素晴らしいミサ曲は、決して「宗教音楽」という枠だけには収まりません。
もちろん、キリエ、グロリア、クレド……といったカトリックのミサの典礼に基づいていることは間違いありません。しかし、優れたミサ曲の魅力は、そうした形式を忠実に守ることだけにあるのではないでしょう。
むしろ、その形式の中で、どこまで壮大な理想や深い精神性を音楽として表現できるか。そこに、ミサ曲というジャンルの大きな魅力があるのではないでしょうか。つまり、単に典礼を彩るための音楽にとどまらず、その枠組みを最大限に生かしながら、人間の祈りや希望、喜び、苦悩といった普遍的な感情を描き出していくのです。
そのようなミサ曲の代表例として、まず思い浮かぶのがベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》でしょう。そして、もう一人挙げるとすれば、やはりハイドンではないでしょうか。
ベートーヴェンが厳しく壮大なテーマと向き合い、精神の深奥へと迫っていったのに対して、ハイドンの音楽には、もっと親しみやすく、温かな人間味があります。時にはユーモアさえ感じさせながら、いつの間にか私たちの心の奥深くへと入り込んでくるのです。それでいて、その音楽には比類のない気高さと純真さがあります。
明るく親しみやすい旋律の中にも、決して表面的ではない深い精神性が宿っている。人間の本質を見つめる素朴で誠実な表現が、ハイドンの音楽にはあるのです。
そして、そんなハイドンの魅力が凝縮されているのが、晩年の傑作《テレジア・ミサ/Theresienmesse》です。では、このミサ曲にはどのような魅力があり、私たちはどこに耳を傾ければよいのでしょうか。
今回は、ハイドン《テレジア・ミサ》の魅力と聴きどころを、じっくりと見ていきましょう。

ハイドン《テレジア・ミサ》とは?
ハイドンの《テレジア・ミサ》は、1799年に作曲された変ロ長調のミサ曲です。作品番号はHob. XXII:12。ハイドンが晩年に残した6曲の大規模なミサ曲の一つで、充実した合唱と独唱、そして管弦楽が一体となった、ハイドンの宗教音楽を代表する傑作中の傑作です。
「テレジア・ミサ(Theresienmesse)」という名前で親しまれていますが、ハイドンの自筆譜には単に「Missa」と記されており、「テレジア」という呼称が正式な原題だったわけではありません。現在では一般的な通称として定着しています。
また、この作品はハイドンが1796年から1802年にかけて、エステルハージ家のために作曲した6曲のミサ曲の一つにあたります。1799年9月8日にアイゼンシュタットで初演されたとされています。

《テレジア・ミサ》作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作曲者 | ヨーゼフ・ハイドン |
| 作品名 | 《ミサ曲 変ロ長調》 |
| 通称 | 《テレジア・ミサ》 Theresienmesse |
| 作品番号 | Hob. XXII:12 |
| 作曲年 | 1799年 |
| 調性 | 変ロ長調 |
| 初演 | 1799年9月8日、アイゼンシュタットとされる |
| 編成 | 独唱(ソプラノ・アルト・テノール・バス)、混声合唱、管弦楽 |
| 言語 | ラテン語 |
| 楽章 | キリエ、グロリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュス・デイ |
| 演奏時間 | 約40~42分 |
作品解説

トーマス・ハーベイ画
(c) Royal College of Music; Supplied by The Public Catalogue Foundation
全曲は、「キリエ」「グロリア」「クレド」「サンクトゥス」「ベネディクトゥス」「アニュス・デイ」の6つの部分から構成されています。
基本となる変ロ長調を軸にしながら、ベネディクトゥスではト長調、アニュス・デイではト短調から変ロ長調へと展開し、最後は希望を伝える明るい響きへと帰着します。
一般的なミサ曲の形式に沿いながらも、ハイドンならではの明快な構成力、豊かな旋律、合唱と独唱の巧みな組み合わせ、そして劇的な音楽の展開が随所に盛り込まれています。
そのため《テレジア・ミサ》は、宗教音楽でありながら、初めて聴く人にも音楽そのものの喜びがストレートに伝わりやすい作品と言えます。
テレジア・ミサの魅力とは?

ハイドンの《テレジア・ミサ》の最大の魅力は、宗教音楽としての厳粛さと、人間的な温かさや生命力が見事に共存していることです。
ミサ曲というと、荘厳で重々しく、少し近寄りがたい音楽を想像する方もいるかもしれません。しかし《テレジア・ミサ》を実際に聴いてみると、その印象は大きく変わることでしょう!
もちろん、絶対主への祈りや畏敬の念を感じさせる場面も多々あります。それと同時に、晴朗で伸びやかな旋律、躍動するリズム、独唱と合唱の美しい対話が次々と現れ、音楽が強いエネルギーに満たされながら生き生きと進行する様子は圧巻以外の何ものでもありません。
マリア・テレジアに捧げられた気品と美しさ

神聖ローマ皇帝フランツ2世の皇后マリア・テレジアにちなんで名付けられたとされ、宮廷にふさわしい洗練されたエレガンスと華やかさが作品全体を包み込んでいます。
厳粛でありながらも、どこか温かく親しみやすいメロディが際立っています。
「暗闇から光へ」のドラマチックな構成
キリエやアニュス・デイに見られる深い祈りの表現から、グロリアやドナ・ノービス・パーチェムのように爆発的な歓喜とのコントラストが実に見事です。
まるで人生の苦難を経て、神の救いに到達するかのようなドラマチックな感情の揺れや動きを体感できるでしょう。
ハイドン晩年の合唱による圧倒的なフーガ
交響曲の父としても知られるハイドンですが、このミサ曲では声楽と管弦楽の融合が極限レベルに到達しています。
特に合唱によって展開されるフーガ(対位法)は緻密かつ壮大で、重厚な響きと躍動感が同居する圧倒的なスケールを生み出しています。
ハイドンの作曲技法のすべてが凝縮された傑作

宗教曲でありながら、決して暗さに沈むことがありません。音楽の根底には常にハイドンらしい素朴な音楽への喜びと、神への深い感謝、そして生への歓喜があふれています。
ハイドンという人物の温かく誠実な人柄、そして長年のキャリアで研ぎ澄まされた職人技のすべてが、この一曲に凝縮されていると言っても決して過言ではありません。
聴き終わったあとに心が晴れやかになり、生きる希望が湧いてくるような力強さを持っているのはそのためでしょう。
晩年のハイドンは、長年培った交響曲の展開力や対位法の技術を惜しみなく教会音楽へと注ぎ込みました。そのため、どの章節を切り取っても構造的な無駄がなく、それでいて聴く人の心にダイレクトに響く気品と温かさに満ちています。
単に格式が高いだけでなく、神への深い敬意と人間への温かい眼差しが同居しているからこそ、『テレジア・ミサ』は今なお私たちの心を揺さぶり、深い感動と底知れぬ希望を与えてくれるのでしょう!

《テレジア・ミサ》の聴きどころ
《テレジア・ミサ》は、キリエからアニュス・デイまで、どこを聴いても魅力的な音楽が現れる作品です。
ここでは、特に注目したい部分を楽章ごとに見ていきましょう。
キリエ|厳粛な祈りから音楽が動き出す
Haydn: Mass in B Flat – ‘Theresienmesse’,
Hob.XXII:12: Kyrie · Donna Brown · Sally Bruce-Payne ·
Peter Butterfield · Gerald Finley · Monteverdi Choir ·
English Baroque Soloists · John Eliot Gardiner
冒頭のキリエは、厳かな雰囲気を持ちながらも、音楽が停滞することなく前へ進んでいきます。
祈りを意味する「Kyrie eleison(主よ、憐れみたまえ)」という言葉にふさわしい厳粛さがある一方、やがて合唱が躍動し始め、作品全体の音楽的な生命力を予感させます。
キリエは、これから始まる約40分間の音楽世界への入口とも言えるでしょう。
グロリア|ハイドンの魅力が凝縮された最大の聴きどころ
Gloria in excelsis Deo


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Hob.XXII:12: Gloria · Monteverdi Choir ·
English Baroque Soloists · John Eliot Gardiner
《テレジア・ミサ》の中でも、特に強くおすすめしたいのがグロリアです。
冒頭の「Gloria in excelsis Deo(いと高きところには、神に栄光あれ)」では、合唱が華やかに響き渡り、まさに「栄光」という言葉にふさわしい堂々とした音楽が展開されます。
しかし、ここからがハイドンの面白いところです。
Gratias agimus tibi
続く「Gratias agimus tibi(われら主に感謝したてまつる)」では、音楽の表情が穏やかになり、独唱者たちによる美しい歌が現れます。アルトを中心とした独唱に、バス、ソプラノ、テノールなどが加わり、独唱と合唱が巧みに交替しながら音楽を発展させていきます。
Quoniam tu solus sanctus
さらに「Qui tollis」では、合唱が加わることで音楽の緊張感が高まり、続く「Quoniam tu solus sanctus」では再び明るく華やかな表情が戻ってきます。
そして最後の「Amen」へ。
このように、グロリア一つの中に、歓喜、感謝、祈り、緊張、希望といったさまざまな表情が凝縮されています。
「音楽を聴く喜びで心がいっぱいになる」と感じるのは、まさにこのようなハイドンの豊かな音楽の流れによるものなのは間違いありません。
クレド|力強い構成とドラマティックな展開
Credo


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Hob.XXII:12: Credo · Monteverdi Choir ·
English Baroque Soloists · John Eliot Gardiner
クレドでは、ハイドンの確かな造型感覚と構成が際立つようになります。
「Credo(われは信ず)」という信仰告白に始まり、キリストの受肉、受難、復活、そして永遠の生命へと進んでいく長いテキストを、ハイドンは一つの大きな音楽の流れとしてまとめています。
特に「Et incarnatus est」では独唱者による静かで内省的な表情が現れ、「Et resurrexit」から音楽が再び力を増していきます。そして終盤の「Et vitam venturi saeculi」では、合唱による音楽が大きな推進力を持って展開します。
長いクレドが、単なる宗教的テキストの羅列ではなく、一つのドラマとして聴こえてくるところが大きな魅力です。
サンクトゥス|静けさから一気に広がる歓喜
Sanctus
ヘルムート・リリング指揮オレゴン祝祭管弦楽団&合唱団
サンクトゥスは、ピアニシモの静寂と優美な和音で始まります。それはまるで天国の光が静かに降り注ぎ、神の偉大さに息をのむような、繊細で格調高い気品に満ちていると言えるでしょう。
そして「Pleni sunt caeli(天と地は主の栄光に満ち)」で合唱が力強く入ってくる瞬間は、特に印象的です。
静かな祈りから、突然視界が開けるように音楽が広がっていく――。
このようなダイナミックな対比も、《テレジア・ミサ》の大きな魅力です。
ベネディクトゥス|希望と幸福感に満ちた音楽
ベネディクトゥスでは、それまでの楽章とは少し違った穏やかな表情が現れます。
ここで感じたいのは、ハイドン特有の温かな幸福感です。
宗教音楽でありながら、決して重苦しく閉ざされた音楽ではありません。
柔らかな旋律と声の重なりに耳を傾けていると、静かな祈りの中から希望が少しずつ広がっていくような感覚があります。
アニュス・デイ|緊張から輝かしいフィナーレへ
Agnus Dei
最後のアニュス・デイでは、それまでの明るい音楽とは対照的に、冒頭から緊張感のある音楽が現れます。
「Agnus Dei(神の子羊)」の祈りが厳粛に歌われ、音楽には一時的に暗い影が差します。
Dona nobis pacem


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しかし、やがて「Dona nobis pacem(われらに平安を与えたまえ)」へと到達します。
Dona nobis pacemの真骨頂は、何と言っても声楽パートとオーケストラが複雑に絡み合う対位法(フーガ)の美しさですね。それぞれの声部が平和への祈りのテーマを次々と受け継ぎ、緻密かつ圧倒的なスケール感で響きを構築していく様子は、まさに晩年ハイドンの熟達した職人技と言えるでしょう。
暗雲を払い去るような輝かしい長調の響きと力強いリズムは、単に「平和を願う」だけでなく、「神によって平和がもたらされた」という強い感謝と確信に満ちています。
そして全曲の総決算として、聴き手の心に晴れやかな感動と深い安らぎを残しつつ曲を閉じていくのです。
テレジアミサ・オススメの名盤
ヘルムート・リリング指揮、オレゴン祝祭管弦楽団&合唱団、シモーナ・シャトゥロヴァー(Soprano)ロクサーナ・コンスタンティネスク(Alto)コービー・ウェルシュ(Tenor)ヨーク・フェリクス・シュペーア(Bass)


まず驚くのが録音の素晴らしさです。2007年のライブ録音ですが、演奏の熱気と臨場感が直接伝わってきますね。
それはただ単に音質がいいというのではなく、合唱とオーケストラのバランスが理想的な音量と臨場感で収録されているのです!
大体このようなオーケストラを伴う声楽曲の場合はどちらかに音質が偏ってしまいがちなのですが、この録音にはそれがありません。
分離の状態がとてもよく、様々なパートが深い陰影と共に美しく冴え渡って聞こえるのです。これは合唱、ソリスト、オケ、指揮者の表現とすべてに渡って万全と言えるでしょう!
合唱は過度なヴィブラートを抑えつつ、かといって古楽の発声法のようにスッキリし過ぎない配慮がなされていて、実にしなやかで力強く、ダイナミックな表現が効果的です!
発声の美しさやハーモニーの透明感も保ちながら、躍動感やダイナミズムが伝わってくるし、何よりも音楽に有機的な響きや流れがありますね。
ソプラノのシャトゥロヴァーやバスのシュペーアはセンスの塊。他のソリストたちも共感に満ちた歌唱が最高です。


ジョン・エリオット・ガーディナー指揮、モンテヴェルディ合唱団、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、ドナ・ブラウン (ソプラノ)サリー・ブルース=ペイン (メゾ・ソプラノ)ピーター・バターフィールド (テノール)ジェラルド・フィンリー (バス)


ガーディナー盤はソリスト、合唱、オケが高度に伝統的な大合唱団にありがちな重々しさがなく、ハイドン特有の快活なリズムが生き生きと弾むのが特徴です。
ガーディナーは、その不穏な空気(弱音の緊張感)をリアルに描き出したあと、後半の「Dona nobis pacem」でハイドンが突如として仕掛ける「まるで交響曲のフィナーレのような、勝利を確信した大歓喜のフーガ(ポリフォニー)」へと鮮やかに突入します。
複雑に絡み合う合唱の全パートが、驚異的な透明度でくっきりと聴こえる統率力はガーディナーにしか真似できないものでしょう!


ネヴィル・マリナー指揮、シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)、ライプツィヒ放送合唱団、キャロル・ヴァネス(ソプラノ)ドリス・ソッフェル(アルト)キース・ルイス(テノール)ペッテーリ・サロマー(バス)


シュターツカペレ・ドレスデンとライプツィヒ放送合唱団を起用した1986年の名録音です。
これは旧EMI(現ワーナー・クラシックス)などに録音され、現在はマリナーのハイドン・ミサ曲集やBOXセット等で親しまれています。
古楽アプローチとは異なる、オーケストラと合唱の精度の高さ、豊かな響きを活かしたオーソドックスで気品ある名盤として高く評価されています。
トレヴァー・ピノック指揮、イングリッシュ・コンサート&合唱団、ナンシー・アージェンタ (ソプラノ)キャサリン・ロビン (コントラルト)ミヒャエル・シャーデ (テノール)アラステア・マイルズ (バス)


トレヴァー・ピノック指揮イングリッシュ・コンサート、そして豪華なソプラノ・アルト陣(ナンシー・アージェンタ、キャサリン・ロビン等)による録音(Archivレーベル)は、古楽・ピリオド楽器アプローチとしては絶美で最高の表現と言えるでしょう。
マリナー盤のモダン・オーケストラによる重厚・洗練された美しさとは対照的に、ピノック盤には18世紀当時のハイドンが鳴らしていた当時の響きを蘇らせた圧倒的な魅力があります。
ガット弦による引き締まった弦楽器の音色、ナチュラル・トランペットやティンパニの鋭く乾いた打撃音が、ハイドン特有の躍動感をヴィヴィッドに描き出します。
響きが過度に重くならず、フレーズの語り口が非常に軽やかで風通しが良いため、典礼劇のような生き生きとした臨場感が生まれます。


よくある質問(FAQ)
- ハイドン《テレジア・ミサ》とは、どのような作品ですか?
-
ハイドンが1799年に作曲したミサ曲で、正式には《ミサ曲 変ロ長調 Hob. XXII:12》と呼ばれます。「テレジア・ミサ」という名前で知られていますが、作品そのものには「Missa(ミサ)」と記されており、この愛称が付けられた由来については諸説あります。
キリエ、グロリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュス・デイの6つの部分から構成され、合唱と独唱、オーケストラが一体となって壮大な音楽をつくり上げています。
- 《テレジア・ミサ》は、どこを聴けばよいですか?
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特に注目したいのは、グロリア、クレド、ベネディクトゥス、そして最後のアニュス・デイです。グロリアでは、荘厳な合唱から独唱者たちの美しい掛け合いへと音楽が展開していきます。
また、アニュス・デイの厳かな雰囲気から、最後の「Dona nobis pacem(われらに平安を与えたまえ)」へと音楽が大きく開かれていく瞬間も、この作品の大きな聴きどころです。
- 《テレジア・ミサ》は、クラシック音楽初心者でも楽しめますか?
-
はい。むしろミサ曲をあまり聴いたことがない方にもおすすめしたい作品です。宗教音楽というと、厳粛で難しい音楽を想像するかもしれません。
しかしハイドンの音楽には、明るさ、親しみやすさ、ユーモア、そして人間的な温かさがあります。まずは「宗教音楽だから」と構えず、一つの美しい音楽作品として聴いてみると、その魅力を感じやすいでしょう。
- 《テレジア・ミサ》は、どのくらいの長さですか?
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演奏によって多少異なりますが、全曲でおよそ40分前後です。
キリエからアニュス・デイまで続けて聴くと、ハイドンが生み出した音楽の流れや、最後の「Dona nobis pacem」へ向かう大きな構成も楽しめます。もちろん、最初はグロリアなど気になる楽章から聴いてみるのもおすすめです。
- 《テレジア・ミサ》のおすすめの録音はありますか?
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ヘルムート・リリング指揮、オレゴン・バッハ・フェスティバル管弦楽団・合唱団による録音をおすすめしています。
合唱、独唱、オーケストラのバランスがよく、ハイドンの音楽にある明快さと躍動感を充分に堪能できる演奏です。
また、ガーディナー指揮、トレヴァー・ピノック指揮による録音も、端正で引き締まった演奏を好む方にはおすすめです。同じ《テレジア・ミサ》でも、マリナー盤などのように指揮者や演奏団体によっても印象は大きく変わります。ぜひ聴き比べて、自分に合った演奏を探してみてください。
まとめ|《テレジア・ミサ》はハイドンの魅力が凝縮された傑作
ハイドンの《テレジア・ミサ》は、単なる典礼のための音楽として聴くには、あまりにも勿体ない豊かな魅力を持った作品です。
キリエからグロリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス、そしてアニュス・デイへ。
厳かな祈りがあり、喜びがあり、時には人間らしい温かさやユーモアさえ感じられる。そして最後には「Dona nobis pacem(われらに平安を与えたまえ)」という祈りが、大きな広がりを持って響き渡ります。
そこには、宗教的な意味を超えて、誰もが感じ取ることのできる「希望」や「喜び」があります。
ベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》が、深い精神性と厳しい問いかけによって聴く者の心を揺さぶる音楽だとすれば、ハイドンの《テレジア・ミサ》には、もっと素朴で温かな人間性があります。
明るく親しみやすい音楽でありながら、その奥には深い精神性がある。
それこそが、ハイドンの音楽の大きな魅力なのではないでしょうか。
「ミサ曲は難しそう」「宗教音楽は堅苦しそう」と感じている方にこそ、一度聴いていただきたい作品です。
まずはグロリアや「Dona nobis pacem」など、印象に残りやすい部分から聴いてみてください。
きっと、ミサ曲というジャンルに対する印象そのものが、少し変わるのではないでしょうか。















