グレン・グールドの魅力とは?独自すぎる演奏スタイルと名盤をわかりやすく解説

目次

グレン・グールドとは?(人物像)

グレン・グールド(1932–1982)は、20世紀を代表するカナダのピアニストであり、クラシック音楽の価値観そのものに大きな影響を与えた革新的な音楽家です。

特にヨハン・セバスティアン・バッハの演奏で知られ、その独創的な解釈と明晰な音楽構造の表現によって、バッハ演奏の新たなスタンダードを築きました。

彼の特徴は、単なる技巧の高さにとどまりません。

・音を一つひとつ際立たせる
・透明なタッチ
・極端ともいえるテンポ設定(非常に速い/遅い)
・内声部(隠れた旋律)まで浮かび上がらせる構造的理解

これらが融合し、「音楽を“聴く”というより“見える”ような演奏」と評されることもあります。

また、グールドは非常にユニークな人物としても知られています。

・極端に低い椅子を使用
・演奏中にハミング(鼻歌)をする
・コンサート活動を若くして完全に停止

特に1964年、31歳という若さで演奏会活動をやめ、録音活動へ専念するという決断は音楽界に衝撃を与えました。

彼は「一回限りの演奏よりも、録音によって理想の音楽を追求できる」と考え、スタジオという空間で徹底的に音楽を作り込む道を選んだのです。

その代表例が、デビュー盤であり最晩年にも再録音されたゴルトベルク変奏曲です。この作品は、グールドの人生そのものを象徴する存在となっています。

グレン・グールドの特徴|唯一無二の演奏スタイル

Glenn Gould – #WorldMusicDay Fact Video
Glenn Gould-#WorldMusicDay Fact Video

グレン・グールド(1932-1982)はクラシック音楽界の中でもまったく独自の感性を持ったピアニストでした。

クラシック音楽の常識を完璧に打ち破った音楽家だったと言ってもいいでしょう。

過去の伝統やルールなどには縛られず、自分の信じる音楽を貫き通したのです。

誤解がないようにお伝えすれば、彼が奇をてらう行動をしたとか、問題発言をして注目を集めたとか、決してそういうことではありません。自分に素直に生きただけなのです……。

むしろ演奏そのものは一遍に人の心を虜にするほどで、絶えず音楽から新たな魅力を引き出すことに抜群の才能を発揮したのです。

彼の生み出す音楽は手垢にまみれた古典やバロックの作品を素の状態に戻して、隠れた魅力や楽しさを引き出したといえるかもしれません。

コンサートやレコーディングの折には自分専用の丈の低い椅子をいつも持ち込んだり、ピアノを舐め回すような特異な演奏スタイルで聴衆の度肝を抜いたのでした。

しかもレコーディングの際は気持ちが高まれば高まるほど曲調にあわせた彼のハミングや鼻歌が収録されているのです。

なぜコンサートをやめたのか?

映画『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』予告編
映画「グレン・グールド天才ピアニストの愛と孤独」予告編

1964年3月にグールドは「シカゴのリサイタルを最後にコンサート活動からは一切手を引く」と宣言しました。

もともとコンサートやコンクールには特有の競争原理が働くといって否定的だったのですが、「コンサートでは、観客は演奏家にテクニックや見世物的な関心を寄せがちで、対等な関係を保ちにくい」というのが持論だったのです。

また、一回きりのライヴ演奏への疑問でした。「録音技術の登場と進歩によってライヴ・コンサートはその意義を失った」とまで言い放っています。

これにはグールドの非常にデリケートで物事にこだわる性格も大きく影響しているのでしょう。

診断はされてないものの、一説によればグールドは著しく自閉症スペクトラムのような症状を持ち合わせていたとも言われています。

世界を飛び回るには飛行機の大きな騒音や振動にも耐えなければならなかったし、指揮者とのトラブルが絶えなかったのも大きな要因だったのかもしれません。

バッハ演奏を変えた音楽革命

Glenn Gould - Bach, Prelude & Fugue IX in E-major: Fuga (OFFICIAL)
Glenn Gould-Bach,Prelude & Fuga

グールドといえばバッハ。バッハといえばグールドというくらいに20世紀バッハ演奏のスタンダードをつくりあげたのがグールドでした。

その演奏はこれまでの禁欲的でちょっと硬派のバッハ演奏をはるか彼方に押しやるほどの衝撃をもたらしたのです。

誰の真似でもないグールドでしか生み出せない類まれな音楽性! 生きもののように弾むリズム! バロックの大作曲家という固定観念にまったくとらわれない自由奔放な精神!

しかし核心の部分ではバッハの音楽に深く共感し、傾倒していたからこそこれほど魅力的な音楽づくりが可能だったのでしょう。

まるで数百年という時を超えてバッハが私たちに直接語りかける……そんな趣さえあるのです。大作曲家然とした虚像を引き剥がしたのはグールドの功績大といってもいいでしょう。

バッハとの相性が抜群だったのはもちろんですが、どの録音からも今まで聴いたことがないような新鮮な響きを届けてくれたのです。

特に1955年のデビュー盤であり、1982年最期の録音となった「ゴールドベルク変奏曲」はバッハの概念を根底から覆し、心ゆくまで楽しませてくれたのでした。

グレン・グールドの魅力|なぜ何度も聴きたくなるのか

Glenn Gould - Bach, Partita No. 2 in C-minor BWV 826 - rehearsal (OFFICIAL)
Glenn Gould – Bach, Partita No. 2 inC-minor
BWV 826 – rehearsal (OFFICIAL)

彼の音楽の魅力は一言ではとても伝えきれませんが、まずは鍵盤から紡ぎ出される水晶のような美しい音色が挙げられるでしょう! 

それは磨き抜かれたセンスの持ち主でなければ恐らく不可能と想われるデリケートで即物的な際立つ音色なのです。

他のピアニストでは音楽としては成立しないだろうと思われる超スローテンポや超スピードの演奏も凄いの一言です。

決して演出なのではなく、それは彼にとっては必然の速さだったのです。ですからそのような極端なテンポ設定をとっても違和感がないのでしょう。

特に魅力的なのは音の端々から漂う何とも言えない寂寥感ですね。それはグールドが意図して抽出した音色ではなく、グールド自身の人柄がそのごとく反映された自然な音色なのです。

いわゆる心の奥深い所で感じとっていて、全身から導き出される音色とも表現できるかもしれません……。

初心者リスナーにおすすめの聴き方

グレン・グールドの演奏は、いわゆる普通のクラシックとはかなり違うため、最初は戸惑うかもしれません。

しかし、ポイントを押さえると一気に面白くなります。

① まずは「ゴルトベルク変奏曲」から

聴く最初の一枚としておすすめなのは ゴルトベルク変奏曲

・1955年盤:若さ・スピード・衝動
・1981年盤:深み・哲学・静けさ

同じ曲なのに別の音楽のように違う→ これがグールドの本質です

② テンポの違いを楽しむ

グールドの演奏は

・異常に速い
・驚くほど遅い

といった極端なテンポが特徴です。

これは個性というより、「音楽の構造を際立たせるための必然」として選ばれています。

「なぜこの速さなのか?」と考えながら聴くと、一気に面白くなります。

③ ハミング込みで楽しむ

グールドの演奏中に聴こえるハミングは欠点ではありません。むしろ音楽に完全に没入している証拠です。

最初は気になりますが、慣れると逆に「これがないと物足りない」と感じるようにさえなります。

④ 内声(隠れたメロディ)に注目する

グールドの最大の魅力は、見えない旋律を浮かび上がらせる力です。

一度ではなく、何度も聴くことで

・新しい音が見える
・新しい構造が理解できる

聴くたびに発見がある音楽へと変わります

グレン・グールドの名盤・おすすめ録音

9つの小前奏曲1.ハ長調(J.S.バッハ)

グールド晩年の1980年の録音。まずは序奏のトボトボと歩くようなゆっくりとしたテンポ設定に驚かされる。

他のピアニストから聴こえる弾むような音色のワクワク感はまったくないが、代わりに人生の憂愁や秋の気配のような漂いはじめて唯一無二の音楽の表情を見せてくれる!

イギリス組曲第2番・プレリュード
(J.S.バッハ)

微動だにしないテンポ設定と、音と音との間をどんどん詰めていくリズムの躍動感と自在さに驚かされる。そして内声部の表情の存在感とヴァリエーションが圧倒的!

平均律第2巻第1番プレリュード
(J.S.バッハ)

最初の出だしから寂寥感があふれ、彼の鋭敏な感性によって抜群の雰囲気を湛えた音楽となる。無限の変化と漂うイマジネーションが心の奥底に刻まれていく……。

平均律第2巻第1番フーガ
(J.S.バッハ)

生き生きとしたリズムの積み重ねが魅力の第1番フーガ。グールドはプレリュードのように寂寥感を漂わせながらリズムを刻んでいく……。

他のピアニストには真似のできない世界だろう。

ゴールドベルク変奏曲(J.S.バッハ)

1981年グールド最期の録音。デビュー盤であり、最期の録音となったこの作品に彼はどのような想いを抱いていたのだろうか……。

インヴェンションとシンフォニア(J.S.バッハ)

インヴェンションとシンフォニアはグールドに最適な音楽かもしれない。音の小宇宙と言われる構造的な要素をくっきりと表現したり、巧みに弾き分けるグールドの才能は圧巻!

ピアノ・ソナタK.331第3楽章「トルコ行進曲」(モーツァルト)

グールドは子供が演奏するようなたどたどしいタッチで弾き進めていくが、その味わい深さとファンタジックな情感は最高!

よくある質問(FAQ)

Q1. グレン・グールドとはどんなピアニストですか?

20世紀を代表するカナダのピアニストで、特にバッハ演奏で革新的なスタイルを確立しました。独自のテンポや音の出し方によって、クラシック音楽に新しい価値観をもたらしました。

Q2. なぜコンサートをやめたのですか?

ライブ演奏よりも録音の方が理想的な音楽を追求できると考えたためです。また、観客との関係や演奏環境にも疑問を持っていました。

Q3. なぜ演奏中にハミングするのですか?

音楽に没入するあまり無意識に声が出てしまうためです。本人にとっては自然な表現の一部でした。

Q4. ゴルトベルク変奏曲はどの録音がおすすめですか?

初心者には1981年盤がおすすめです。落ち着いたテンポで構造が分かりやすく、音楽の深みを感じやすいです。

Q5. なぜ評価が分かれるのですか?

従来のクラシック演奏とは大きく異なるためです。しかし、その独創性こそが高く評価されています。

Q6. バッハ以外の演奏もおすすめですか?

はい。モーツァルトやベートーヴェンも録音していますが、特にバッハでその真価が発揮されています。

Q7. 初心者でも楽しめますか?

最初は違和感があるかもしれませんが、聴き方のコツを掴めばむしろ非常に面白く感じられるようになります。

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