ジョン・ウィリアムスは今年(2023年)で91歳を迎えたアメリカの映画音楽作曲家で、今なお世界をリードする巨匠ですね。
現在も「スターウォーズ」をはじめとする自作のスタンダードナンバーを世界各地で指揮するなど精力的に活動しています。しかも凛とした指揮姿、バイタリティはいささかも衰えを見せていません。
今回はそのエネルギッシュなウィリアムズの創作力と映画界に与えた影響について迫ってみたいと思います。
ジョン・ウィリアムスという人
John Williams(1932〜)
1932年、ニューヨーク・ロングアイランド生まれ。指揮者、ピアニストとして有名ですが、何よりも「スターウォーズ」「E.T.」などの音楽で知らない人はいないのでは…と思えるほど有名な映画音楽作曲家ですね。
ジュリアード音楽院とイーストマン音楽院で学んだ後にロサンゼルスに移住します。
映画スタジオでピアニストとして活動していた際に、オーケストラの編曲の仕事が舞い込こんだことがきっかけで映画音楽作曲に本格的に足を踏み入れようになったのでした。
1970年代以降はジョージ・ルーカスやスピルバーグらと組んで、映画「ジョーズ」「スターウォーズ」「スーパーマン」「E.T.」「シンドラーのリスト」など、話題作の音楽を次々と担当します。
その後の活躍は誰もが知るところでしょう。一躍ハリウッドで映画音楽の巨匠として不動の名声を確立したのでした。
記憶に残る作品
ウィリアムズは約半世紀に渡り、映画音楽作曲家の巨匠としてスピルバーグ監督を筆頭に話題作、ヒット作の音楽を提供し続けています。
内容もさることながら、それだけ彼の音楽が全米で(いや全米だけではない…)愛されている証拠ですよね。
明るく明瞭、誰にでも分かりやすくて、勇気と希望を与えてくれる音楽の数々。しかも人柄もフレンドリーで屈託がない……。
多くの作品がアカデミー賞やグラミー賞を受賞した秀作揃いというのもうなずけます。グラミー賞25回、アカデミー賞5回、英国アカデミー映画賞7回、ゴールデングローブ賞4回を受賞。
もちろんここに挙げた作品だけが傑作というわけではなく、あげきれなかったからとりあえずこの程度でお許しくださいという感じです。
ジョーズ(1975)
●監督/スティーブン・スピルバーグ
●脚本/ピーター・ベンチリー
●製作/リチャード・D・ザナック/デイビッド・ブラウン
●出演/ロイ・シャイダー/ロバート・ショウ
●音楽/ジョン・ウィリアムズ
●撮影/ビル・バトラー
ジョン・ウィリアムズの名前を強烈に印象づけた作品。特に印象的なのが冒頭の2音で構成されるサメが姿を現す部分。
ウィリアムズはサメの恐怖を重低音のシンプルなメロディとリズムの分散和音で表現して、作品全体のイメージを決定づけた。
スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望(1977)
●監督/ジョージ・ルーカス
●脚本/ジョージ・ルーカス
●製作/リチャード・D・ザナック/デイビッド・ブラウン
●出演/マーク・ハミル/ハリソン・フォード/キャリー・フィッシャー
●音楽/ジョン・ウィリアムズ
●撮影/ギルバート・テイラー
まるでイギリスの作曲家ホルストの「惑星」組曲を彷彿とさせる宇宙のロマンと神秘が眼前に広がる! 映画音楽の名曲中の名曲!
一度聴いたら忘れられない「メインタイトル」の壮麗で雄大なテーマはもちろん、「ジェダイのテーマ」や「王座の間とエンドタイトル」の夢とロマンを伝えてやまない音楽もワクワクがとまらない。
スーパーマン(1978)
●監督/リチャード・ドナー
●脚本/マリオ・プーゾ/デイビッド・ニューマン/レスリー・ニューマン/ロバート・ベントン
●製作/ピエール・スペングラー
●出演/クリストファー・リーブ/マーゴット・ギター/マーロン・ブランド
●音楽/ジョン・ウィリアムズ
●撮影/ジェフリー・アンスワース
テーマ音楽が聴こえただけで胸がワクワク。
ヒーローものにありがちな軽めの曲想がいっさいない。シンフォニックでキビキビしたリズムのテーマ音楽が一瞬にしてスーパーマンの魅力に引き込んでいく。分かりやすくて人の心をがっちりつかんだテーマ音楽。こんなテーマ音楽、どこにでもありそうでない!
レイダース/失われたアーク《聖櫃》(1981)
●監督/スティーブン・スピルバーグ
●脚本/ローレンス・カスダン
●製作/フランク・マーシャル
●出演/ハリソン・フォード/カレン・アレン
●音楽/ジョン・ウィリアムズ
●撮影/ダグラス・スローカム
モーセの十戒の破片を納めたアーク(聖櫃)。そには神秘的な力が秘められていると伝えられていた。アメリカの考古学者インディ・ジョーンズはそれをめぐる冒険を命からがら繰り広げる。
主役ハリソン・フォードの魅力が全開の作品。
軽快なテンポとリズムで突き進むウィリアムズのテーマ音楽がストーリーの展開を大いに盛り上げていく!
E.T.(1982)
●監督/スティーブン・スピルバーグ
●脚本/メリッサ・マシスン
●製作/スティーヴン・スピルバーグ/キャスリーン・ケネディ
●出演/ヘンリー・トーマス/ドリュー・バリモア/パット・ウェルシュ
●音楽/ジョン・ウィリアムズ
●撮影/アレン・ダヴィオー
映画もさることながら、テーマ音楽も突き抜けた魅力でいっぱい! ファンタジックで魔法のような自由奔放さと面白さにあふれたメロディが全編を駆けめぐる!
夢と希望に満ちあふれたSFロマンを彩るお茶目な音楽が心に残る。
ジュラシック・パーク(1993)
ジュラシックパークのテーマ
●監督/スティーブン・スピルバーグ
●脚本/マイケル・クライトン/デヴィッド・コープ
●製作/キャスリーン・ケネディ/ジェラルド・R・モーレン
●出演/サム・ニール/ローラ・ダーン
●音楽/ジョン・ウィリアムズ
●撮影/ディーン・カンディ
太古の世界に想いを馳せながら、DNAから遺伝子工学によって蘇った恐竜たちが生息する究極のアミューズメント・パークがあった。
恐竜ワールドに飲み込まれていく人類の皮肉と恐怖を、めくるめくスピーディーな映像で見る者を興奮のるつぼに連れ去る。
ウィリアムズはリアリスティックな要素だけでなく、ファンタジックな視点を注ぎ込みつつ壮大で奥深い太古のロマンを想起させる音楽を描いて秀逸だった。
シンドラーのリスト(1993)
●監督/スティーブン・スピルバーグ
●脚本/スティーヴン・ザイリアン
●製作/キャスリーン・ケネディ/スティーヴン・スピルバーグ/ジェラルド・モーレン/ブランコ・ラスティグ
●出演/リーアム・ニーソン/ベン・キングズレー/レイフ・ファインズ
●音楽/ジョン・ウィリアムズ
●撮影/ヤヌス・カミンスキー
ナチスのユダヤ人捕虜収容所の悲劇とそれを救出しようとするシンドラーのストーリー。おそらく映画史に残り、今後も語り継がれるであろう衝撃と感動の名作。
ウィリアムズの音楽もいつものスタイルとはまったく違う鎮魂や哀惜の想いで一貫していて、彼のキャパシティの広さを実感する。
特にテーマ音楽のヴァイオリンの響きは深い哀しみの中にも優しさを漂わせていて、一度聴いたら忘れられない心に染みる傑作。
プライベート・ライアン(1998)
●監督/スティーブン・スピルバーグ
●脚本/ロバート・ロダット
●製作/イアン・ブライス/マーク・ゴードン/ゲイリー・レヴィンソン/スティーヴン・スピルバーグ
●出演/トム・ハンクス/マット・デイモン
●音楽/ジョン・ウィリアムズ
●撮影/ヤヌス・カミンスキーー
スピルバーグ監督が、第2次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦を題材に、極限状態に置かれた兵士たちの絆と生きざまを描いた戦争ドラマ。
凄惨な戦場を徹底したリアリズムで描き、1999年・第71回アカデミー賞で監督賞、撮影賞など5部門を受賞した。
ウィリアムズの音楽は葛藤する人物たちの心に寄り添うような音楽を書き上げた。
映画音楽家の鏡として
ウィリアムズの作品はここに記載したもの以外にも傑作、話題作が多く、そのどれもこれも良質なことに驚いてしまいます!
本来であれば、ここに大地震(1974)、ポセイドンアドベンチャー(1972)、未知との遭遇(1977)、ホーム・アローン(1990)ハリー・ポッターと賢者の石(2001)などの作品も挙げるべきだったのでしょうが、泣く泣くカットしてしまいました。
それだけウィリアムズにとって音楽はかけがえのないライフワークのようなものなのでしょう! これからも多くの人々にとってウィリアムズの音楽は希望の灯であり続けるのかもしれませんね……。