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2019年

  • 2019年9月27日

ファンタジー、私小説!? グールドが到達したピアノの記念碑 バッハ「ゴルトベルク変奏曲」

こだわり抜いた超絶的な名演奏 ピアニストが自分の好きな作品を、自分の好みの表現で徹底的に極めていけたとしたら、これほどピアニスト冥利に尽きることはないでしょう。 それを実現した演奏があります。 グレン・グールドが1955年と1981年に録音したバッハの「ゴルトベルク変奏曲」です。 グレン・グールドがセンセーショナルなデビューをはたしたのがバッハの「ゴルトベルク変奏曲」でした。奇しくも最期のレコーデ […]

  • 2019年9月20日

親子の絆と再会の喜びを描く レンブラント「放蕩息子の帰還」

歴史画の概念を変える唯一無二の作品 家族の絵を描くことは意外に難しいと言われます。 それはモチーフとなる人たちから様々な意見や要望が出るからなのでしょう……。 「親子」をテーマにした絵は、さらにハードルが高いとも言われます。 「親子の絆、情愛」を描いた作品は過去にもたくさんありました。 でも描写が表面的であったり、構図やテーマの演出が過ぎるとか、納得できる作品がありませんでした。   し […]

  • 2019年9月18日

音楽が呼吸し、心を溶かす!グールドのバッハ「インヴェンションとシンフォニア」

理屈ではない生きた音楽体験   皆さんは20世紀の名ピアニスト、グレン・グールド(1932-1982)の演奏時の映像をご覧になったことがあるでしょうか? おそらく、「おやっ!」と思われた方は多いはずです。 異常に背丈の低い椅子にかがむように座り、鍵盤を舐めるように弾く姿……。そして鍵盤を弾くやいなや、音楽に合わせるように鼻歌(唸り声?)を歌い始めるではありませんか。 しかも鼻歌は弱まる様 […]

  • 2019年9月12日

拭いきれない苦悩を背負い描く、渾身の一枚 フリードリヒ「氷の海」

    静寂に満ちた空間と幽玄な世界   19世紀ドイツ・ロマン派の画家フリードリヒが描く絵は一種独特です。 この人の絵を観るといつも不思議な気分になります。 しかし、しばらくすると絵に深く引き込まれている自分がいることも発見するのです。   代表作「氷の海」のピーンと張り詰めた緊張感と異様なまでの静けさはどうでしょう……。 氷が砕け、その破片がむき出しにな […]

  • 2019年9月7日

まれに見る美しきヴィーナスの肖像 ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』

今や定番絵画の代表 いつからなのでしょうか? この絵のヴィーナスが、まるで永遠のヴィーナス像のステータスシンボルのように扱われはじめたのは……。 ラファエロのヴィーナスより親しみやすく、アングルのヴィーナスより清楚で健康的、ティントレットのヴィーナスより夢を与えてくれる……。 こんなヴィーナスは他にありません。 ジッと見ていても、その優しげで可愛らしい表情に魅せられてしまいますね……。 ここには私 […]

  • 2019年8月30日

「甘える」と「甘え」は決定的に違う! 自分の気持ちに素直になる「甘える」

誤解されている「甘え」   現在、日本で一番誤解されている言葉の一つに「甘え」があります。 この言葉を聞くと、ほとんどの人が顔をしかめることでしょう。 なぜなら「甘え」はずるいという認識が根強くあるからです。 欧米では「甘え」について、どのような、認識があるのかはわかりませんが、日本では明らかに毛嫌いされる傾向がありますね。 「甘え」は「ずるい」というイメージの他に、「中途半端」、「他人 […]

  • 2019年8月20日

人生の喜怒哀楽を壮大なスケールで凝縮させた風景画  ブリューゲル「雪中の狩人」 

  教科書に載っていた凄い絵 ブリューゲルが描いた「雪中の狩人」を初めて知ったのは中学の美術の教科書でした。 この絵が放つ独特のオーラや存在感は他に掲載されていた名画も霞んでしまうほどでした。それ以降、彼の存在は気になって仕方なく、一度見ると底なしの魅力にグイグイ引きこまれてしまうのです。 ブリューゲルは16世紀のベルギーの画家で、2017年に日本でも公開された「バベルの塔」などで有名な […]

  • 2019年8月14日

美術館・究極の楽しみかた② 鑑賞編

前回は美術館で絵を見るときの準備や心構えをお伝えしましたが、今回は美術館を見てまわるときのいくつかのポイントについて、思いつくままに書いていきたいと思います。 同じ絵画鑑賞でも見る目的が変わると、得られる効果も変わってきますので、せっかくの鑑賞なら有効な時間にしたいですよね……。 展覧会の構成を把握する まず最初におさえておきたいのが、見たい展覧会の出品傾向や構成をよく把握しておくことです。 あた […]

  • 2019年8月5日

クラシック音楽がもたらす効果と魅力とは?(2)

自分の視点が鑑賞を深める   一般的にクラシック音楽は大作曲家が残した作品や、その演奏を聴いて楽しむことですね。 受け身だと思われがちな音楽鑑賞ですが、場合によっては聴き手が創造の過程に加わっているような感覚を味わえることもあります。   たとえばモーツァルトの有名なセレナーデ「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を聴いたとしましょう。そして、それが流麗でリズミカルな演奏だったと […]

  • 2019年8月1日

故郷への限りない愛情を驚くべき感性で描きあげる ジョン・コンスタブル 「乾草車」(1821年)

  夏の日の情景を心を込めて描く コンスタブルが画家として大きな転機を迎えるきっかけとなったのが、ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されている「乾草車」(1821年)です。 この絵はコンスタブルの代表作としても名高く、自然のめくるめく変化や感動が大いなる共感とともに描かれているのです! 絵の題材となった故郷サフォークへ寄せる愛情、想いは半端ではありません…。 夏の日特有のムンムンした […]