徹底的に楽しく贅沢なミュージカル映画! 「マイ・フェア・レディ」1964年

1960年代ミュージカル映画の傑作

マイ・フェア・レディはミュージカル映画のあらゆる夢と理想を注ぎ込んだ1960年代の傑作です。

原作はバーナード・ショーの「ピグマリオン」で1938年に映画化もされています。

つまりこの映画はリメイク作品で、満を持して公開された映画だったのでした。

My Fair Lady | Official Trailer | Paramount Movies

 

マイ・フェア・レディは1950年代にブロードウェイやロンドンでジュリー・アンドリュースのイライザとレックス・ハリスンのヒギンズ教授で舞台化され大変な話題となりました。

マイ・フェア・レディ/ブロードウェイミュージカル版カタログ

特にジュリー・アンドリュースのイライザは抜群の歌唱力と巧みな演技で観客を魅了したようですね。

舞台で安定した人気が続くと、次第に映画化を望む声が高まってくるようになってきたのです。

当然、映画会社もこのおいしい企画に乗らないわけはなく、あとはどこが映画化するのかということに世の関心が集まっていたのでした……。

色褪せない脚本や音楽

Audrey Hepburn in My Fair Lady / manitou2121

 

このところ、かつてのような見応えのあるミュージカル映画にお目にかかる機会がグンと少なくなってしまいました。

「かつてのような」というのは、あまりにも乱暴な言い方かもしれません。

でも1950年代、60年代のミュージカル映画黄金期に比べるとワクワクするような胸のときめき、キラリと光るオリジナリティ……、決定的な何かが足らないように思えて仕方ありません…。

「踊る大紐育」、「巴里のアメリカ人」、「ウエストサイド物語」、「雨に唄えば」、「南太平洋」、「屋根の上のヴァイオリン弾き」「サウンドオブミュージック」……。

時代背景もあるのでしょうが、今思うと1950、60年代はミュージカル映画の傑作が目白押しでした。

映像、音楽、ストーリーが一体となって、芸術的なニュアンスや強いメッセージを伝えていたことを思い出します。

2000年以降では「レミゼラブル」が話題になりましたが、残念ながらストーリー、エンターテイメント性、キャスティング等々、過去の名作とは比べるべくもありませんでした。

 

成功を宿命づけられた映画

 

さて1964年に公開された「マイフェアレディ」

この映画は当時の制作費としては破格の1700万ドルをかけて撮影されました。

まさに配給会社のワーナー・ブラザースとしては一世一代の大イベントクラスの映画だったのでした。

そのため映画の質や興行収入の面でも成功することを宿命づけられた映画だったのです。

絶対にしくじってはならないという至上命令のもとに、制作スタッフやキャスティングも慎重に人選されたようですね。

制作上のゴタゴタは数限りなくあって、いろんな見かたや評価があるのでしょうが、私にとって大変見ごたえのある楽しい映画でした。

特に映像と音楽が一体となっていて、その芸術的でワクワクさせる演出や無理のない展開は一級品でした。

そして何より夢を与えてくれる映画だったのです……。

お話は粗野で下品な言葉づかいの田舎の花売り娘イライザをロンドン社交界のプリンセスへと変貌させるシンデレラストーリーです。

美しく贅沢な舞台セット、単純明快でキャストの持ち味がじっくり味わえるストーリーと演出。

特にヒギンズ教授(レックス・ハリスン)とイライザ(オードリー・ヘップバーン)のやりとりはコミカルで味わい深く、いつのまにか引き込まれてしまいます!

ケーキのフルコースを味わうような楽しさ

本編はとにかくエレガントで色彩鮮やか、オープニングから有名なナンバーが耳を愉しませてくれます。

すでにこのオープニングからしてオペラのタイトルバックを想わせて感動的! 

劇中でオードリー・ヘップバーンが着る衣装ももちろん素敵です!

そして舞台やミュージカル作品でコラボが多かった作曲のフレデリック・ロウ、作詞のアランジェイ・ラナーの音楽の素晴らしさ!

「素敵じゃない」「スペインの雨」、「踊り明かそう」、「君住む街で」などの輝きに満ちたこれぞミュージカル!と言いたいような名曲のオンパレード!

エレガントで洒落た雰囲気に心酔わされます……。

まるでケーキのフルコースを味わうような楽しさと豪華さなのです……。

そして印象的な名シーンも随所にあり、何度見ても胸がワクワクしてきます。

中でも印象的なのはイライザがなまりを克服した時に喜びを爆発させる「スペインの雨」でのシーンです。

そして、イライザ(ヘプバーン)が社交界デビューのときに、ドレスを着飾って現れた時の息を飲むような凛とした清楚な美しさと言ったら……。

 

映画の終盤でストーリーは大きく展開します。

イライザは根本的な考え方の違いでヒギンズ教授のもとを離れていきます。

教授も「好きなようにすればいい !無礼な奴め!」と強がるばかり……。

でも教授の心の中を行き来するのは空虚感とイライザとの思い出ばかり…。

いかに教授にとって、彼女がなくてはならない人かを痛感させられるシーン……。

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