黄金色に輝くアルル時代絶頂の名作・ゴッホ「ラ・クローの収穫」

ゴッホ「ラ・クローの収穫」1888年/油彩

 

南仏に求めた明るい日差し

南フランス・アルルの美しい街並み(Adobe Stock)

 

西洋絵画史上、最も強烈な印象や足跡を残した人としてゴッホの名前を挙げる人は多いでしょう。

しかも彼の偉大な作品は晩年の2年間にほぼ集約されています。その2年はゴッホ自らがユートピアと謳ったアルル滞在時代でした。

この時代に彼は代表作と言われるほとんどの作品を描いたのです。アルル時代はゴッホにとってすべてが新鮮で創作のエネルギーが湧きあがる充実した時代だったのでしょう。

ここで紹介する「ラ・クローの収穫」もアルル時代の最大の功績のひとつです。

黄金色に輝く田園風景

まず驚くのが色彩です。

黄金色の輝きを放つ田園風景は生命力にあふれ、豊かな実りをもたらす自然のエネルギーを私たちに強く印象づけるのです!

画面を構成する田園風景や山並みは曖昧な表現がいっさいなく、気持ちがいいほど明快にくっきりと描かれています。

その事によって、絵は驚くほどにシンプルで様式化された形の強靭さを獲得しているのです。

そして、スピード感あふれるダイナミックなタッチや点描、色彩のコントラストの見事さが絵としての存在感をいっそう高め、この絵をさらに魅力あるものにしているのです。

 

強い自信を抱いていた作品

フィンセント・ファン・ゴッホ(ピーター・ラッセル画、1886年)

 

ゴッホが『ラ・クローの収穫』を描いたのは、プロヴァンス地方の風景の色彩に大いに心を揺さぶられたからでしょう。

灼熱の太陽の下で、彼は夢中になって何日も麦畑で制作を続けました。1週間ほどで10数枚の絵画とデッサンを完成させます。 

制作が終了する頃、季節は春から夏へと移り変わっていました。

同時期に描かれたデッサン(1888年)

南仏アルル周辺の風景を描いたこの絵からは、夏特有の灼熱の日差しと蒸し暑さが伝わってきそうです。ゴッホは、空の紺碧の青と大地のイエローやグリーンを巧みに組み合わせて夏の日の臨場感を伝えています。

ゴッホはこの作品の出来ばえを気に入っていたようで、弟のテオにその感動と喜びを書き送っています。

この絵こそ、農村を愛し、南仏の風景を愛したゴッホの息づかいが直接聴こえてくるような名画ですね!

関連記事

[caption id="attachment_11177" align="aligncenter" width="1024"] ゴッホ『星月夜』1889年、油彩、ニューヨーク近代美術館[/caption] 迫力満点だった上野の展覧会 […]

最新情報をチェックしよう!