自然に湧き上がり、心に溶けこむ音楽 モーツァルト ピアノ協奏曲第15番K.450(1784)

モーツァルトを代弁するピアノ

モーツァルトはピアノに大変な愛着を持っていました。

当然ピアノの音色が心にも身体にも深く染み込んでいて、おそらく即興で作曲するときもピアノがモーツァルトの心をストレートに代弁していたのかもしれません。

中期のピアノ協奏曲の第15番K450もそんなモーツァルトの素直な心境があふれる傑作です。

なんと言ってもピアノの音色そのものに、モーツァルトの心の動きが現れているのです。

第一楽章の冒頭から管楽器のおどけたリズムやメロディで始まりますが、既に陽気で明るく、何にもとらわれない寛いだ音楽に魅了されてしまいます。

構えた感じがなく、叫んだり、威圧する感じもまったくない……。あるのは無邪気に笑みを湛えながら渇いた心にスーっと染み込む音楽だけなのです。

自然に湧き上がる音楽

第一楽章の理屈っぽさの微塵もない音楽の展開には、ただただ驚かされます。泉のように自然に湧き上がる音楽の何と素敵なこと……。

第ニ楽章アンダンテは少々愁いを湛えているけれども、柔らかな陽射しを浴びながら綴られる詩的な情感の世界!

まるで時間が止まって、遠くをみつめ、物想いにふけるような安らぎに満ちた時間が滔々と流れていきます。

心のひだに直接触れてくるような至福の時がここにあります。

第三楽章アレグロも第一楽章同様、飾り気がないけれどジワジワと胸に染み込む主題の豊かさと愉しさが格別です。

まるで口笛を吹きながら、気軽に散歩に出かけるような情緒を醸し出しているのですが、音楽はどこまでも笑みを絶やさず上機嫌のうちに幕を閉じるのです。



バーンスタインとバレンボイムの名盤

Photo credit: Royal Opera House Covent Garden on Visual Hunt / CC BY-SA レナード・バーンスタイン

 

K.450の名盤は指揮者としても数々の名演奏を残す、レナード・バーンスタインとダニエル・バレンボイムの録音を挙げたいと思います。

まずは、バーンスタインとウイーンフィルの出会いで実現した1966年の名盤。

もう50年以上の歳月が経ってしまいましたが、その豊かな味わいは今も輝きを失っていません。

バーンスタインの自在な表情や閃き、センスは抜群で、あらゆるフレーズがウイットに富んでいて魅力的です。

特に第ニ楽章はメロディをしっかり歌わせて、深い情緒を醸し出していますね!

バレンボイムとベルリンフィルの録音は1990年代のデジタル録音です。当然音質も良く、ピアノとオーケストラのバランスが大変良いため、安心して音楽を堪能できるでしょう。

バレンボイムのピアノはメリハリに富んでいますが、決して音は固くならず、無垢で柔和なニュアンスが音楽が進むに連れて持ち味を発揮していきます。

ベルリンフィルも、モーツァルトらしいエレガントな響きを実現しています。ピアノともどもニュアンス豊かで、陰影に富んだ充実した音楽を作りあげていますね。
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