形と色の可能性をあらゆる角度から徹底的に追求! マティス「赤のハーモニー」

アンリ・マティス/赤のハーモニー
(エルミタージュ美術館、1908年)

 

あらゆる要素に意味がある

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1947年頃、フランスのヴァンスにある自宅のベッドで
紙の切り抜きをするアンリ・マティス(1869-1954)
(写真提供:Archive Photos / Getty Images)

 

これはアンリ・マティスの比較的初期の作品ですが、彼の絵画の方向性を決定づけた非常に重要な作品です。

マティスの構図の素晴らしさは相変わらずですね!  テーブルの果物と要所要所に配置された唐草模様は破綻をきたすことなく、無理なく一つの絵画洋式として溶け込んでいることに驚かされます! 

デザイン的なバランスが絶妙な感覚で成り立っています。
また、人物や屋外に見える木々も柔らかなカーブを描き、リズミカルな調和を伴いながら大事な絵の要素として同化していることがわかります。

全体を見渡すと無駄な要素は何も無いくらいに徹底的に形を吟味し、シンプルさを追求していることが伝わってきますね。 

画面の中であらゆる要素が心地よいリズムを生みだし、色彩は絶妙のバランスを保持しながら、鮮やかでエネルギッシュな色彩のハーモニーを醸し出しているのです!

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視覚効果を徹底的に追求

中でもひときわ目を惹くのが、全体の3分の2を占めようかという赤です。違和感ないどころか、少しもわざとらしさを感じませんね……。 

この赤をより魅力的に見せているのは、色彩の強さばかりではなく、同系色のオレンジや青紫系の模様、補色のモスグリーンが織りなすコントラストと絶妙のバランスによる配置が大きくものをいってます。

絵画的なアプローチをデザイン的な手法でクールに仕上げた作品と言えるかもしれません。

そもそも「赤いハーモニー」は、ロシアのコレクターの依頼で制作されたものでした。

最初に描かれたのは赤ではなく緑色の部屋だったようです。しかしコレクターの要望で全体が青色に塗りつぶされたりしたのですが、どうもマティスは配色やバランスが気に入らなかったようですね…。

最終的にはマティス自身が選んだ赤色で塗りつぶすことで、ここに見るようなエネルギッシュで洗練された味わいを醸し出すこととなったのです。

 

 

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