穏やかで美しい自然の情景 コンスタブル「フラットフォードの製粉場」(1816-17)

 

「フラットフォードの製粉場」ジョン・コンスタブル、1816-17年、油彩。ロンドン・テートギャラリー
Flatford Mill by John /John Constable, 1816-17 /Oil painting /Courtesy of Tate Gallery, London, UK

オリジナリティが出にくい風景画

自然をテーマに描く画家はたくさんいます。

でも風景画はジャンルとしては比較的とっつきやすい反面、独自性やオリジナリティが出しにくいカテゴリーでもあります。

つまり、同じ風景を描けば、同じテイストの絵になる可能性が充分あるということですね。

それを避けるためには、セザンヌやブラマンク、ユトリロのように独自的な画法を編み出したり、こだわりを持つしかありません。

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しかし、そういう特徴的な絵を描くには、描く意味や必然性がなければ無意味になってしまうでしょう。

 

穏やかで品格がある絵

個性やオリジナリティは創造性や感性を強く刺激しますが、時に落ち着いた気持ちで見られないデメリットも確かにありますね……。

ではコンスタブルの絵はどうなのでしょうか?

彼の絵は故郷イングランドのサフォーク州の風景を丹念に描いたアカデミックな美しい絵です。

しかし、よく見ると雲の動きや移りゆく空の表情が敏感によく捉えられていますし、樹木のざわめきや光や風をそこかしこに感じるのです。

リズミカルなタッチと生き生きとした色彩の織り成す綾は、人々との姿と相まってそこに暮らす人の生活や空気を浮かび上がらせていきます!

また観る者を決して不愉快にしない、品格の高さや感性の細やかさも特筆すべきものです。

当然絵の完成度は高く、私たちをどこまでも豊かにしてくれる気持ちのいい絵ですね。

後世の画家に影響

モルトフォンテーヌの思い出(コロー、1864年)

コンスタブルが描く、瞬間的に風景が醸し出す表情や空気感はフランス・バルビゾン派のコローやクールベなどによってさらに発展することになります。

コローが樹木の表現でよく使う、風になびく枝や葉の牧歌的な情景はコンスタブルの絵にルーツがあるといってもいいでしょう。

ロマン派の巨匠ドラクロワも、コンスタブルの生き生きとした表現に痛く感動し、わざわざコンスタブルに会うために出向いたほどです。

端正でアカデミックな絵に見えますが、実は多くの人を虜にする様々な魅力に満ちた絵を描いた人だったのでした。

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