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派手ではないが心に残る音楽ジャンル
もう20年から30年も前になってしまうのでしょうか……。
ニューエイジ・ミュージックという音楽ジャンルが脚光を浴び、日常的にそれを耳にするようになった頃の話です。
ジョージ・ウィンストンやウィリアム・アッカーマン、エンヤといった洋楽の実力派アーティストたちが聴かせてくれた静謐で懐かしく、かつ新鮮でモダンなサウンドは衝撃的でした。
それはジャズでもボサノヴァでもない…独特の感覚を持った音楽だったのです。
ニューエイジ・ミュージックは調和を促す環境音楽として捉えられることもあるし、聴く人を癒やすヒーリングミュージックと言われることもあります。
その反面、殺伐として人の心が疲弊する中で、多くの人が癒やしを求めているということは紛れもない事実なのでしょう……。
ただしニューエイジミュージックに明確な音楽スタイルの定義があるわけでもありません。
ポップス、クラシック、フュージョン、ボサノバ、ジャズ、ロック等、どんなジャンルだとしても、それが人を癒やす音楽であるならば、それが即ちニューエイジミュージック=ヒーリングミュージックということになるのかもしれませんね……。
ともすれば、一時代を築いた洋楽アーティストばかりに目が向けられることが多いのも確かです。
しかし日本にも加古隆、倉本裕基、久石譲、西村由紀江、中村由利子等…、素晴らしいアーティストたちがたくさんいることを忘れてはならないでしょう。
音楽シーンを彩ったニューエイジミュージックの音楽家たち2・西村由紀江
懐かしさとピュアなメロディ ニューエイジミュージックが日本で注目された1980年代は、世の人々が環境問題に目を向け始めた時代でした。 また多くの人が、癒やしや潤い...
豊かな感性が心をひく中村由利子
ここでは、写真家・故前田真三さんの北海道・美瑛の映像作品『四季の丘』に、曲を提供したことで話題になった中村由利子さんをとりあげてみます。
『四季の丘』での移ろいゆく繊細な情感は、映し出される情景と一つに溶け込んで最高のコラボレーションとなったのでした。
とにかく映像との相性は抜群ですね……。映像から詩が聴こえてくるような独特の雰囲気を持っているのです。
中村さんは2000年以降は韓流ドラマに曲を提供したり、作曲で大変に好評を博しているようです。
彼女の作品は全体的に抒情的なのですが、少し哀愁を漂わせたな味わいがあり、心のひだに直接触れるような情緒が印象的です。
中村さんの作品に最初に出会ったのは30年も前のことです。テレビのCMでイメージ映像が流れていたのですが、その時流れていたのが「パストラル」でした…。
眼をつぶっていると様々な情景が浮かんできて、湧き上がるイメージが美しく装われていくのを感じました。
ヨーロッパ的な洗練された感覚の楽曲もあれば、クラシカルなモチーフを使ったりするのですが、それらが自然に曲と溶け合っているところに抜群の音楽センスを感じます。
また、東日本大震災で被災した人たちへのメッセージとして作曲された「えがおの日まで」も印象的です。深い哀しみに打ちひしがれ、ぽっかりと空いてしまった人々の心の傷を少しでも埋めるべく作られたという、優しさと慰めの歌が忘れられません。
おすすめアルバム
DEAR GREEN FIELD -SOLO BEST
特にオススメは「ディア・グリーン・フィールド」です。これは彼女のオリジナル作品からのセレクトをピアノのソロでアルバム化したもので、いわゆるアレンジによるベストアルバムと言っていいでしょう。
驚くのがピアノソロの心洗われる素晴らしさです。ピアノでこれ以上ないほど歌っているために、展開部でオーボエやチェロの伴奏が出てくると懐かしさや音楽の素晴らしさを実感できるでしょう!
時の花束
時の花束は1988年の2枚目のアルバムです。
注目は最初に収録された「パストラル」でしょう。たおやかで詩的な情緒が漂うバラード調の作品で、田園風景の愛おしさや自然の息吹が伝わってくるようです。
アトリエの休日
もう1枚、「アトリエの休日」のラストに収録されている「賛歌」が見事な出来栄えです。
オルガンの音色をバックに幻想的な雰囲気で導き出されるピアノのタッチは時間が止まったような感覚と自分の内面を見つめるような瞬間を与え、至福の時を約束してくれることでしょう……。