哀愁とロマンが絡み合う極上の名曲、メンデルスゾーン・交響曲第3番スコットランド

インスピレーションに裏打ちされた名曲

 

ロマン派の大作曲家、メンデルスゾーンは自然から受けるインスピレーションを大切にする作曲家でした。

インスピレーションを大切にするだけではありません……。それが彼の音楽に備わっている詩的な情感と無理なく融合して、作品として至高の境地に達していることにも驚かされます。

それは第1楽章冒頭の幽玄でロマンに満ちた序奏に明らかです。

木管楽器の夢みるような神秘の表情。弦のデリケートで心の移ろいを写し出す響き……。

まるで物語のプロローグのように、彼はストーリーの背景を丁寧に表出してみせるのです。

 

スコットランドの記憶

エヂンバラ城・スコットランド
エディンバラ城(スコットランド)

 

メンデルスゾーンは1829年から1832年までの間、ヨーロッパ各地を旅します。

主な訪問地はイタリア、フランス、イギリスなどで、交響曲第4番「イタリア」(1833年)はそのときの印象から作曲されたのでした。

「イタリア」が比較的スイスイと作曲されたのに比べると、「スコットランド」のほうはそう簡単にはいきませんでした。途中の中断も含めると、着想から約10年も費やしています。

おそらく彼がスコットランドで見た様々な情景や名所は、強烈なイメージとして心に焼きつけられたようですね。

「フィンガルの洞窟」序曲(1830年)も、その感動と驚きが彼一流の描写力で細部に至るまで丁寧に彫琢されているのが印象的です!

 

「フィンガルの洞窟序曲」の作曲モチーフとなった洞窟(スコットランド)

 

メンデルスゾーンの絵画の腕前はプロ並みだったというのは有名な話ですが、風景を題材にした水彩画などは特に繊細で詩情豊か。どこか彼の音楽に通じる世界がありますよね。

陽光きらめくイタリアよりも、陰影があって寂寥感漂うスコットランドの風土のほうが彼のインスピレーションを強く刺激したのかもしれません。

実際、交響曲第3番「スコットランド」はメンデルスゾーンの面目躍如と言える完成度で、ロマン派を代表する作品の仕上がりといえるでしょう。

全4楽章ともさまざまなヴァリエーションと変化に富んでいて、センス満点に生き生きとスコットランドの抒情が奏でられます。

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聴きどころ

ヴァイオリン協奏曲などもそうであるように、「スコットランド交響曲」は楽章ごとの明確な区切りはなく、続けて演奏される構成になっています。

音楽として各楽章ごとに関連性を持たせることで、ストーリー性を強調しようとしたのかもしれませんね。

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第1楽章 Andante con moto-Allegro un poco agitato-Assai animato-Andante come I

ドラマの始まりを告げるような哀愁とロマンあふれる序奏が印象的。

次々と形を変えながら発展し続ける主題や経過句、楽器の効果的な使用法が実に効果的で感情を揺さぶる!

第2楽章 Vivace non troppo

澄み切った空気、涼やかな風が頬を撫でるように通り過ぎていく……。さわやかな躍動感と温もりに満ちた楽章。スコットランド民謡風のリズムとテーマが愉しく心地いい!

第3楽章 Adagio

深い静寂、穏やかで陰影に満ちた主題が織りなすたとえようもなく美しいアダージョ。光と影の移ろいのように形や性格を変えながら発展する音の響きが神秘的!

第4楽章 Allegro vivacissimo

厳しさと哀愁を漂わせた第1主題は、特徴的な付点のリズムと相まって強い印象を残す。緊迫感と推進力を保持しながら曲は核心部分に到達する。

第4楽章 Allegro maestoso assai

文字通り曲のコーダ(最終部分)にあたる。ヴィオラ合奏を主体にした力強いテーマは希望の光が差し込むかのよう。

さまざまな余韻を残しながらも、全曲を包括するように音楽は輝かしく終わる。

 

オススメ演奏

オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団

 

オットー・クレンペラーがフィルハーモニア交響楽団を演奏した演奏がすべてにおいて最高です。

ゆったりとしたテンポから雄大なスケールで展開される演奏は細やかな感情、曲のロマンも見事に表現していて聴く喜びで満たしてくれます。

深い感情移入がされた弦楽器や朗々として屈託のない響きが心地いい木管、金管など、メンデルスゾーンの幻想的な曲調や本質をズバリ突いていますね。何度聴いても飽きない名曲と名演奏とはこのような演奏をいうのでしょうね!

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