昨年からの世界的なコロナ禍は、かれこれもう1年になろうとしています。
いまだに収束の気配が見えない中、痛感するのは、文化、エンタメが私たちの心や生活に与える影響は計り知れないほど大きかったということです。改めて舞台公演やコンサートから、どれほど多くのエネルギーをもらっていたのだろうかと思うばかりなのです。
特に劇団四季の公演は時間が許す限り通い、楽しませていただいていたので、その寂しさはひとしおです。
今は演ずるほうも、観るほうも辛く歯痒い状況ですが、じっと耐えていくしかありませんね……。収束した暁には公演を心おきなく楽しみ、多くの方々と感動を共有したいものです。
四季ならではの魅力が満載!
ディズニー リトルマーメイド ミュージカル <劇団四季> (劇団四季)
「リトルマーメイド」はディズニーの大人気アニメーション(1989年)です。ブロードウェイでも2008年に舞台化され、劇場をフル活用したスケールの大きな表現が話題となりました。
劇団四季の「リトルマーメイド」は2013年に舞台化されると、ロングラン公演を達成し、今なお各地で強い人気を集める演目となっています。
今回ご紹介するのは、その「リトルマーメイド」の四季バージョンのアルバムです。
この作品は「美女と野獣」(1995年~)、「ライオンキング」(1998年~)、「アイーダ」(2003年~)に続くディズニーとの提携作品の第4弾として、多くのファンの期待を集める中で公開されました。
四季の舞台化にあたってはビジュアル面をより印象的に仕上げるため、ディズニーと四季の間で協力がとられました。
このコラボレーションは、結果的には大成功を収めます。「ヨーロッパ公開版」にさらに華やかさ、繊細さを加え、世界で最もクオリティの高い『リトルマーメイド』となったのです。
そして四季ならではの良さも随所に生かされていたのでした。
四季版の「リトルマーメイド」は、オリジナルの良さを根底に置きながら、ブロードウェイ版とはひと味もふた味も違う日本人の感性、感覚にカスタマイズされた魅力いっぱいの作品といえるでしょう。
劇団四季サイト https://www.shiki.jp/applause/littlemermaid/
エンタメの粋が結集
劇団四季:リトルマーメイド「パート・オブ・ユア・ワールド」2018年MV
アルバムに目を向けてみましょう。
これはうれしいことに日本初演のキャストによるスタジオ録音です!
とにかく良く出来てますね! 「美女と野獣」でもそうでしたが、あの日の面影が損なわれることなく、舞台の感動が蘇ってきます。
録音がいいのもうれしい限りです。歌とオケが美しく絡み、キャストのやりとりや情景が目に浮かぶように生き生きと描かれていきます。心触れ合う感動的なナンバーから思わず笑ってしまうようなコミカルなナンバーまで、最後まで一気に聴き入ってしまいます…。
そして音楽やセリフとのやりとりの間に、心憎いほどのエンタメの粋が結集されており、決して飽きさせません。
聴きどころはたくさんありますが、まずはアリエルのナンバーから。
アリエルの魅力がストレートに伝わるのが、第二幕の「どんな夢より」でしょう!
エリックに夢中になる乙女心を無邪気に歌いあげます。リズムや調の変化があって難しい曲ですが、アリエルの弾けるような喜びが伝わってきて、みるみる情景が明るくなっていくのが印象的です。
アリエルがまだ見ぬ世界、地上への憧れと夢を素直に歌う「パート・オブ・ユア・ワールド」はこのミュージカルの代表的ナンバーで、キラキラ輝くような情緒が漂います。
アースラのナンバー「パパのかわいい天使」も皮肉と自虐が入り混じった何ともいえない絶妙な味わい…。
アリエルのことが心配でならないセバスチャンの「アンダー・ザ・シー」や、トリトンの要所要所での温かな眼差しも忘れられません。
第二幕後半にアリエルとエリック、セバスチャン、そしてトリトンが歌う「もしも」は、それぞれの想いが交錯する美しい重唱に発展し、聴いてるとただただ胸が熱くなります…。
劇場の興奮が眼に浮かぶよう 皆さん、映画や舞台のサントラ盤を聴く機会はありますでしょうか? おそらくどなたも、音楽が気になったり、感動した映画のサントラ盤CDを一度や二度は購入された経験があるかもしれませ[…]
2013年初演キャスティングの録音
四季のアルバムで感じるのは音楽に陰影があって、随所にしっとりとした情感が漂うことです。
しかしそれも変にシリアスになったり、感傷的にならないからこそ、コミカルなナンバーはもちろん、あらゆる楽曲が多くの人に支持されているのですよね。
またフライング技術やパペットなどを駆使して、神秘的な海の世界を描いたことは今後のミュージカル制作のひとつの指針になったことは間違いありません。
●エリック/上川一哉
●アースラ/青山弥生
●トリトン/芝 清道
●セバスチャン/飯野おさみ
●スカットル/丹下博喜
●グリムズビー/星野元信
●フランダー/大空卓鵬
●フロットサム/一和洋輔
●ジェットサム/中橋耕平
●シェフ・ルイ/岩城雄太