あらすじ
第二次世界大戦直前のオーストリア。
修道院に身を置くマリアは歌が大好き。いつも院を抜け出して、近くの山へ歌いに出かける日々。
規律の時間に遅刻をすることもしばしば。先輩の修道女たちを困らせていたのだった。 そんなある日。マリアをずっと見守ってきた修道院長は、トラップ大佐の邸宅へ行って子どもたちの家庭教師になるように勧める。妻の死後、7人の子供たちを男手一人で育てていたトラップ大佐。その躾は軍隊式で、子どもたちは常に笛の音で号令をかけられていたのだった。
遊びも、歌も知らない子どもたち。そんな彼らにマリアは名前で呼びかけ、歌を教え、愛情を注ぐ。子どもたちは戸惑いながらも心を開き始め、次第に打ち解けるようになるのだった。最初はマリアの教育に対し異を唱えるトラップ大佐だったが、見違えるように健やかに成長した子どもの姿を目の当たりにし、自らの過ちに気づく。
こうして新しい家族の一員としてトラップファミリーに迎えられるようになったマリア。子どもたちに囲まれて同じ時間を過ごすようになった大佐とマリアは次第に惹かれ合うようになっていく…。
トラップ邸での舞踏会の夜、大佐とマリアは手を取り一緒に踊るが、マリアは自分の心が変わってしまったことに戸惑い、気持ちを告げずに、静かに立ち去ってしまう。
大佐には既に婚約者がいて、自分が身の丈ではないことを思い知らされたのだった。
修道院に戻ったマリアを、修道院長は「自分の道は自分で探すべき」と諭す。そして、マリアは再び大佐の家へと向かうのだった。
歌い継がれるスタンダードナンバー
「サウンドオブミュージック」はアメリカの興行収入記録を塗り替える記録的な大ヒットとなった1960年代を代表するミュージカル映画でした。
このミュージカル映画の大きな魅力となっているのは、音楽にあるのは言うまでもないでしょう。
映画や舞台がヒットするためにはタイトルナンバーのメロディが覚えやすくて口ずさみやすい……。これはある意味必須条件と言われていますよね。
とても簡単なようですが、実はこれがなかなか難しいことなのです。
ところがサウンドオブミュージックでは音楽という音楽がタイトルナンバーだけでなく、鼻歌交じりで歌い出せるような覚えやすくて親しみやすい曲ばかりがズラリ……。これはよく考えると凄いことですね。
映画が大ヒットした要因として、幼児から大人まで老若男女問わず、世代を超えてその良さを自然にキャッチできる音楽であふれていたことも挙げられるでしょう。
しかも劇中のあらゆるシーンで流れる音楽は珠玉の名曲揃いです。
それぞれのナンバーはどれもこれも個性が輝き、深い愛情が込められていて、一度聴くと忘れられない余韻に包まれるのです。
作詞のオスカー・ハマースタイン2世と作曲のリチャード・ロジャースの黄金コンビがいかに想像力や感性が豊かだったかということの確かな証かもしれません。
マリアに適役
この映画が大成功をおさめた大きな要因は、当時まだ無名だったジュリー・アンドリュースを主役に据えたことと、オスカー・ハマースタイン二世とリチャード・ロジャースの黄金コンビによる珠玉の名曲の数々が映画を彩ったことが挙げられるでしょう。
特に主役のマリアを演じたジュリー・アンドリュースは、彼女以外は配役が考えられないほどの適役でした。
歌、踊り、演技のどれをとっても違和感なく役に溶け込んでいて、それがマリアというキャラクターをより魅力的にしているのです。特に歌の魅力は格別なものがありました。
自然な発声と、それぞれの楽曲を深く理解した自信に満ちた表現、そしてほとばしる情感と澄んだ歌声……。オープニングナンバーでの自然への愛おしさ、慕わしさをあれほど情感豊かに歌いこなせる人は滅多にいないでしょう……。
もしこの映画に彼女がいなかったら、おそらく映画は別物のようになっていたかもしれません。「メリーポピンズ」での歌も見事でしたが、この映画は彼女にとっても特別だったようです。
トラップファミリーの子供たちともすぐに打ち解けられ、その親密な間柄は映画のあらゆる場面にもにじみ出ていますね…。
とあるインタビューで彼女はこう語っています。「こんなにも多くの人に幸福をもたらした映画に出演できた事は名誉だった…」と。
ロケ地・ザルツブルク
そして音楽と歌に加えて、もう一つの大きな主役アルプスの麓に位置する街をロケ地に選んだのも大きかったですね。
「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台となったのは、オーストリアの北部に位置し、ドイツ国境に近い街、ザルツブルクとその近郊です。
ザルツブルクといえばすぐに思い出されるのが大作曲家モーツァルトの出身地であること。風光明媚で自由かつ芸術的な雰囲気に満ち満ちたこの街は今もなおザルツブルク音楽祭をはじめとする文化と観光の発信地なのです。
映画ではザルツブルク市内をはじめ、オーストリア随一のザルツカンマーグートなど数多くの景勝地が出てきます。
オープニングやフィナーレでの空撮からの絶妙なカメラワークが見られるアルプスのやまなみも強烈な印象を残します。これはロバート・ワイズ監督自身がウエストサイド物語(1961年)でニューヨークのマンハッタンを空撮で寄っていった手法に似ていますね。それにしてもスケールが大きく、映画の魅力を引き立たせる見事な着想ですね…。
もちろん見どころはそれだけではありません。
マリアが「ドレミの歌」を披露するミラベル庭園やトラップ一家の屋敷として使われたレオポルドスクロン宮殿、マリアと大佐の結婚式シーンが撮影されたモント教会などが、自然なストーリー展開の中で次々と印象的に現れるのです。
音楽と歌、ロケ地がワイズ監督の演出のうまさの中で見事に処理されているのです。
名場面・ナンバー
Sound of Music
ジュリー・アンドリュースがアルプスの山並を背景に歌うあまりにも有名なオープニングナンバー。アンドリュースの透き通るような美声と雄大な山々のコントラストが見事で、たちまち映画に引き込まれる。
I have Confidence
修道院を追い出されたマリアが、期待と不安に胸をふくらませながら、フォン・トラップ家に向かう場面。
Sixteen going on Seventeen
僕は17 歳で君は16歳。青春真っ最中の二人が繰り広げるお茶目でコミカルなナンバー。
My Favorite Things
雷を恐がってなかなか眠れない子供たちを寝かしつけるときにマリアが歌うおまじないの歌。ジャズをはじめとするアレンジでも有名。
ドレミのうた
もはや説明不要のあまりにも有名なスタンダードナンバー!
エーデルワイス
これもあまりにも有名なナンバー。しみじみと心に染透る名曲。
Something good
いつしかマリアと大佐は互いを必要とする関係になった。大佐はマリアのもとに行き、マリアを愛していることを告白する。二人は互いの愛を確かめ、二人の心は一つに結ばれる。
Climb Every Mountain
「すべての山に登れ」と歌われる感動的なファイナルナンバー。「すべての山に…」というのは登頂だけではなく、人生をも意味しているのかもしれない……。
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