驚くべき造形感覚と色彩のハーモニー マティス「模様のある背景の装飾的人体」


アンリ・マティス「模様のある背景の装飾的人体」 油彩/ポンピドゥーセンター・国立近代美術館

技法の制約を超えた驚きの感性

 

マティスの絵を見るといつも思うのが、遊び心にあふれていながら絵の本質を鋭く突いていることですね。

この絵も抽象的で平面的な背景を背に、半立体的な女性の姿や静物が描かれているのです。

おそらく「うん……? この絵、何か変だぞ!?」と感じてしまう人も少なくないでしょう……。

でもこれがマティスの作戦だし、特徴なんです!
あえて絵の基本技法を破ることで、生き生きとしたリズムや動きを絵に与えていることがお分かりでしょうか。

普通は画家が技法上の冒険を冒すと、とんでもない結末を迎える可能性も充分にあります。しかしマティスの凄いところは卓越した色彩感覚や造形感覚から絵に強烈な説得力を与えているところなのです。

色彩のハーモニーが奏でる音楽的調和

 

マティスが多くの技法上の制約を破っていることは間違いないのですが、色彩や構図の面白さはまったく破綻していません。

構図の面白さと美しい色彩にはため息が出るばかりです!

多種多様な色を使っているのですが、色彩の配色は対比の面白さを生み出したり、色調のバランスがとれていて、しっかり絵に馴染んでいますね。

唐草模様の幾何学的な形や人体の曲線が溶け合って、音楽的な心地よいリズムを生み出していることも注目です。



生活空間に溶け込む画風

 

線のタッチや色彩にも温かさが潜み、心地よい刺激を与えていることも忘れてはなりません。

研ぎ澄まされた感性の持ち主なのですが、それが決して絵に冷たい感覚をもたらしてないのもマティスの絵の魅力の一つでしょう。

ゴッホやブラマンクの絵は確かに素晴らしいです! しかし、家に飾るとしたらどうか……。やっぱり近寄り難くて敬遠するかもしれません。

それに比べると、マティスの絵はすんなりと溶け込みそうな気がしますね…。

 

驚くべき造形感覚と閃き

 

絵のことがよくわからないと、「これなら自分でも描けるんじゃないの」と思う方もいらっしゃるでしょう。

一度この絵を真似して同じように描いてみたらいいかもしれません……。

そうすれば、自分の感性を信じて描いて出来上がったこの作品の尋常でない造形感覚や調和、閃きにきっと驚かれることでしょう!




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