ミュージカルの王道を往く
ミュージカル映画はストーリーに多少難があったとしても、それをダンスや歌、演出の魅力で補うことが可能なエンタメです。
ストーリーに難があるわけではありませんが、1952年の大ヒットミュージカル映画「雨に唄えば」もストーリーはとても単純明快ですね。
サイレント映画からトーキー映画に移行する時代の俳優、スタッフたちの人間模様をユーモアを交えながら展開していきます!
この映画の最大の魅力は、何といってもテンポのよさ、要所要所に挿入されるダンスシーンの見事さ、振付、演出の素晴らしさと断定できるでしょう! それは小さな欠点をあっさりカバーする最高のエンターテインメントなのです。
特にジーン・ケリーがどしゃぶりの雨の中、歌い踊る「Singin’ in the Rain」は忘れられない名シーンです!
胸がときめき、心が踊り、もはや雨降りなど関係ない、いや大歓迎という勢いで無邪気に歌い踊るこのシーンは見ているほうも楽しくなってきます‥‥。
「雨に歌えば」予告編 New trailer for Singin’ in the Rain – back in cinemas 18 October | BFI
「雨に唄えば」は原作ありきではなく、作詞家のアーサー・フリードと作曲のナシオ・ハーブ・ブラウンのスタンダードナンバーをセレクトしたミュージカルとして企画された音楽ありきの映画でした。
したがって演出とダンス、音楽の冴えは最高で、見るたびに新たな魅力と面白さを発見できるのです。
躍動するエネルギー
見逃せないのがダンスシーンや演出効果の目をみはる素晴らしさです。
たとえばドン(ジーン・ケリー)、コズモ(ドナルド・オコーナー)、キャシー(デビー・レイノルズ)が「Good Morning」で披露するスピーディーで息の合ったタップダンス!
ドンがキャシーを無人の撮影スタジオに呼び寄せ、セットを駆使しながらプロポーズするシーン。演出効果もさることながら、ロマンチックな情感と色彩の美しさが一段と映えます。
後半のブロードウェイメロディの次々と繰り広げられる豪華で息をつかせないシーンの連続も圧巻です!
ブロードウェイの華やかな世界と影の世界、栄光と挫折をシークエンス風に織り交ぜた10分以上にもおよぶ見せ場です!
特に目を惹きつけられるのはジーン・ケリーがシド・チャリシー演じる謎の女性との妖艶で美しいダンスシーンです。
とにかく最初から最後まで贅沢で楽しいエンターテインメントの妙味に惹きつけられ楽しませてくれます。
あらすじ
サイレント映画からトーキーに移り変わろうとしていた頃のハリウッド。
ドン・ロック(ジーン・ケリー)はスタントをこなすなど、長い下積みを経てサイレント映画の頂点に登りつめた大スターだった。
一方ヒロイン役の多いリナ(ヘイゲン)は映画での共演が多い大スター。しかし自惚れが強く、つけ上がった態度のリナにドンはほとほとうんざりしていた。
そんなある夜、ドンはひょんなことから舞台女優で歌も踊りも上手いキャシー(デビー・レイノルズ)に出会う。最初はお互いを誤解していた二人だったがやがて理解しあう中で深く惹かれるようになる。
時はサイレントからトーキーへと移り変わり、ドンとリナの新作が公開された。しかしリナの致命的な悪声のために映画は失笑を買い、散々な結果となってしまう。
そこでドンはコズモ(ロナルド・オコーナー)に話しかけると、リナの声をキャシーに吹き替えることがひらめく。
見どころ
Make Em Laugh
コズモ(ドナルド・オコーナー)が繰り広げる驚異のダンスとエンターテインメント!よくぞここまで!と思うほどのしなやかな身体の動きに啞然とする。
Good Morning
ドン、キャシー、コズモが不評だった映画の解決策にリナの声をキャシーで吹き替えようという名案が浮かんだ。
そのときの喜びと感動を身体全体で表す明るく楽しいナンバー。タップの妙技が冴える!
Sing in the Rain
ドンが鼻歌交じりでイントロを歌い出すあたりから、弾むような心の想いがスーッと伝わってくる。
雨と傘、そして雨中のダンスを巧みに取り入れながら不自然さがなく、観るものをまったく退屈にさせないのはジーン・ケリーだからこそなせる究極の芸なのだろうか……。
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