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2021年

  • 2021年4月17日

音のパレットから紡ぎ出される洗練と詩情!ドビュッシー『前奏曲全2巻』

感性が光る名曲   印象派の音楽家と言えば「ドビュッシー」というくらい、革新的で感性豊かな音楽を確立した人ですが、「彼のピアノ曲はどうも苦手だ……」とおっしゃる方は少なくなくありません。 初期の『アラベスク』や『ベルガマスク組曲』あたりは調性やメロディラインもはっきりしており、比較的親しみやすいのは間違いありません。 しかし後期の『映像』や『前奏曲』、『練習曲』になるとお手上げという方が […]

  • 2021年4月3日

壮絶な心の軌跡・ピアノソナタの傑作 ベートーヴェン『熱情』

苦難と向き合い傑作が誕生   1805年に作曲されたベートーヴェンのピアノソナタ第23番ヘ短調『熱情』は音楽史上あらゆる面で規格外な傑作です。 超絶的な技巧を必要とし、それまでのピアノの性能を超えた音域や音色、大胆な構成、火の出るような感情表現は当時の音楽界、ピアノ演奏に革命的な変革をもたらしたのでした。 この作品を発表する数年前のベートーヴェンはどん底ともいえる深刻な状況に襲われていま […]

  • 2021年3月25日

古典的な様式美の中にあふれる愛情とユーモア シャルダン『食前の祈り』

家族の日常を愛情豊かに描いた名画 以前、「家族を描いた名画は少ない」との内容を投稿したことがありました。 確かに家族を肖像画として描いた絵は画家と描かれた家族との信頼関係や良好なコミュニケーションが成立しない限り、なかなか難しいものがあります。 しかし、例外もあります。それは家族の日常を愛情あふれる一瞬の光景としてとらえられた場合ではないでしょうか? その代表的な作品がシャルダンの名画『食前の祈り […]

  • 2021年3月18日

灼熱の太陽の輝きに似た魅力作 ヘンデル「ディキシット・ドミヌス」

  灼熱の太陽の輝きに似た魅力作 ヘンデルはイタリア滞在時の若かりし頃、オペラの名曲を次々と発表しました。宗教曲『ディキシット・ドミヌス・主は言われた』もそのような時に誕生したのでした。 まず、この作品を聴いて感じるのは従来の厳かな宗教曲のイメージとは少し一線を画しているということです。 作品を聴くとわかるように、大変な意欲作で、これまでのカトリック音楽の慣例を打ち破ろうという気概に満ち […]

  • 2021年3月16日

言い尽くせない心の記憶を美しく表現! バッハ「平均律クラヴィーア曲集第2巻」

バッハ作品の原点 平均律クラヴィーア曲集は、多くの傑作を残したバッハにとって作曲の原点であり、特別な位置を占める作品でした。 それは彼のライフワークでもあるピアニストたちの練習に約立つことや、これからピアノの基礎をしっかり学んでいこうとする音楽家たちにとって、充分に学ぶ意味のある音楽を提供することでもあったのです。 もちろん一般のリスナーや音楽ファンにも多くの示唆を与え、感性を刺激する味わい深い作 […]

  • 2021年3月4日

癒えない哀しみと苦悩の旋律 チャイコフスキー交響曲第6番『悲愴』

ロマンチズムの極地、衝撃の交響曲   チャイコフスキーの交響曲第6番ロ短調『悲愴』。言うまでもなく傑作中の傑作です。 この作品、以前は第4楽章があまりにも悲し過ぎて、好き好んで聴くことがありませんでした……。でも人生経験を積んで、いろんな想いを通過して改めて聴き返すと、これが本当に感動的なのです。そしてチャイコフスキーがなぜこの交響曲を書いたのかということに納得するし、大いに共感してやま […]

  • 2021年2月27日

無邪気な微笑みと人知れぬ涙と…。 モーツァルト『ピアノ協奏曲第12番』

モーツァルトの音楽は良質な絵本のよう   絵本はいつの時代も、大人が子どもに絵を見せながら読み聞かせるものとして親しまれてきました。幼い子どもたちの感性、創造性を育み、さまざまな教訓を自然に無理なく吸収できるものとして愛されてきたのです。 ところが今、絵本は大人も読んで感動したり、その楽しさを味わうものヘと変化してきています。 これはどういうことなのでしょうか……。冷静に考えると、絵本の […]

  • 2021年2月22日

幻覚に悩まされつつ崇高な世界を表現 ゴッホ『星月夜』

迫力満点だった上野の展覧会 2019年に東京・上野の森美術館で開催された『ゴッホ展』は見応え充分の充実した展覧会でした。 中でも『糸杉』の迫力は言葉に表せないほどのもので、厚く塗られた絵の具のタッチや狂おしいほどの情熱、生命を削りながら無我夢中で描いたと思われる余韻と感動は到底写真や印刷物では再現できないだろう……と確信したのです! ゴッホ(1853-1890)の心の息吹が目に見えるような形で伝わ […]

  • 2021年2月13日

みずみずしい感性が心地いい! 穏やかな空気が流れる絵 シスレー『草原』

印象派の典型と言われた画家 今なお日本でも根強い人気があり、19世紀に一世を風靡した印象派がフランスで産声をあげたきっかけは思いがけないものでした。 それは1870年代にフランスの芸術アカデミーとアカデミー主催のサロン展へ抗議する形で噴出したのです。 サロンに出品することは、当時の画家たちにとって成功に至る唯一の登竜門だったのでした。しかしサロンの権威ある審査員たちは、印象派から出品された作品の多 […]

  • 2021年2月4日

地上ヘの憧れと愛・劇団四季の魅力全開! アルバム「リトルマーメイド」

昨年からの世界的なコロナ禍は、かれこれもう1年になろうとしています。 いまだに収束の気配が見えない中、痛感するのは、文化、エンタメが私たちの心や生活に与える影響は計り知れないほど大きかったということです。改めて舞台公演やコンサートから、どれほど多くのエネルギーをもらっていたのだろうかと思うばかりなのです。 特に劇団四季の公演は時間が許す限り通い、楽しませていただいていたので、その寂しさはひとしおで […]