愛らしいメロディに心が満たされる!
レハールが作曲した「金と銀」。皆さんはこのワルツ、どこかで聴いたことないでしょうか?
かつては小学校の音楽の教科書に鑑賞曲として紹介されていた時代が確かにありました。多くの人たちにとって親しみやすく、事実愛された曲だったのです。
この曲を聴くと、今でも古き良き時代の懐かしい情緒が甦ってくるようですね。屈託のない愛らしいメロディが最高で、次々と展開される美しいワルツの調べに胸がいっぱいになります……。
文字どおりキラキラと輝くような旋律やエレガントな気品が魅力のワルツですが、もちろんそれだけではありません。大らかで情感あふれる曲調や御伽の国に遊ぶような非日常的な雰囲気が夢のようなひとときを届けてくれるのです。
童心に帰る夢のひととき
何といってもオペレッタやミュージカルの開始のように颯爽とした装飾音の提示で序奏が開始されるのが印象的ですね!
ハープのカデンツァ、ピッコロの経過句と続き、可憐な第2ワルツの後半の主題が出てくると……そこはもう夢の調べでいっぱい!
その後の第1ワルツ、第2ワルツ、第3ワルツと続くあふれるようなメロディと見事な転調に胸はワクワクしますし、一気に心が童心に戻っていくようです。
レハールは楽器の選択や扱い方に精通していたのでしょう。グロッケンシュピール(鉄琴の一種)やタムタム(打楽器)、ハープ、木管楽器、それぞれが適材適所に置かれていて生き生きとした表情で微笑んでるではありませんか。
特に印象的なのが、哀愁に彩られた第2ワルツとそれを受ける後半の愛らしいワルツの対比です。本当に見事としか言いようがありません!
ウィンナ・ワルツに一石を投じる
「金と銀」のそもそもの作曲経緯は1902年1月、オーストリアのパウリーネ・フォン・メッテルニヒ王女の舞踏会「金と銀の舞踏会」のために作曲されたことでした。
リサイタル用ワルツとして作曲されたのですが、当時は通俗曲としかみなされず、そこそこの喝采を浴びただけで終わったそうですね。
全精力を傾けて作曲したにもかかわらず、何の反応もなく失望したレハールはウィーンの名もない楽譜商にわずかな金額で著作権を譲ったそうです。価値や魅力がわからない楽譜商は、すぐさまロンドンのボズワース商会に権利を売却したのでした。
けれども常識的なウィンナ・ワルツのリズムにとらわれることなく、豊潤なメロディーとハーモニーで作曲された「金と銀」は、後年改めて光があてられることになったのです。