夢、愛をファンタジーで包むミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」

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ワクワク感と柔軟な感性!

『ラ・ラ・ランド』は音楽、ダンス、演出、撮影、美術などのさまざまな要素が夢のようなファンタジーとして結集したミュージカル映画です。

この映画は劇中に「ロシュフォールの恋人たち」「シェルブールの雨傘」「バンドワゴン」「世界中がアイラブユー」など往年のミュージカル映画へのオマージュがふんだんに盛り込まれています。しかし出来上がった作品は他にないチャゼル監督ならではの味わい深い「映画」、「ミュージカル」に仕上がっているのです。

かつてエンターテイメントが無条件で人を楽しませ、夢を与えるものだったとしたら、これはその条件をあらゆる面で満たし、叶えてくれた映画といえるでしょう!

女優として成功を夢見るミア(エマ・ストーン)とジャズピアニストとして道を極めようとするセブ(ライアン・ゴズリング)。夢に向かって互いを認め、理解する中で生まれた愛情と、いつしか気持ちのすれ違いが生じる現実……。ミュージカル映画の王道的なストーリー展開にふさわしい内容を繊細優美にまとめあげた手腕はお見事です!

『ラ・ラ・ランド』を仮にスイーツに例えるならば、上質で彩り豊か、見るからにおいしいそうなメニューを無心でほおばるのに似ているかもしれません…。しかもおいしいだけでなく、さまざまな妙味、隠し味がいたるところに施されているのです。
観終わった後に心地よい疲れと満足感に浸れるのもいいですね……。

あふれる躍動感や優しさ、エモーショナルな感覚が画面上で無理なく溶けあっているのも、時代を超えた柔軟な感性と秀逸なエンタメ感覚の持ち主、チャゼル監督のなせる技なのでしょう!

映像、音楽、演出が効果的に絡む!

ロケ地になったグリフィス天文台を臨むロスの街並

この映画の最大の魅力は、どのような年齢層、客層の人が見たとしてもスンナリ映画に入っていける振付、演出のうまさでしょうか……。

ミュージカル映画らしいスピード感あふれる音楽的な構成、流れも抜群です。振付と音楽が一体となり、躍動感あふれる映像が次々に展開されていきます。

誰もが経験するであろう夢と挫折、そして男女の出会いと運命のいたずら……。決して突き放さずに、温かな眼差しで見つめているのが印象的です。それをウイットやユーモア、気の利いたダンス、音楽、色彩のバリエーション、スタイリッシュな映像を交えることで華を添えているのです。

そして忘れてならないのが、現実と想いの世界を行き交う感性豊かな映像の挿入です。

“Dancing in the Stars”でダンスを踊る二人が星の輝く夜空へ舞い上がるシーン、”City of Stars”で二人でメロディを口ずさみながらも現実の葛藤に心痛めるシーン、エピローグでセブが店でピアノを弾いているときに走馬燈のように想いを巡らせるシーン…。

それぞれの場面でタイムスリップした映像や、回想、空想のシーンをコラージュのように巧みに挿入して、詩的なファンタジーに高め、大きな効果をあげています!

「ラ・ラ・ランド」はミュージカル映画の王道を踏襲しながらも、確実に新たな時代ヘの移行を告げる意欲的な作品だったのでした!

あらすじ

アメリカンドリームを夢見て多くの若者が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミアは女優志望だった。

しかし、オーディションは何度も落ちてばかり。ある日、ミアは通りがかった店で、とあるピアニストの演奏に惹かれた。

ピアノの主はセブ。いつかは自立して、大好きなジャズを演奏することを夢見ていた。やがて二人は恋におち、それぞれの夢に向かって歩きはじめる。

しかし、セブが資金作りのために入ったバンドが成功したことで、二人の心に距離が出来はじめた……。

見どころ・聴きどころ

プロローグ・Another Day of  Sun

朝の大渋滞の高速道路、クラクションを鳴らす音があちこちから聞こえる。ひとりの女性が外に出て歌い踊り始めることから、たちまちハイウェイはエネルギッシュなショーの舞台と化する。

Someone in the Crowd

友人の誘いで顔を売るため、やむなくパーティに参加するミア。軽快な音楽をバックに4人が繰り広げるダンスがキュートでさり気なくファッシヨナブル!

Mia & Sebastian Theme

町外れのバー。ジャズピアニストを極めようとするセブは契約に従わずに、自分のオリジナル曲を弾いて解雇される。これがミアとの出会いとなった。

A Lovely night

「バンドワゴン」のダンスシーンへのオマージュがこの名シーンを生んだ。ロスの美しい夜景をバックに繰り広げられるナンバー。ダンスと音楽、色彩の溶けあった美しさが忘れられない。

Dancing in the Stars

グリフィス天文台でのひととき。夢のようなファンタジーとロマンが交錯する素敵なシーン。

City of Stars

ふたりはデートを重ね、互いに夢を追いながらデュエットする理想と現実との葛藤が垣間見られるシーンとの対比が心に残る。

エピローグ Final Scene

もしもセブとミアが結ばれていたら……。という仮定のイメージ映像をインサートしながら叙情的に描かれる印象的なラスト。最後にふたりは互いの気持ちを察するように見つめあう。「シェルブールの雨傘」のラストを想わせる…。

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オリジナル・サウンドトラック


Ost: La La Land

ラ・ラ・ランド(字幕版)

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この記事を書いた人

1961年8月生まれ。グラフィックデザインを本業としています。
現在の会社は約四半世紀勤めています。ちょうど時はアナログからデジタルへ大転換する時でした。リストラの対象にならなかったのは見様見真似で始めたMacでの作業のおかげかもしれません。
音楽、絵画、観劇が大好きで、最近は歌もの(オペラ、オラトリオ、合唱曲etc)にはまっています!このブログでは、自分が生活の中で感じた率直な気持ちを共有できればと思っております。

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