として保存し、一言コメントを書き添えておくのもいいかもしれません。
気持ちを高める物
たとえばブティックで自分好みのワンピースに出会ったとしましょう……。「これだ!」と思わず叫んでしまうような体験をしたことはありませんでしょうか。
まさに自分が夢に思い描いたイメージをそのまま形にしたような出会い……。
それはあなたにとってベストマッチというべき品物かもしれませんね。
そしてそれを実際に身につける時の喜びや胸の高鳴りは、言葉では言い表せないものでしょう。
時として、物は私たちの気持ちに寄り添い、気持ちを高める役割を果たしてくれます。
それが私たちに与える精神的な効果ははかりしれません。特に自分の気持ちを押し上げてくれる物というのは、間違いなく今の自分の感性や気持ちにピタリと合っている証拠です。
物と侮るなかれ! 私たちが思う以上に生活の中で及ぼす影響は大きいのです。